紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「クリスマス12のミステリー」アシモフ他編

2005年03月14日 | アンソロジー
BOOK OFFで見つけた、初めての洋モノのアンソロジー。
アシモフが編者でしかも執筆者である、というところに
惹かれて手に取ったのですが、執筆陣を見てまた驚き。
実に豪華なこと! アシモフと、クイーンと、ホックとカーを
除いて、あとは全部初体験(笑)。おかげで堪能できました(^-^)。

ミステリーとして見た場合、いちばん面白かったのは、
「真珠の首飾り」ドロシー・L・セイヤーズと、
「フランス皇太子の人形」エラリー・クイーン。
クイーンって実はまだ「Xの悲劇」しか読んでなくて(^^;)、
当然、クイーン親子ものって初めてだったんですけど、
なんだ、法月の綸太郎モノと同じじゃん、って(笑)。
思った以上に軽くて、とても読みやすかったです。

キャラクターが魅力的で楽しめたのは、
「クリスマスの万引きはお早めに」ロバート・サマロット。
“やんちゃ”なおばさまが、とてもいい味を出してました。
それと「煙突からお静かに」ニック・オドノホウは2人の
若くてカッコイイ探偵コンビが素敵なんですよ。そして、
かれらにまとわりつく(笑)子供たちがいい。
「尖塔の怪」エドワード・D・ホックは、サム・ホーソーン
ものでしたが、訳者が変わるとがらりと雰囲気が変わりますね。

そして、なかでも、いちばん面白かったのは、
「目隠し鬼」ジョン・ディクスン・カー。ミステリーという
よりは、ホラーの色が濃いのですが(でもちゃんと本格です)、
きっと皆さんが言うカーの魅力って、これなんだろうな、と
実感した次第。うん。カーってすんごい面白いよ。
さらにもう一つ、「クリスマスの十三日」アイザック・アシモフは
これまた文句なしにいい。語り口から登場人物、落としどころまで、
ものすごくいいんだなあ(にっこり)。実は「黒後家蜘蛛の会1」
しか読んでないのですが(^^;)、こんな文章を書く人なら、
SFだって読めちゃう気がする(でも、気がするだけ(笑))。

苦手意識を持っている洋モノに対して、それを取り除いて
くれる、とても素敵な1冊でした。やっぱり、時期を合わせて
クリスマスに読んだ方が、さらに気分も盛り上がったでしょうね。


「クリスマス12のミステリー」アシモフ他編(新潮文庫)

【カバー裏より】
 ジングルベルのメロディーが流れ、樅の木の飾りつけが終わり、ケーキも用意して、あとはサンタの小父さんを待つばかり。でも、油断してはいけません。犯罪者は、クリスマスだからってお休みしたりはしないから……。ユーモア・ミステリーから本格密室殺人まで、聖誕祭にまつわる12編をDr.アシモフが精選。ミステリー・ファンのための、知的で素敵なクリスマス・プレゼント。

「死んでも治らない 大道寺圭の事件簿」若竹七海

2005年03月14日 | わ行の作家
やはり、若竹は短編がいい。テンポがいい。キレがいい。
そして何より、仕掛けもいい(にっこり)。

大道寺圭は、警察を辞めた後、自分が遭遇したマヌケな
犯罪者をネタにした著書「死んでも治らない」を発行してから、
全国各地で講演に呼ばれるのだけれども、またその行く先々で
“マヌケ”な犯罪に巻き込まれ…。

それが短編になっているのですが、「大道寺圭最後の事件」という
大きな一つの物語の途中にこの短編が挿入されるという、
ちょっと変わった体裁を取っているのですね。しかしこれも、
また若竹さんの“仕掛け”だったりするのがとても嬉しい。
読んでて、だんだんと大道寺のことを好きになっていくのですよ、
たんなる“おっさん”なんですけどね(笑)。
短編の中に、おなじみ葉崎の町も出てくるのですよ(^-^)。
登場人物も少しクロスオーバーしてるしね、そういうのを
見つけるだけで、なんだか嬉しくなりましてか。
そしてまた、続編を予感させるような終わり方もいい感じ。
出るといいなあ、続編。


「死んでも治らない 大道寺圭の事件簿」若竹七海(光文社文庫)

【帯より】
犯罪者の9割はまぬけである。
ブラックな笑い。ほろ苦い結末。
コージー・ハードボイルドの逸品!

【カバー裏より】
 元警察官・大道寺圭は、一冊の本を書いた。警官時代に出会ったおバカな犯罪者たちのエピソードを綴ったもので、題して「死んでも治らない」。それが呼び水になり、さらなるまぬけな犯罪者たちからつきまとわれて……。大道寺は数々の珍事件・怪事件に巻き込まれてゆく。ブラックな笑いとほろ苦い後味。深い余韻を残す、コージー・ハードボイルドの逸品!