不条理み○きー

当面、きまぐれ一言法師です

「名前を付ける事が好きな王様」

2005年11月27日 00時48分20秒 | Story

「うん、これは、クイット草。
 こっちは、ひらりの木じゃ!」
 
 今日も、王様は名前を付けています。
 それも、もう、ちゃんとした名前のあるものに。
 
 一度、珍しい木々を贈られて、名前を付けたときに

「いや、流石、王様。
 素晴しい名前でございます!」

 なんて、褒められたものだから。
 
 それからは、有頂天。
 次から次に、新しい名前を付けています。
 
 最初は、木や草だけでしたが、段々、名付けるものが
 無くなってくると、石や山、果ては魚、動物、鳥までも
 新しい名前を付けるのです。
 
 新しい名前は、毎日のように、御触れで城下に伝わります。
 
「ひとつ 今日から、この草をクイット草と呼ぶ。
 ひとつ 今日から、この木をひらりの木と呼ぶ。」
 
 なんて具合にね。
 
 最初は、中々素敵な名前もあって、ちょっとおもしろがって居た
 城下の人も、最近は、ちょっと呆れ気味。
 
 それでも、そんな事はお構いなし。
 王様は、今日も名前を付けています。
 
「うん、これは、くるっとしているからくるっとの木。
 それから、こっちは、もさもさしているから、もさもさ草。」
 
 王様が、良い調子で名前を付けていると、どこからか・・・。
 
 うふふふ くすくす 
 
 何だか、小さな音がします。
 その音にぎょっとして、王様は衛兵に聞きました。
 
「なんだ!今の音は!
 まさか、『やつら』がおるのではあるまいな?」

 しかし、衛兵は、無表情で答えます。
 
「いえ、王様。何の音も聞こえません。
 ここには、王様と衛兵しかおりません。」

 衛兵の答えに、王様は不満げに答えます。

「そうか?そうならば、よいのじゃが。」
 その時、衛兵が、そっと部屋のカーテンの奥に目配せした事に
 王様は気付きません。
 
 そして、王様は、気を取り直して始めました。
 
「おほん、ではいくぞ。
 おお、なんととげとげした葉っぱじゃ。
 この木は、とげピーの木と名付けよう!」
 
 くすくす うふふふ
 
 王様は、また、ぎょっとして衛兵に聞きます。
 
「ほら!聞こえた!
 間違いなく、聞こえたぞ!
 衛兵!部屋の中を捜すのじゃ!」
 
 しかし、衛兵は、またしても無表情で答えます。
 
「いえ、王様。何の音も聞こえません。
 何度も申しますが、ここには王様と衛兵以外おりません。
 王様は、この国の衛士隊をお疑いですかな?」
 
「いやいや、そんな事は無いのじゃが。」
 王様は、渋々、諦めます。
 
「まあ、よい。次じゃ!
 おおこれは、綺麗な赤と緑の葉っぱじゃな。
 よしよし、これは、赤緑草と・・・。」
 
 王様が、そう言ったときです。
 
 あっはははははは きゃっははははは
 うふふふふふふ えっへへへへへ
 
 部屋中に、笑い声が溢れました。
 王様は、顔を真っ赤にして叫びました。
 
「だっ、誰じゃ!儂を笑うものは!」

 その声に、答えるかのように、部屋のカーテンの影から
 何かが次々と顔を出しました。
 
 それは、城下の子供達でした。

 あっはははははは きゃっははははは
 うふふふふふふ えっへへへへへ

 子供達は、再び大声で笑いました。
 王様は、更に顔を真っ赤っかにして叫びました。
「な、な、な、な、何がおかしいのじゃ!」

 その問いに、子供達が声を揃えて答えました。
 
  だって、王様、それは、ポインセチアだもの
  ずっと、前からそういう名前
  いくら王様が、名前を付けてもポインセチア は、ポインセチア
  
 それを聞いて、王様は、赤くなったり青くなったり。
 そして、そのままダッと駆けだして、王様の部屋に閉じこもって
 しまいました。
 
 衛兵は、子供達に言いました。
「いやぁ、みんな、ありがとう。
 これで、暫くは王様も懲りるだろう。
 下の大広間に、お城の料理長が作ったお菓子がたんとある。
 みんなで、食べていってくれ。」
 
 その声に、子供達は、「わーい」と歓声を上げて、
 みんな走っていきました。
 
 そう、衛兵も困っていたのです。
 調子に乗った王様を止めたくて、子供達を呼んだのです。
 だって、誰も使ってくれない名前を、毎日毎日御触れにして
 叫んで回るのは、衛兵もこりごりだったのですよ。
 
 え?王様なのに、子供達に負けちゃうのは何でかって?
 それはね、この王様は、前にも子供にしてやられたんですよ。
 
 そうです。
 この王様こそ、例の「はだかの王様」だったのですから。
 
 ~ Fin ~


【TB】 クリスマスパレード  ♪お玉つれづれ日記♪

 クリスマスまで、あと一月を切りましたよ♪

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2 コメント

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しかし王様のセンスって・・・(笑)。 (お玉)
2005-11-27 01:32:46
この頃、よく思うことですが

目に見えない『お触れ』のようなものは、どこの世界にも存在するのだろうと思います。



このおはなしは、今のお玉の日常を振り返ると、素直に笑うことのできない寓話でしたよ。

ぷよぱぱさんは、私のあの短い書きなぐりから、いったいどこまで感じ取ったんだろう。



さて、もうすぐクリスマス。

年末に近付くとともに、こちらも公私共に慌ただしくなってきました。

ばたばたと余裕のない毎日ですが、最近になってちょっとした出来事がきっかけで吹っ切れたというのか、それが原動力となって創作意欲が湧いてきています。自分の中で新しい『種』が生まれた実感があります。



厳しいけれど、C-Uというユニットに参加したことが、とてもプラスになりました。よろしければ、またあちらの方でつもる話などいたしましょうね。



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「御触れ」 (ぷよぱぱ)
2005-11-27 01:43:22
★お玉さん

 うっ、即米、びっくりです。^^

 確かにそうですよね。

 到る所に、無用の「御触書」がある気がします。

 うちの会社も人ごとではないな。^^;

 

 いや、お玉さんの記事を読んで、お話に仕立てたのは良いものの、お玉さんの「怒り」に対して、的はずれだったらどうしよう?!とドキドキでしたが、あながち外れでも無かったようなので、安心しました。^^



 創作意欲がわいているとのこと、これからの作品が楽しみです。

 って、のんきに傍観している場合じゃないのかな?! <俺(汗



 一緒に、がんばりましょうね!
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