不意に土曜の昼間に、時間が空いてしまった。
何もすることの無い、土曜の昼下がり。
外を見ると、ごろごろと過ごすには勿体無いほどの良い天気だ。
思い立って、読みかけの本を持ち、近所のスーパーキヌサヤ前にある公園に出かける事にした。
電車の中だけが読書の場所になって、何年経つだろう。
以前は日がな一日、公園で本を読み耽っていた事もあったのに。
公園のベンチは空いていた。
何組かの親子が、ブランコやジャングルジムなどの遊具で子供を遊ばせているほかには、人はいない。
ただ、キヌサヤに通じる隣の道は、そこそこ、買い物に人が行き来していた。
私は、木漏れ日のさすベンチに座って、読みかけだった本を開いた。
秋の日差しの中、そよそよと吹きぬける風が心地よい。
最初は、公園の物音が少し気になっていた私も、何時しか本の世界に没頭していた。
「こんにちは!」
不意に声をかけられて、私は顔を上げた。
「ああっ、こんにちわ。」
慌てて返事をする私に、初老の男性がにっこりと笑いかけて通り過ぎてゆく。
隣にいるのは、奥さんと娘さんのようだ。
二人とも、私に軽く会釈して通り過ぎていく。
「え、えっと?」
私は、混乱した。
知らない人かと思ったのであるが・・・。
「あ、斉藤さんだ・・・。」
確かに得意先の営業二課にお勤めの斉藤さんだった。
「斉藤さん、この辺だったんだ・・・。」
斉藤さん一家は、楽しそうに話しながら、キヌサヤに向かっている。
夕飯の買い物だろうか?
奥さんの体調が悪いと言う噂も聞いていたし、娘さんが難しい年頃で大変だ、という話もあったが、今日の斉藤さん一家には、そんな影は微塵もない。
キヌサヤの前には、でじーずの着ぐるみが出ていて、何かの販促をしている。
それを見つけた娘さんが、でじーずにはしりより、何かを言いながら斉藤さんをみて笑っている。
「あやかちゃん・・・だったっけな。
笑顔がなんて可愛いんだろう・・・。」
私は、しばらく斉藤さん一家に見とれていた。
やがて、キヌサヤに斉藤さん一家が消えたのを見届けると、私は再びベンチに座って、本を読み始めた。
しかし、なんだか目の前が朦朧として、本の字が読めない。
目を擦ってもダメだった。
「なんでだ?何故本の字が・・・。」
そのまま、私の意識がぼーっとして・・・・。
「ううっ、さぶっ!」
吹き抜ける夕暮れの秋風に、私はベンチから飛び起きた。
いつの間にか寝入っていたらしい。
だが、妙である。
開いているページは、私が読み始めてから少ししか進んでいない。
「おかしいなぁ、確かもっと先まで読んで、そこに丁度斉藤さんが通りかかって・・・。」
だが、読んだ筈の内容は思い出せない。
それに、よく考えると、斉藤さんがこの辺に住んでいるはずが無い。
「夢だったのか・・・な?」
あの、斉藤さんの笑顔、奥さんの、そしてあやかちゃんの笑顔。
あれは夢だったのだろうか・・・?
