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三郎さんの昔話・・・大蛇と万次

2010-10-18 | 個人の会員でーす
大蛇と万次

 大石の奥の万三能山のふもと、集落では一番の山奥に、万次という男が、嫁はんと五つになる可愛いお花という女の子と三人で、畑を少々作り、大方は山仕事でほそぼそと暮らしていた。

 夏も終わりに近い。嫁はんは次の子供がお腹でつわりがえらい。
 万次は今日も山へ薪切りに行く準備していたら、嫁はんが、「お前さんわたしゃ今日は具合がよけえ悪いが、ひいといだけ、お花を連れていてくれんかよ。」

 万次は、「おおええとも、おんしは大事な体じゃ。大事にして、ええ男の子を産んでくれ。」言うて、親子の弁当を持って二人は山へ行き、お花を見ながら仕事をし、やがて昼になった。

 万次はお花に、「そこの小道をちょっと行ったら、お水が出よるけ、お茶瓶に水汲んでき。」言うたら、お花は「うーん」言うて、茶瓶持って小走りに走っていった。

 すぐに帰れる距離じゃのに、なかなか帰って来ない。万次は少し心配になった。ころんで怪我でもしたのかな。そのとき万次に不吉な予感がした。

 万次は押っ取り柄鎌で水場へ走った。着いて見たものは、小丸太ほどもある大きな大きな蛇が水場に横たわり、その中ほどが一回り大きくなってうねっている。

 万次は驚いた。とたんに冷や汗がじーっと身体に回り、震い上がったが、歯を食いしばり目を閉じ、山の神、八幡、三宝様、お花をお助け下さいませと、悲鳴に似た声で念じて目を開き、怖さを捨てて、心を鬼にして大柄鎌を振り上げ、大蛇のふくれの脇を見さだめて、日ごろ鍛えた木切りの枝で、やーっと満身の力を込めて切り下ろした。

 大柄鎌は寸分たがわず大蛇を切り裂いた。腹からお花の身体が滑るように出て来たが、早や、こと切れていた。

 万次はお花を抱き抱え、山の神八幡、三宝様、お花の命お救い下さいと、子供の身体を揺すりながら念じ続けたら、静かに目が開き、胸うちだした。

 万次はお花を抱き締め手を合わし、山神様の方に正座して涙ぼろぼろ落としながら、ありがとうございましたを繰り返し、お花良かったなあと、万次の涙は止まらなかったと。

 お花が成長してからも、大蛇に一度呑まれたせいか、人並みより頭の髪の毛が少なかったと。
 子への愛は強し。


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