Everyone says I love you !

弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

1%の富裕層出身 岡田副総理が生活保護を事業仕分けの対象にする弱い者いじめの人気取り

2012年11月09日 | 生活保護と生存権

(食事の回数も減らし、服は買わず、地域の行事にも参加できない。それが生活保護受給世帯の実態。パチンコに行っているなどごく一握りの人に過ぎない)

 

 

 岡田克也副総理は2012年11月5日、増え続ける生活保護費について「『仕分け』の中で専門家を入れて議論したい」と述べ、16日からの事業仕分けの対象とする考えを示しました。

 融通が利かないので原理主義者と呼ばれる岡田氏ですが、3年前に政権を奪取したときには生活保護水準切り下げ反対をマニフェストに掲げていたのに、それをかなぐり捨てて生活保護者いじめと仕分けを支持率最低の野田民主党の人気取りに利用するなんて、自民党や維新の会と変わりません。

 そもそも、岡田氏は生活保護を事業仕分けにかけることを東京都足立区の若者の就労支援施設を視察後、記者団に語ったそうなんですが、生活保護の視察なら、月々4万円そこそこの家賃の部屋に住んで、一か月8万円で生活してみたらどうでしょうか。この人は同じく弱い者いじめの消費税増税に反対するマニフェストも堂々と放棄したのですが、イオンの御曹司には99%の生活者の視点が全くないのではないでしょうか。

 さて、財務省は、2013年度予算編成で、生活保護費の給付水準を引き下げる方向で見直す方針を固め、厚生労働省と調整に入っています。生活費や住居費の減額などだけでなく、医療機関の窓口で 医療費の一部をいったん自己負担する制度の導入も提案しています。

 財務省などに言わせれば、2012年度当初予算では国費ベースで2兆8千億円を計上しているので、財務省は国の財政状況が悪化する中、膨張に歯止めをかけることが急務だと主張するのですが、生活保護費全部を合わせても福祉予算の中で占める割合は下の図のようにわずかです。

河本準一さん親子問題から考えると間違える。生活保護の本質は憲法上の基本的人権である生存権の保障だ!

 

 

  そもそも、生活保護基準は、国民の生活を支える「最後のセーフティネット」として、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準です。生活保護基準が下がれば、生活保護によってかろうじて日々の生活をつないでいた212万4669人=154万9773世帯(2012年7月のわが国の生活保護受給者数)の方々の生活を直撃します。

 生活保護費は基本的に貯蓄が許されませんのですべて消費されます。生活保護制度は社会政策であると同時に、有効需要を喚起する経済政策でもあります。これを切り下げれば当然、内需は縮小します。

 また、生活保護をめぐる不正受給は確かに問題ですが、ことさらにそればかりマスメディアが報道していることで実際よりはるかに過大に国民の目に映っています。実際には、不正受給者は全体の1%にも満たない割合です。

 生活保護費・受給者数は特に2008年のリーマン・ショック以降に増えているのです。そもそも、下のグラフのように、生活保護受給者は働こうにも働けない高齢者と傷病者・障害者の割合が圧倒的に高いのです。一昔前までは、正規雇用が中心でしたが、昨今の雇用の多様化により非正規雇用が増加し、最後のセーフティネットである生活保護の利用が増加したことは否めません。政府が生活保護費の増大を憂うるのなら、有効な経済政策をこそ打ち出すべきです。

基本的人権である生存権保障の最重要制度 生活保護基準の引き下げに反対する


 最低賃金で働いた場合より支給額が多い逆転現象も一部地域で起きていますが、それは最低賃金が低すぎるのであって、内需拡大のためにも、せめて働けば生活保護より楽な生活ができるように、最低賃金を引き上げることを考えるべきです。

 特に、就労による給与を得ていても、その額が生活保護基準に満たないことから、やむなく生活保護を利用している方々も多数おられます。そういう人々は、生活保護基準の引き下げがなされれば、生活保護費と最低賃金の低下により、両面から収入が低下するという事態も予想されるのです。

 もし、生活保護基準の引き下げると、最低賃金の引き上げ目標額は下がり、「ワーキングプア」と呼ばれる最低賃金の水準で稼働するアルバイト・パートタイム・派遣社員・契約社員など、現在、労働者全体の35%を超える数千万人の非正規労働者の生活にも大きく影響を及ぼすのです。

