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三郎さんの昔話・・・侍小平太

2010-10-18 | 個人の会員でーす
侍小平太


 時は江戸末期、小平太は伊予西条の藩士で、剣道、居合共に人に勝れた達人で、その容貌は色白な顔、眉濃く頭髪は多くふさふさと、背丈は人並みより小柄でガッチリとした体で、身なりはややおしゃれだがキチンと着こなし、腰に差した大小のうち大刀はやや長く、小平太の出歩く姿は人に目立ち、城下でも有名な侍であった。


 その小平太が城主の参勤交代のお供で江戸へ出た。当分の間は役務多忙で出歩けなかったが、やっと暇になり休みをもらって、今日は待望の江戸見物と、小平太せっぱいのおしゃれをして、例の大小を腰に江戸のお町に出かけた。


 町は活気があり人も多く賑やか、中でも歌右衛門の忠臣蔵はなかなかの人気。

 小平太この芝居を見ろうと、芝居小屋に入る。大入りで座れず立ち見になり、立ったまま芝居を見ていたら、後ろに雲助のような大男が来て、小侍が体に似合わん長刀を差し駄じゃれちょる。

 どうせ田舎侍じゃと侮って、大男吸っていた煙草の火を、小平太の頭の真ん中にぷーと吹き落とした。


 煙草の火は小平太の頭の上でジュウジュウ煙りよる。見物の芝居客はあきれて、芝居より小平太を見よるが、小平太は声も出さず、びくとも動かず、やがて頭の火も消え芝居も済んだ。その時・・・
 小平太後ろを向いた。とたんに大男の頭の上で長刀がピカピカと光った。

 帰る人のどよめきで人々が揺れたとき、立っていた大男はばっさりと倒れた。
 見ると、大男は頭から空竹割りに斬られて即死。人が斬られたと騒ぎ出す。

 やがて役人が二、三人来て、出口で刀を取って見て、血のりを調べる。小平太出掛かる。役人「その刀よこせ、見る。」と。


 小平太「刀は武士の魂じゃ。他人に渡すわけにはいかぬ。とくとご覧あれ。」と、小平太の手が刀の柄に掛かったかと見えた。

 とたんに役人の眼前でピカピカと光った。役人目をまばたいた。
 小平太の長刀は鞘に納まっていた。役人おくれて後ずさり。小平太は静かに帰って行った。
 役人は小平太の居合の早業に度肝を抜かれて、ただ茫然としていた。

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