365日の空

空を見ていると会いたくなる人は居ませんか?空は その人の所まで繋がっています。
そう思って私は今日も空を見上げています

第2回竹富島リゾート開発説明会

2008年06月27日 | 竹富島








午後8時、まちなみ館に島民の姿はほとんどない。
事実私が入場した時は、同時に来た人1名しか居らず
真っ白いノート3冊のうちの1冊に記帳してきた。

人の居ない会場で、私は前に映し出されていたスクリーンをカメラで撮ろうとした。

竹富島東部宿泊施設説明会

こう記されていた。
只これを撮ろうとしただけで、開催者側の女性に注意を受けた。
「今回は撮影禁止となっております」
へっ??何故だろう・・・。そうですかと、私はカメラを下ろしたが、
物足りなかったので、前回のようなプリントは無いんでしょうかっと尋ねた。
「ありません、前のスクリーンで見てください。」と言う、短い返事が返ってきた。
形として残ってしまう物は、何も残さないようにしたいのかなあ。。。
あまりの、冷ややかな機械的反応に少し苛立ちを覚え悲しくもあった。


人の集まりが悪い説明会は、予定の時間を15分あまり過ぎてからようやく始められた。
初めに、開発側が行ったのは開発協定書と言う初耳な書類を永遠15分以上淡々と読み上げていくだけのものだった。
しかも、もごもご言っていて非常に聞き取り辛いうえに、私たち島民の手元には協定書のコピーは無く、
前のスクリーンに映し出された、ゴマみたいな文字を読みきれないまま見つめるしかなかった。
後で、島の方も言っていたが、あんな難しい言葉をズラズラと読まれても
私にも全く意味は分からず、協定書の内容は只の一つも頭に残らないまま耳から抜けていった。
とりあえず「島民には協定書の内容を全て伝えましたよ」と言う事を、どんな形にせよ残したかったのかな?と、私は感じていた。

主催者側の代表はこう述べた
「今日の説明会は、賛成反対を討論する場ではなく、今回は協定書の内容についての説明会です。」
意味が分からない。。。
じゃー何で、肝心な協定書のコピーも島民には配布しない上に、見えないスクリーンなどをぶら下げているのだろう。
これでは、協定書の内容について質問するどころか、疑問を持つ事もできないではないか。
協定書の配布を求める意見に対し、主催者代表の返事は
「欲しい方は個人で役場へ請求してください。我々からはしませんので。」
・・・。どんだけ不親切な説明会なのだろうか。
今夜、説明会があると言う話も、昼間急に聞いた話だ。
星野リゾートの方が来ると言う事は、その日 この島の宿にだって泊まるし、
準備なども考えれば、説明会の日程はもっと前に分かっていたはずだ。
きっと分かっていただろう、開発側の人間と ほんの一握りの人間は。

協定書のコピーを貰う為の手順を知っている人はどれだけ居るのだろう。
協定書と言う言葉さえ、初めて聞いた私には、役場の何処で、何と言って申し込めばいいのかも分からない。
この協定書、申し込めば直ぐに手元に貰えるんですか?貰えないんですか?
こうはっきり聞いた方がいた。
こんな分かりやすい質問にも、返ってくる答えは前置きが長く、結局直ぐには無理だと・・・そう言う事だったと思う。
分かり辛過ぎて、YESなのかNOなのかもよく私には分からなかった。
言い訳じみた説明はいらないのになっ。

なぜ今回、録音も撮影も禁止なのかと言うと、
この質問に対しては、難しい言葉が含まれない分かりやすい答えが主催者(開発者)代表から返ってきた。
「前回の説明会の内容を、ネット上の動画で流された為。良い所が無く、悪い所ばかりを流された。」こう述べていた。

だがこれは仕方あるまい。
なぜなら、私も見たけれども あの動画は、別に加工して作られたものではなく
あの日、現実にあった出来事そのものなのだから。
私達がどう受け止めたかは、個人それぞれだが、
悪い所ばかりと言うのならば それは、自分でも感じているように現実に悪い事ばかりを述べていたのであろう。


撮影禁止と言われて、ガックリしている私の左後ろでフラッシュが光った。
えっ??
新聞社の方だと言う女性の方一名と、主催者側の男性一名が一眼レフカメラでアチラコチラから撮影している。

正直、腹が立った。
一方的じゃないか。


はっきりしない返答にヤキモキしながらも、質問は続いた。
けれど、途中 島のお年寄りの少々長いお話が始まった頃から 
私の耳には、ほとんど何も入ってこず、私は自分の胸を左手の拳骨で叩いていた。
ドクンドクンと まるで左右に大きく揺れているように動く 自分の心臓を静めようとして。
何度かは、右の腕を左腕で ぎゅっと押さえつけていた。
止まらない震えを静めたくって。
私の体は、内側も外側も、手も足も震えていた。
何度もやめようと思ったんだ。
怖くて不安で仕方なくって、何度もやめようと思ったんだ。
でも、結局私は最後の最後に手を上げた。
終わってから友人に言われるまで、気がつかなかった。
その上げた手も、震えていたと言う事。