 生活保護基準は、地方税の非課税基準、国民健康保険の保険料・一部負担金の減免基準、介護保険の利用料・保険料の減額基準、障害者自立支援法による利用料の減額基準、生活福祉資金の貸付対象基準、就学援助の給付対象基準など、医療・福祉・教育・税制などの多様な施策にも連動しているのをご存知ですか。

 2010年4月9日付の厚生労働省の発表によれば、わが国の生活保護の「捕捉率」(制度の利用資格がある者のうち現に利用できている者が占める割合)が下の図のように15.3%~29.6%と推計されています。少なくとも700~800万人は生活保護レベル以下の生活を強いられています。生活保護基準の切り下げは、生活保護を受けずに堪えている数百万人をも直撃するのです。

 それはかえって生活保護受給申請者数を激増させるでしょう。

貧困率過去最悪の16%  6人に1人は所得112万円未満 一人親世帯は半分以上貧困 子ども貧困率も最悪

 

 生活保護基準の引き下げを強行すれば、これらの施策を利用している低所得層の人の生活にも重大な影響を与えることになります。それは、消費税増税とあいまって、国民の消費意欲と能力を減退させ、日本経済はさらなる不況の泥沼に沈みます。

 生活保護制度を叩くことは、99%の国民にとっては、自らの首を絞めることなのです。

 社会保障費の中で最も壮大な無駄は、高所得・高資産の方々に支払われている高額の年金です。日本の財政赤字が深刻で、どこかに我慢していただかなければならないとしたら、生きるのに何一つ不自由のない1%の方々に支払われている年金のカットをお願いするべきなのです。

 つまり、あなたの一族のような方々に。岡田さん。


参考記事

生活保護申請者に「体売れ」 窓口で断られ凍死、餓死、自殺 不正受給は0・4% これが生活保護の実態だ

生活保護申請を受理さえせず追い返す「北九州方式」また炸裂 所持金600円の母子4人を追い返した市職員

生活保護申請で妊娠・同棲・出産禁止の誓約書 生存権=「健康で文化的」な最低限度の生活を無視する行政 

姉は病死 妹は凍死 生活保護申請も出来ずに逝った姉妹 生活保護に関する3つの誤解

 

 

生活保護の問題は、99%の方にとっては他人ごとではありません。

よろしかったら上下ともクリックしてくださると大変うれしいです。

人気ブログランキングへ人気ブログランキング

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村


 

毎日新聞 2012年09月27日 東京朝刊

 生活保護が縮小されそうだ。政府は8月、「生活保護の見直し」という文言を盛り込んだ13年度概算要求 基準を閣議決定した。「見直し」は保護費の基準額切り下げや保護の抑制につながる可能性が高い。「最後のセーフティーネット」の縮小は私たちにどんな影響 をもたらすだろうか。【稲田佳代】

 ◇社会制度や福祉サービスと連動

 生活保護受給者は過去最高を更新(211万人)したが、そもそも自民党は以前から生活保護の基準額10%切り下げを主張していた。民主党政権も見直しを盛り込み、切り下げはいよいよ現実味を帯びてきた。

 保護基準額が切り下げられると何が起きるか。花園大学(京都市)の吉永純(あつし)教授(公的扶助論)は「まず、今まさに生活保護を受けている人たちが排除されてしまう」と危惧する。

 生活保護は、食費や光熱費など生活費に相当する「生活扶助」を中心に8種類の扶助で構成され、それぞれに基準額がある。年齢や家族構成に応じて8種を組み合わせて「最低生活費」を算出し、申請世帯の収入が最低生活費に届かなければ不足分を保護費で支給する仕組みだ。

 基準額が切り下げられると「最低生活費」も低くなる。すると、収入が増えたわけでもないのに突然保護に該当しなくなる受給者が出てくる。

 もちろん、受給中の人の生活も苦しくなる。生活保護を受けながら、孫で10代のきょうだい(姉と弟)を引き取って育てている首都圏の女性(66)も、切り下げを心配する。

 女性はアルバイトで月6万円を稼ぎながら、孫たちの養育費などを生活保護で補う。孫たちは新幹線にも飛行機にも乗ったことがない。夏休みに遊びに行くのは地域の公共施設。家計を気遣ってか「どこか遊びに行きたい」とも言わない。

