
三井物産はオーストラリアの鉄鉱石権益に同社として過去最大規模となる8000億円を投じることを決めた。鉄
鉱石権益では日本企業としても最大の持ち分となり、同社の将来の成長を金属資源事業に託す姿勢を鮮明にした。巨額投資を決断できたのは投資候補の選別厳格化と、過去の投資からの資金回収の巧みさがある。
同社として、これまで1案件への投資額として最大だったのは2011年と18年に計3200億円を投じたマレーシアの病院グループIHHヘルスケアだ。これを上回るのが今回の豪州の鉄鉱石権益への投資だ。
投資する新規開発の鉱山は「ローズリッジ」で権益の40%を豪州企業から取得する。同鉱山で50%の権益を持つ英豪資源大手リオ・ティントと事業面でも連携し、日本やアジアに供給する計画だ

ローズリッジは68億トンの資源量を有し、未開発の鉱山としては世界最大級。世界各地の経済成長に伴い鉄鋼需要の中長期的な成長が見込める中、潜在的な成長余地が大きい。
三井物産の既存の鉄鉱石権益などとあわせると、50年までに年1億トン超の権益を保有することになる。現在の世界の鉄鉱石の年間生産量に換算すると4%に相当する規模だ。日本企業としても最大の持ち分だ。
成長投資の4割に相当する規模
三井物産は24年3月期からの3カ年の中期経営計画で1兆8700億円の成長投資を見込んでいる。24年12月までに既に1.1兆円を投じているが、豪州の鉄鉱石権益は成長投資枠全体の4割に相当する投資規模になる。
収益貢献への期待も当然高い。
鉄鉱石権益や銅や原料炭などの金属資源事業の稼ぐ力を示す基礎営業キャッシュフロー(営業活動で発生する現金収支)は2025年3月期では前期比17%減の3400億円を見込む。
豪州の鉄鉱石権益では30年の生産開始時点で年1000億円、フル生産時点では年2500億円の基礎営業キャッシュフローの押し上げ効果を見込む。単純に上積みすれば、6000億円規模となる。三井物産全体の今期の稼ぐ力の6割に相当することになる。
投資案件選別と資金回収が後押し
こうした攻めの投資に踏み切れる背景にあるのが、豊富な投資案件を選別する力を蓄えてきたことと、投資回収の巧みさだ。
重田哲也最高財務責任者(CFO)は24年8月時点で、現中計で予定する成長投資1.8兆円と別に投資候補が3.6兆円ほどあると明らかにしている。
豊富な案件があるため、戦略性や成長可能性、収益貢献の開始時期などを見極めることが可能になっている。
詳細は明らかにしていないが、投資決断には内部収益率(IRR)などの指標で基準を満たすことが求められる。今回の豪州鉄鉱石も3度の取締役会を経てようやく承認されたという。しかも当初予定は5000億円の投資だったが、予定以上に権益が取得できることもあって、投資額は8000億円に上ぶれする結果にもなった。

巨額投資に踏み切れるのは過去の投資案件からの資金回収が進んでいることも大きい。
26年3月期までの3カ年で1兆4000億円の資産売却を計画しているが、折り返し地点を少し過ぎた24年4〜12月期までに既に約1兆円を回収済みだ。
売却資産の中には、インドネシアの「パイトン石炭火力発電所」や東京の本社の横にある大型複合ビル「Otemachi one」の建屋と土地の所有権の一部など、収益が出ているものも含まれる。
優良案件でも、中期的な利益の上振れが見込めれば売却し次の投資や株主還元にあてることが成長を実現するとの考えからだ。
株式市場の評価は低調
資産入れ替えが順調に進んでいるものの、株式市場の評価はついてきていないのが現状だ。
19日時点の時価総額は約8兆円で、伊藤忠商事の9.8兆円や三菱商事の9.5兆円と開きがある。豪州の鉄鉱石権益の取得も取引時間中に発表したが、19日の三井物産の終値は前日比1%安の2722円で、資源への巨額投資が株価の下落基調を反転させる材料とはならなかった。

24年4〜12月期の連結純利益(国際会計基準)は鉄鉱石価格の下落も響き、前年同期比10%減の6521億円だった。
こうした状況での資源投資に市場が懐疑的な可能性がある。19日のアナリスト説明会では、鉄鋼価格の前提や開発コスト、インフレの影響など将来の収益性を吟味する質問が相次いだ。
今回の権益投資にあたっては、成長投資枠から5000億円を捻出し、投資にも株主還元にもあてられる調整枠4500億円から3000億円を振り向けた。
一方、資産圧縮などで資金を捻出。調整枠に新たに4000億円を上積みし、今後の株主還元を緩めない追加措置もとった。資金回収の進展や本業の稼ぐ力の高まりに確信が持てたことの表れともいえる。
金属資源事業への巨額投資の勝算を、株主にも丁寧に説明していくことが今後の課題となる。
(吉田啓悟)
三井物産の堀社長、豪州鉄鉱石投資で「企業価値上がる」
堀健一社長は日本経済新聞の取材に「企業価値を向上させる案件だ。株式市場にしっかり中身を見ていただきたい」と強調した。主なやりとりは以下の通り。
記者会見に臨む三井物産の堀社長(19日、東京都千代田区)
――三井物産として過去最高の投資額です。
「保守的に見ても当社の投資基準を余裕を持ってクリアしていてリターンが高い。過去数年にわたる資産の再分配が(大型投資を)可能にせしめた。事業の売却も想定より進んだ」
「ただ交渉には時間がかかり、取締役会でも3回議論した。通常の投資案件は1回だが案件形成の節目ごとに状況を共有し、意見を出し合った。一部の社外取締役には現地も視察してもらった」
――発表後に株価は一時大きく下がり、19日終値は前日比1%安の2722円でした。
「68億トンも埋蔵量があり、長期にわたって収益貢献するサステナブルな資産だ。企業価値向上に資すると(株式市場にも)徐々に浸透していくだろう。
鉄鉱石はグローバルな商品で世界経済の成長と連動する。価格が下ぶれした場合でもしっかり利益がでる案件だ。逆に上ぶれすることもある」
――米トランプ政権の誕生もあり、高い関税が輸出入に影響することが懸念されています。
「関税などのディスラプション(破壊)はあるが、注視して対応していけば利益は出せる。現状、採掘機材の調達などに大きな影響はない」
――中東の液化天然ガス(LNG)など投資が資源に集中することへの懸念はありませんか。
「資源と非資源という分類はしていない。動物性たんぱく質や人工甘味料などにも幅広く投資をしており、バランスはとれていると考えている」
日経記事2025.2.20より引用
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リオ・ティント社は、ロスチャイルド財閥の地下資源会社を代表する企業ですね。
・ロスチャイルド財閥ー19 キューリー夫人とRTZ(リオ・チント・ジンク)そして原子力産業 https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/3f899728fe268d13f0714305cf0ad65b
・ロスチャイルド財閥ー18 キューリー夫人
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/1feb6656b6dbdb2c32f498c6cd841d94