紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「船上にて」若竹七海

2004年10月14日 | わ行の作家
ノンシリーズな短編集。
相変わらず、ぞくぞくする悪意満載です(笑)。
若竹さんの短編は、連作でなら何度か読んだし、
アンソロジーなどに収録されているものも
いくつか読んだのですが、こうやって集まった
短編集は初めてですね。しかも、自選だそうです。
〈時間〉〈タッチアウト〉〈優しい水〉〈手紙嫌い〉
〈黒い水滴〉〈てるてる坊主〉〈かさねことのは〉
〈船上にて〉の8編を収録。

最近知ったのですが、若竹さん、
タイタニックに非常に興味を持っていらっしゃる、と。
「海神の晩餐」なんかがその極みだそうですが(未読なの)、
それにしても、「名探偵は密航中」やら本作やら、
豪華客船モノがお好きなようです(^-^)。

“ナポレオン3歳のときの頭蓋骨”が盗まれた-。
フランス行きの船で知りあった老人は、甥が騒ぐのをしり目に
昔話を始めた。それは、ダイヤの原石が盗まれたという話で…。
                      (〈船上にて〉)

表題作〈船上にて〉は、なんといいますが、
収録作品中、いちばん心に残った作品です。
あの、最後の1行にヤられてしまいました(笑)。
だって、あの方は私の心の師ですもの(何)。
でも、若竹らしい悪意の権化といったら、
手紙嫌いの主人公が必要に迫られ、手紙文例集を手に取る
ところからおかしくなる〈手紙嫌い〉とか、
主人公の女性が幽霊が出る宿に宿泊する
〈てるてる坊主〉なんかじゃないでしょうか。
といいつつ、いろんなサイトを見て回ったのですが、
大方、負けず嫌いの(笑)ストーカーと被害者の攻防(?)
を描いた〈タッチアウト〉を挙げてらっしゃいます。
…感性が違うのか、私が勘違いをしているのか(^^;)。
悪意にこだわらず、若竹らしいといったら
手紙が綴るミステリー〈かさねことのは〉。
〈てるてる坊主〉もそっち寄りかな。
気付くとビルの隙間で寝ていた主人公が、その日の出来事を
思い出していくという〈優しい水〉は、ブラックで楽しい(笑)。

「船上にて」若竹七海