一家全員まっ青な肌! 近親婚を繰り返したファゲイト一族とは?
■ファゲイト一族とは?
アメリカ東部のアパラチア山脈周辺は、近年に至るまで地理的・文化的に隔絶され、開拓時代から独自の生活様式や信仰が維持されてきた地域。「青い肌の一族」ファゲイト一族は代々この地域に住んでいた。
【ファゲイト一族の画像はコチラ→http://tocana.jp/2013/11/post_3220.html】
一族の歴史は、青い肌を持ったフランス人孤児、マーティン・ファゲイトが、1820年に東ケンタッキー州のトラブルサム・クリークという場所に住み始め、エリザベス・スミスという女性と出会い、子供をもうけたときから始まったと伝えられている。この時生まれた7人の子どもたちのうち4人が、青い肌を持って生まれたそうだ。
その後も、子孫たちは、青い肌を持った人が数多く現れるようになる。特に、13人もの子どもをもうけ、84歳で亡くなったルナお婆ちゃん(4代目)の青い肌は、「一族の中でも一番だ」として話題になるほど青かったそうだ。
■青い肌の原因
このファゲイト一族の青い肌の謎に、これまで何人もの研究者が挑み、その原因が少しずつ解明されてきた。
血液学者であるマディソン・カウェイン氏やアヤレウ・テフェリー氏は、ファゲイト一族の青い肌の理由は、彼らが両親より代々受け継いできた欠陥遺伝子によって引き起こされる劣性疾患にあることを明らかにした。
もう少し詳しく解説すると、ファゲイト一族の遺伝子には、「シトクロム-b5 メトヘモグロビン還元酵素」と呼ばれる酵素が欠けており、これが「メトヘモグロビン血症」という劣性疾患の原因となっていた。人間の血液中には、通常1%未満のメトヘモグロビンが存在しているが、この数値が異常を示す状態を、メトヘモグロビン血症と呼ぶ。
もしメトヘモグロビンの値が20%以上を超えた場合には、人間は痙攣を起こして死に至ることもあるのだが、これが1%~10%の間である場合、血液が酸素化されずチョコレート色になってしまう。そしてこの血液の色こそ、皮膚が青くなることの原因なのだという。
しかし、ほかの症状は一切引き起こされることなく、何ら健康への影響を受けることはないとされており、実際に、ファゲイト一族の大部分は長生きだった。
ちなみに、現在メトヘモグロビン血症の患者を見ることはほとんどなく、あまりにも稀であるために通常の血液検査で調べられることはないらしい。
■もう一つの事実
さて、もしこのような劣性疾患を引き起こす遺伝子を持つ人が子どもをもうけても、通常それが次世代まで受け継がれることはない。
同じ欠陥遺伝子を持つ配偶者と出会うことなどほとんどないからだ。しかしそれが子孫たちに代々受け継がれてしまったファゲイト一族の場合、さらに驚くべき背景があったようなのだ。
なんと、彼らの劣性疾患は、一族間の血族結婚によりもたらされていたのだという。
ファゲイト一族が暮らすトラブルサム・クリークは、20世紀前半まで地域の外へ出るための鉄道もなければ道路も限られている完全に孤立した地域だった。そのため、集落はいつまでたっても小さいままで住民も限られており、一族の多くが、近隣に住む従兄弟や親族と結婚していたのだ。中には、自分の叔母にあたる人物と結婚したという例もある。つまり、ファゲイト一族とは近親交配の家系を持つ一族であったのだ。
■現在のファゲイト一族
1912年に石炭鉱業が地域に進出してきたことで、ファゲイト一族は徐々にトラブルサム・クリークの外へと移り住むようになり、次第に姿を消していった。
インディアナ大学のキャシー・トロスト氏の調査によると、ファゲイト一族の血を引く者として現在知られている最も若い人物は、1975年生まれのベンジャミン・ステイシーである。1982年の報告で、トロスト氏はこのベンジャミン君の皮膚について「ほとんど紫色だった」と表現している。また、ベンジャミン君の父親は、トロスト氏に家系図を見せ「ご覧のとおり、私の親戚は自分自身なのです」と語ったという。
「ブルーマン・ファミリー」とでも言うべきファゲイト一族の誕生には、遺伝と地理、その両方の影響が深く絡んでいたのだ。2012年にアメリカABC Newsは、当時37歳になったであろうベンジャミン君への接触を試みたが、結局消息を掴むことはできなかった模様。今もどこかで暮らしているファゲイト一族の血を引く人たちが、世捨て人のように、隠れて暮らす必要に迫られていなければよいのだが......。
いかがだったろうか。「ボディ・ブルー 青い人間たち」。今回は青い人間をテーマに、特徴的な身体を持つ人を紹介したが、世の中にはたくさんの生命があり、その数だけ違う運命がある。そして、あなたの知らない驚きや感動の物語もまだたくさんこの世界には眠っているのだ。
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