小吉と小鳩
むかし、貧しい農家に小吉という優しい子供が親子三人で暮らしていました。
小吉はふた親の野良仕事にはいつもついて行って、色々と手伝いをするやさしい子供でした。
ある日、野良に出ていつものように手伝っていて、おやつの休みの間に、小吉は野原に出て草花や蝶と戯れて遊んでいました。
すると、クック、クックと鳩の哀しい鳴き声が聞こえてきました。
ふと見ると、大きな鳥が三羽して小さい白い子鳩をこづいていじめていました。
小吉はかわいそうに思って、「いじわる鳥、あっちへ行け。」と追い払って子鳩を抱き上げてみると、かわいそうに肩羽根を鳥にこづかれて飛べなくなっていました。
小吉は大事に子鳩をつれて帰り、お母あに怪我をなおす薬を聞いたら皹(あかぎれ)につける膏薬を出してくれた。
小吉はそれを子鳩の傷に塗ってやり、毎日大事にし麦と豆の餌をやりかわいがっていました。
幾日かたって、子鳩は傷口もよくなり羽ばたくようになりましたので、小吉は子鳩を野原から、「お母さんのところへ早ようお帰り。」と空に放してやりました。
子鳩はうれしそうに、クルル、クルルと鳴きながら小吉の頭の上をくるくる舞ながら山の彼方へ飛んでいきました。
小吉が家に帰ってふと見ると、子鳩の羽根が一枚落ちていました。
不思議に思ったが、小吉は子鳩がなつかしくて夜寝るときに羽根を枕もとに置いて寝ました。
寝入って間もなく、子鳩の羽根はずんずんと大きくなりました。
小吉がその羽根に座ると、羽根はすーと浮き上がり、家をはなれて空中へ、村里をこえて、雲をつき抜け雲海の上へ出ました。
広々とした白雲の中に金色に輝く立派な御殿があり、中央の興に天女の美しい羽衣を着た弁天様が女官を従えて座り、羽根扇で招いている。
小吉の乗った羽根は弁天様の前までくると静かに停まった。
小吉が下りると、弁天様が、「小吉、その方先日、余の召し使いの子鳩を助け、怪我を治してくれてありがとう。
この天国でしばらく遊んでゆかれや。」と申されました。
小吉は嬉しかったが少し考えて、弁天様に、「私、お父うやお母あになんにも言わず来てしもうたので、心配するけ帰らして。」と言うと、弁天様、
「おおそうか、小吉はやさしいええ子じゃ。土産に麦と豆の種をやる。」と袋に入った種をもらい、大きい白鳩の背に乗せられ、小吉は弁天様にお別れし、御殿を飛び立ち雲海を通り抜け、山々や里を見てやっと我家の上まで来たとき、ほっとしたら小吉は目が覚めました。
枕もとを見ると、寝るときに置いた羽根は無く、麦と豆の種が入った袋がありました。
小吉がこのことを話すと、お父うとお母あは、ありがたいこと、と天を拝み、親子三人で麦と豆の種を蒔き、大事に育てたら順調に大きくなりたくさん実りました。 その後も麦と豆は百倍、百倍と豊作で、小吉が大人になったときには家は裕福な大百姓になっていました。と。
三郎さんの昔話・・・作者紹介
三郎さんの昔話
むかし、貧しい農家に小吉という優しい子供が親子三人で暮らしていました。
小吉はふた親の野良仕事にはいつもついて行って、色々と手伝いをするやさしい子供でした。
ある日、野良に出ていつものように手伝っていて、おやつの休みの間に、小吉は野原に出て草花や蝶と戯れて遊んでいました。
すると、クック、クックと鳩の哀しい鳴き声が聞こえてきました。
ふと見ると、大きな鳥が三羽して小さい白い子鳩をこづいていじめていました。
小吉はかわいそうに思って、「いじわる鳥、あっちへ行け。」と追い払って子鳩を抱き上げてみると、かわいそうに肩羽根を鳥にこづかれて飛べなくなっていました。
小吉は大事に子鳩をつれて帰り、お母あに怪我をなおす薬を聞いたら皹(あかぎれ)につける膏薬を出してくれた。
小吉はそれを子鳩の傷に塗ってやり、毎日大事にし麦と豆の餌をやりかわいがっていました。
幾日かたって、子鳩は傷口もよくなり羽ばたくようになりましたので、小吉は子鳩を野原から、「お母さんのところへ早ようお帰り。」と空に放してやりました。
子鳩はうれしそうに、クルル、クルルと鳴きながら小吉の頭の上をくるくる舞ながら山の彼方へ飛んでいきました。
小吉が家に帰ってふと見ると、子鳩の羽根が一枚落ちていました。
不思議に思ったが、小吉は子鳩がなつかしくて夜寝るときに羽根を枕もとに置いて寝ました。
寝入って間もなく、子鳩の羽根はずんずんと大きくなりました。
小吉がその羽根に座ると、羽根はすーと浮き上がり、家をはなれて空中へ、村里をこえて、雲をつき抜け雲海の上へ出ました。
広々とした白雲の中に金色に輝く立派な御殿があり、中央の興に天女の美しい羽衣を着た弁天様が女官を従えて座り、羽根扇で招いている。
小吉の乗った羽根は弁天様の前までくると静かに停まった。
小吉が下りると、弁天様が、「小吉、その方先日、余の召し使いの子鳩を助け、怪我を治してくれてありがとう。
この天国でしばらく遊んでゆかれや。」と申されました。
小吉は嬉しかったが少し考えて、弁天様に、「私、お父うやお母あになんにも言わず来てしもうたので、心配するけ帰らして。」と言うと、弁天様、
「おおそうか、小吉はやさしいええ子じゃ。土産に麦と豆の種をやる。」と袋に入った種をもらい、大きい白鳩の背に乗せられ、小吉は弁天様にお別れし、御殿を飛び立ち雲海を通り抜け、山々や里を見てやっと我家の上まで来たとき、ほっとしたら小吉は目が覚めました。
枕もとを見ると、寝るときに置いた羽根は無く、麦と豆の種が入った袋がありました。
小吉がこのことを話すと、お父うとお母あは、ありがたいこと、と天を拝み、親子三人で麦と豆の種を蒔き、大事に育てたら順調に大きくなりたくさん実りました。 その後も麦と豆は百倍、百倍と豊作で、小吉が大人になったときには家は裕福な大百姓になっていました。と。
三郎さんの昔話・・・作者紹介
三郎さんの昔話