しかし、私には、なんとなく確信があった。
今日の斉藤さんは、夢だったのかもしれない。
だけど、きっと、キットすぐに、あの斉藤さんの、あやかちゃんの笑顔にまたあえるだろうと。
そう思うと、ちょっとだけ、私の心が温かくなった。
私は、すこし襟を立て、本を小脇に抱えると、家路に着いたのである。
- よき日が ふたたび おとづれることを 祈りつつ 風に語りて・・・ -
何もすることの無い、土曜の昼下がり。
外を見ると、ごろごろと過ごすには勿体無いほどの良い天気だ。
思い立って、読みかけの本を持ち、近所のスーパーキヌサヤ前にある公園に出かける事にした。
電車の中だけが読書の場所になって、何年経つだろう。
以前は日がな一日、公園で本を読み耽っていた事もあったのに。
公園のベンチは空いていた。
何組かの親子が、ブランコやジャングルジムなどの遊具で子供を遊ばせているほかには、人はいない。
ただ、キヌサヤに通じる隣の道は、そこそこ、買い物に人が行き来していた。
私は、木漏れ日のさすベンチに座って、読みかけだった本を開いた。
秋の日差しの中、そよそよと吹きぬける風が心地よい。
最初は、公園の物音が少し気になっていた私も、何時しか本の世界に没頭していた。
「こんにちは!」
不意に声をかけられて、私は顔を上げた。
「ああっ、こんにちわ。」
慌てて返事をする私に、初老の男性がにっこりと笑いかけて通り過ぎてゆく。
隣にいるのは、奥さんと娘さんのようだ。
二人とも、私に軽く会釈して通り過ぎていく。
「え、えっと?」
私は、混乱した。
知らない人かと思ったのであるが・・・。
「あ、斉藤さんだ・・・。」
確かに得意先の営業二課にお勤めの斉藤さんだった。
「斉藤さん、この辺だったんだ・・・。」
斉藤さん一家は、楽しそうに話しながら、キヌサヤに向かっている。
夕飯の買い物だろうか?
奥さんの体調が悪いと言う噂も聞いていたし、娘さんが難しい年頃で大変だ、という話もあったが、今日の斉藤さん一家には、そんな影は微塵もない。
キヌサヤの前には、でじーずの着ぐるみが出ていて、何かの販促をしている。
それを見つけた娘さんが、でじーずにはしりより、何かを言いながら斉藤さんをみて笑っている。
「あやかちゃん・・・だったっけな。
笑顔がなんて可愛いんだろう・・・。」
私は、しばらく斉藤さん一家に見とれていた。
やがて、キヌサヤに斉藤さん一家が消えたのを見届けると、私は再びベンチに座って、本を読み始めた。
しかし、なんだか目の前が朦朧として、本の字が読めない。
目を擦ってもダメだった。
「なんでだ?何故本の字が・・・。」
そのまま、私の意識がぼーっとして・・・・。
「ううっ、さぶっ!」
吹き抜ける夕暮れの秋風に、私はベンチから飛び起きた。
いつの間にか寝入っていたらしい。
だが、妙である。
開いているページは、私が読み始めてから少ししか進んでいない。
「おかしいなぁ、確かもっと先まで読んで、そこに丁度斉藤さんが通りかかって・・・。」
だが、読んだ筈の内容は思い出せない。
それに、よく考えると、斉藤さんがこの辺に住んでいるはずが無い。
「夢だったのか・・・な?」
あの、斉藤さんの笑顔、奥さんの、そしてあやかちゃんの笑顔。
あれは夢だったのだろうか・・・?
しかし、私には、なんとなく確信があった。
今日の斉藤さんは、夢だったのかもしれない。
だけど、きっと、キットすぐに、あの斉藤さんの、あやかちゃんの笑顔にまたあえるだろうと。
そう思うと、ちょっとだけ、私の心が温かくなった。
私は、すこし襟を立て、本を小脇に抱えると、家路に着いたのである。
- よき日が ふたたび おとづれることを 祈りつつ 風に語りて・・・ -
虎さん、連れてきますね。
「今日の斉藤」が夢なら、これからもみんなで
「夢の続き」を作っていきましょう。
目が覚めてしまうと消えてしまう普通の「夢」とは異なる
「みんなの記憶に残る夢」として・・・
真似程度しかできないですよ。^^;
逆に逆鱗に触れねばよいがと...^^
★中の人
少し、様子を見に行きましたが、
折角の水入らず、慌てて帰ってきて
しまいましたよ。^^
★でじたるさん
とりあえず、でじたるさんのおかげで、
とまっていた、コメントができました。
ありがとう。