不条理み○きー

当面、きまぐれ一言法師です

「語り口の妙」

2009年08月11日 10時24分00秒 | Book

隣之怪 木守り

知らない人は知らないが、知っている人は知っている「新耳袋」の共著者のひとり、木原 浩勝氏が、新耳シリーズ完結後に始めた新しい階段シリーズである。

「新耳」と同じく体験談を元にしているが、「新耳」が、その体験を第三者的にかつ、起こったことを淡々と記載していたのに対して、このシリーズでは、2つの変更が加えられている。
ひとつは、「新耳」では封印していた、「因果」「因縁」に触れたこと。
もう一点は、語り口を一人称、つまり俺、私に変えた事である。

この二つの変更によって、「新耳」よりも、体験者から直接語ってもらっている様な雰囲気が出ているのだけれど、難点もある。
「新耳」でもそうなのだけれど、木原氏は体験談をそのまま書いているのではなく、ある程度読みやすいように編集・加筆して書いている。
怪談話でありがちなのだが、体験談というのは、どうしても素人語りなので説明が十分でなかったり、一番伝えたい部分が、伝わってこなかったりする事があるからだ。
「新耳」の時は、「Kさん」とか「Fさん」とか三人称にして、その体験談の怖さの核の部分を抜き出してシンプルにまとめていたのだが、今回、上の2点を変更した事でどうしても文章が冗長な物になってしまった感がある。

しかも、想像だけれど、木原氏は、「体験談」を元にしている以上、その人自身が話してくれている様な雰囲気を残そうと、極力、元々の語り口に手を入れていないのだと思う。
なので、狙い通り、体験者から直接聞いているような雰囲気が味わえる一方で、素人語り特有の解りにくさや冗長さも残ってしまった感がある。

その意味で、「新耳」に比べて、今ひとつ、まどろっこしい印象を受けた。
なので、私の評価は星三つ。

☆☆☆★★

後、個人的に25話では読み足りなかったので、今、ハードカバーで出ている「九十九話」に期待したい。



隣之怪 木守り(MF文庫ダ・ヴィンチ) (MF文庫 ダ・ヴィンチ き 2-1)
木原浩勝
メディアファクトリー

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