私の手は、開発側の代表の方の目になかなか留めて貰えなかった。
だから声を出すしかなかった。
気付いて貰えたにも拘らず、時間が無いからと一度は却下された。
でも、私の左手は下がらなかった。
下げる代わりに私の口からは声が出ていた。
「すみません、一つだけお願いします」と。
苦笑いを浮かべながら、じゃーどうぞと時間をくれた。
覚えている限り、正確に自分が質問した内容を書こうと思います。

“ちょと話がずれてしまうかもしれませんが、この場を借りてお聞きしたい事があります。”

ここで、私は黙った。
黙りたかった訳ではない。
言葉が出なかったのだ。
足が震えて、腕が震えて、、、額には汗がにじんでいた。
私は再び、右手だか左手だか忘れたが 自分の拳骨で詰まった言葉を出す為と、
大丈夫・大丈夫と、自分に言い聞かせたくて胸を叩いた。

“以前、2月か3月にリゾート開発賛成の方達だけを集めた説明会があったと言う話を聞いているのですが・・・”

ここで、「説明会じゃないよ」と前列の方が振り向いて私に言った。
開発側代表の方と、私の少し前に座っていた方達の、首を傾げて笑っている顔が私の目に飛び込んできた。
まるで、「何言ってるかコノ娘は。」そう言う表情だった。
怖かった。本当に怖くって、私はつばを飲み込んだ。
でも私は質問を続けた。

“それは本当にあったのでしょうか。もしあったのなら、今後もまた開かれたりするのでしょうか。”

いっぱいいっぱいな状態だったが、こんな内容だったと思う。

説明会じゃなければないで、それでよかった。
ただ、私は本当の事を知っておきたかっただけなんだ。
私だけじゃない、よそから来た只のアルバイトで働いている私達のような人間の耳には、
コノ島の本当の話が、きちんと正確に伝ってこないんだ。
だから、人からの話や、実際に参加してきた人の話だけを聞いて、
泣いたり怒ったり、悔しがったりするしかなかった。
こんな事ばかりで、次第に私は島の人を信じなくなっていた。
でも、ある人に言われたんだ。
「あなたが大事にしたい事をしっかり大事にしながら、じっと島をよく見なさい」って。

私が大事にしたい事は、、、
まちなみ館まで歩いていく時にずっと考えていて思い出したんだ。
私が大事にしたい事は、、、
“信じる”と言う事なんだ。

だから、私の中にあった最大の勇気を使って立ち上がったんだ。
もぉ、周囲からの話ばかりで 人を信じられなくなるなんて嫌だと はっきり気付いたから。

星野リゾートの方が私の質問には答えた。
「勉強会を開きたいと言う事で、呼ばれて話はしました。」
もし、反対される意見があればドンドン聞きたいと言うような事も言っていた。

そうですか・・・。
それならいいんです。
でも、、、聞き忘れてしまった。
勉強会だったのならば、なぜ島民全員に声をかけなかったのか。
そこに選ばれて呼ばれた、特別の人たちは、どういった基準で選ばれたのですか?
あの時の私に、コノ質問をする余裕はもぉなかった、、、悔しいけれど。


席についた私は、どんなだったのだろう。
怖くて出そうになった涙は堪えたが、鼻水はすすっていた気がする。
私の真後ろに座っていた方が、両手で私の肩を押してくれた。
痞えていた空気が少し出て行った。

いつの間にか、説明会は終わり、みんな自分の椅子をかたし始めていた。
内盛荘のお客さんが、優しく言葉をかけてくれた。
擦れ違いざまに、仲盛荘のお母さんが私を見て肩をポンッと叩いていった。
出入り口の椅子にお母さんは座っていたけれど、私は近寄れなかった。
こんな出しゃばった事をして、ずっと良くしてくれた仲盛荘のお母さん達に迷惑をかけてしまった気がして。。。
巻き込んでしまうわけにはいかないと思った。
これでもし、私を雇ってくれている人にまで迷惑がかかったらどうしようと不安だった。



まちなみ館から出て歩き始めた私の頭に、ガシッと大きな左手が乗っかった。
暗い中で誰かと思って見上げたら、あの友人だった。
いつもいつも、
いつだって、私が本当に困った時に助けてくれた、守ってくれたあの人だった。
あの友人と、さっきまで隣に座ってくれていた友人、3人で夜道を帰った。
友達の家は近かったのに、家についても その人は黙って私の前を歩いていた。
もう一人の友達は、ぴったり私の横についてくれていた。

もう直ぐ小学校と言うあたりで、私は泣いた。
まだ震えていた体を、無理に止める事もなく、
震えるがままに、怖かった・怖かったよと 只それだけを言っては泣いていた。
二人の友人は、どんな顔をして私を見つめていたんだろう。
一人が言った。
「大きくなったなぁー。」って。


この二人は、ずっとずっと付き合ってくれた。
自分がとった行動にバカみたいに震えて泣き続ける私を、一人にはしなかった。
日付が変わっても、ずっと一緒にいてくれた。


また、助けられちゃった。

こんな人に出会えた事、
これってきっと、私の人生で一番大切にしなければいけない出来事だと感じずには居られなかった。






怖くて怖くてたまらなくて、
今も私の手は震えている。