 女性は孫たちの将来を考え、パソコンとインターネットだけは設置している。「教育にはお金をかけないと彼らは貧乏から抜け出せない。食べ盛りなので食費も減らせない。保護費が減ったら生活がどうなるか、心配で胸が痛みます」

     ◇

 吉永教授は、生活保護を受けていない「ぎりぎりの生活」をしている人たちにも大きな影響がある、と強調する。保護基準額が他の社会制度や福祉サービスと連動するためだ。

 ●最低賃金に影響

その筆頭は地域ごとに決められる「最低賃金」(最賃)。07年の法改正で、生活保護施策と「整合性があるべきだ」とされた。生活保護基準額が最賃を 上回る「逆転現象」が問題視され、今年の最賃引き上げでは5府県が矛盾を解消したが、6都道府県では逆転したままだ。そもそも今の日本の物価水準で最賃で 暮らすこと自体が相当困難なことを考えれば、基準額が切り下げられ、最賃が低いまま逆転現象が解消されたことになると、最賃引き上げはいっそう難しくな る。

 ●就学援助にも

 小中学生の学用品や修学旅行の費用を助成する「就学援助制度」も関係がある。自治体ごとに対象とする世帯の基準は異なるが、多くは「生活保護基準の1・0~1・3倍以下の所得」などとしている。

 公立小中学校の全児童生徒のうち、15%に当たる約155万人(10年度)が利用している制度だ。ほかに低所得者向けの融資制度である生活福祉資金貸し付け(多くは生活保護基準の1・7倍以下)など、保護基準の倍数で対象者を規定する制度は多い。

 ●住民税も課税強化

 住民税を非課税とする基準額も、最低生活費を下回らないよう設定することが法律で明記されている。保護 基準額の切り下げで、収入は変わらないのに課税世帯にカウントされる低所得者層が増えると予想される。また、「住民税非課税世帯であること」は国民健康保 険料などさまざまなサービスでも減免措置の要件になっている。

 日本では、生活保護を利用できる水準で暮らす人のうち、実際に保護を利用する人は2割程度に過ぎないとされる。保護基準額切り下げは、保護を受けずに“耐えている”層を直撃する。

 ◇「最低生活」の議論、広がらず

 生活保護は生存権を定めた憲法25条に基づき、国が国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する 制度だ。5年に1度の全国消費実態調査に合わせ、生活扶助の基準が妥当かどうかを検証することになっている。現在、社会保障審議会の部会で検証中で、今年 末に報告書が取りまとめられる予定だ。

 保護基準額は戦後の経済成長とともに右肩上がりだった。年金の支給額を減らすのに合わせて03年度に初めて前年度比0・9%切り下げられ、04年度も0・2%の削減。老齢加算も段階的に廃止された。それ以降は経済状況の悪化などで据え置かれている。

「生活保護は最低生活をどう構想したか」の著書がある神奈川県立保健福祉大講師の岩永理恵さんは「不況で一般世帯の生活水準が下がっているのに合わ せて、基準額を切り下げていくと際限がない。社会の地盤沈下を招く」と心配する。「生活保護制度の歴史をさかのぼると、保護基準は『起きて食べて寝る』だ けの栄養を満たす費用として設定された。子育てや人付き合いなど当たり前の『暮らしのあり様』は、想定されていない」

 吉永教授も「日本には、アフリカの飢餓と比べて『食べられて死ななければいい』という貧困観が根付いている」と指摘する。「健康で文化的な最低限度の生活とは何か」の議論が広がらないまま、社会保障費増大への懸念に押されて基準額切り下げが進みつつある。

 「生活保護基準額は、実質的に『ナショナルミニマム』として私たちの生活を下支えしている。切り下げは、今の時代を生きる私たちみんなの問題だ」

 

 

生活保護問題対策全国会議が会見――基準引き下げを批判

 年末に向けて生活保護基準の見直しが山場に近づいている。最後の命綱である生活保護基準引き下げに反対するアクションを起こそうと、生活保護問題対策全国会議(代表幹事・尾藤廣喜弁護士)が一〇月一〇日、厚生労働省内で記者会見を行なった。

 生活保護バッシング報道を背景に閣議決定された二〇一三年度予算概算要求基準は、生活保護費削減を明記。来年度は五年ごとの支給水準改定の年にあたり、年末の予算編成に向けて、生活保護基準引き下げが予想される。

