紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界」ドゥーガル・ディクソン

2004年10月26日 | た行の作家
前々から気にはなっていたのですよ、ちょっと特異な表紙イラスト。
それは、人類滅亡後、5000万年後の世界で闊歩する
“進化”した動物。要は空想の図鑑なのですが(笑)。
しかしながら、これがまた、ものすごく説得力がある。
というのも、想像は想像でも、ちゃんと進化学や生態学の
基本原理に則ったモノなので、ちゃんとした理由があるです。

はじめの方には、地球の成り立ちから生物の進化論まで、
きっちりと、でも分かりやすく説明されていて、これを踏まえからでないと、
この“空想の図鑑”の面白さが半減してしまいます。
例えば、同じ種が環境などによって少しずつ違った進化を見せる場合が
ありますよね。で、隣り合う亜種同士は交配可能なんだそうです。
が、その両端は交配できない。少しずつの変化が両端では
大きな変化となって、同じ亜種でも遺伝上違う生物となってしまうのです。
ほかにも、イルカやサメは同じような流線型の形をしているけれども、
海棲動物から進化したのはサメだけで、イルカはほ乳類から進化している、と。
こういうのを収斂進化というのだそうです。
学校の勉強はまったく面白くなかったんですけど、こうやって
書かれてあるとどうして面白いんでしょうね(笑)。
学校の教科書も、もっと面白く書けばいいのに、と思ってしまいます。

人類滅亡後5000万年後の地球では、プレートが移動し、大陸の形が
変わっています。人間が破壊しつくした自然もなんとか回復した様子で、
そこにはその時代に合った生態系が作られているのです。
例えば、温帯の森林や草原では、人類時代に繁栄していた有蹄類は
人類とともに絶滅。というのも、家畜化されたヤギやウシなどの
有蹄類は、大きな環境の変化に耐えることができなかったんですね。
そこへ取って代わったのは、人類時代は作物を荒し駆除しても
しきれなかったウサギ類。環境の変化に柔軟に対応し、繁殖力も
強かったので、場所や気候に合わせて都合よく進化できたんですね。
そういった草食動物を捕食する肉食動物には、齧歯類が進化します。
簡単に言えばネズミの類いですね。これも、駆除対象動物。
常日ごろから厳しい環境におかれているモノだけが生き残れる、
と、これも自然の重要な法則なのだと、改めて気付かされます。
ちなみに表紙のイラストは、コウモリが進化した「ナイト・ストーカー」。
ハワイの辺りに誕生した新しいしまに、最初にコウモリが飛来したんですね。
天敵もおらず、安定した生活を送るうちに飛ばなくなり、翼は退化。
しかし昔のなごりで前脚が発達し、モノなどを掴んでいた後ろ足が、
手の変わりをするようになりました。夜行性なので目は退化し、
超音波を受ける耳と鼻葉が大きく発達。爬虫類だろうがほ乳類だろうが、
見境なしに遅う凶暴な動物となりました。

こんな感じで、地球全体の動物を、進化の過程などを含めて
丁寧に解説してます。添えられたイラストが目を引きますね。
子供の頃、飽きずにずっと図鑑を開いていたころを思い出します(^-^)。

アフターマン
ドゥーガル・ディクソン著・今泉吉典監訳出版社 ダイヤモンド社発売日 2004.07価格  ¥ 2,520(¥ 2,400)ISBN  4478860467bk1で詳しく見る オンライン書店bk1