 宇都宮健児弁護士は「生活保護受給者の増加は、日本で貧困と格差が拡大していることの結果。捕捉率が二割程度しかない現状のまま基準が引き下げられれば、生活困窮者の餓死・孤立死、自殺が増加するのは必至。基準と連動して最低賃金や地方税の非課税基準も下がることになり、国民生活全体に大きな影響がある」と訴えた。厚労省が支援策として九月末に公表した「生活支援戦略」の素案についても、「露骨な給付抑制策が並んでおり、現行生活保護法の根幹に変更を加える憲法違反の疑いのある提案も散見される」とした。

 生活保護問題対策全国会議事務局長の小久保哲郎弁護士もこの素案について「前半は新たな生活困窮者支援策が並ぶが、後半では、就労義務や扶養義務、管理強化の抑制策が並んでおり矛盾している。行政から委託を受けた支援事業者が支援をしようと思っても、福祉事務所は期間を形式的に区切った厳しい対応をし、現場に混乱が生じる」と指摘。生活保護を切り縮め、民間委託して生活困窮者支援をさせようとしているのではないかという懸念を示した。

 小久保弁護士は、受給者の中で増加しているのは高齢者であるのにもかかわらず「働けるのに漫然と生活保護を受ける人が増えている」という誤った前提に立って、生活困窮者の生活支援戦略を稼働年齢層への就労指導強化に収斂するのは誤りだと批判する。

生活保護問題対策全国会議サイト http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/
(清水直子・ライター、10月19日号)


コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 100mSv未満の低線量被曝で白... | トップ | TPP参加表明を花道に玉砕... »
最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
岡田と言えば (まり)
2012-11-09 17:39:13
中部地方のジャスコは、今も「おかだや」と称していて、選挙前には「あなたのおかだや」「おかだやをよろしく」というような店内放送が流れるそうです。名古屋の知り合いに聞きました。
返信する
結局は、、、 (常駐人)
2012-11-09 18:41:49
保護制度を悪用している人達のせいですね。つまり、貰わなくても大丈夫な人達。

痴漢をするバカがいるせいで、我々男性が肩身の狭い思いをさせられてるのと、同じ構図。

そういう奴らがいる限りは、どれだけ正論を言ったところで民衆の心には響かないでしょう。

まず、奴らを排除する方法から考えて行かなければ、【厳罰・保護費切り下げ】からは免れないのではないかと考えます。
返信する
一応、ご報告。 (常駐人)
2012-11-09 20:50:06
Twiiterに載せてある、この記事へのアドレスに誤りがありませんか?

僕のPCの問題かもしれませんが、「指定されたページがみつかりませんでした。」と表示されます。

確認してみてくださいませ。
返信する
ほんとうですね! (ray)
2012-11-09 21:26:08
さすが文字通り、常駐人様。
ありがとうございました。
返信する
大勢で仕事をしていると (H.KAWAI)
2012-11-12 06:50:13
○必ずサボっている奴っているでしょう。
○生活保護もそうなんですよ。働けても働かないって奴って何処にでもいるんです。
○確かにそういう奴も問題だけど、今は一寸様相が違ってんですよね。
○だって、「生活保護受給世帯が急増!」なんて言ってますよね。
○サボリが急に増える訳ないでしょう。これって景気の悪化が原因ですよね。
○だったら、景気対策、雇用対策を急ぐのが先決でしょう。
○なのに、失政の責任を誤魔化そうとサボリに非難の目を向けさせるって、これズルイと思いません?
○只ね、日本国憲法第25条を振りかざして権利を唱えるだけってのも些か芸が無いとは思うんですよ。
○それだけだとズルやってのうのうと暮らしている奴ってのを見聞させられた人の怒りって収まりませんよね。
○自分達はなけなしの給料から税金を天引きされて、ギリギリの生活をしているのに、ズルやって生活保護を受けてる奴らは税金無しの、NHKタダの、医療費タダのってこれ当然アタマに来ますよね。
○だから、政府批判をするだけじゃなしに、もっと現実的な解決方法を編み出さないとダメだと思うんですよ。政治家や官僚に任せっぱなしじゃダメですよ。取り敢えずはもっと議論を深めませんとね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

生活保護と生存権」カテゴリの最新記事