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南北朝(日本)時代と漫画家・車田正美先生の作品を瞑想する部屋。

【楠正儀】梛の雑学(2)-那辺の記憶-

2008年04月27日 00時00分40秒 | 楠正儀

梛(椥)を分けたら「那」と「知(智)」が出た・・・これはどうでも熊野三山と関係がありそうです。むむ、遠い。

『熊野三巻之書』の語るところによれば、むかし天竺(インド)のマカダ国から飛来した熊野神が大斎原(おおゆのはら)のイチイの樹の梢に三枚の月と化(な)って天くだった。(中略)熊野本宮大社の社殿は明治二十二(1889)年の大洪水に遭うまで熊野川、音無川が合流する大斎原にあった。

また、熊野本宮大社は、近年まで熊野坐(くまのにます)神社と呼ばれており、古くは熊野坐神が主神とされていた。木の神だったといわれている。

『熊野古道を歩く 熊野詣』(講談社)

おおおおお。なんとしたことか。
ナギじゃないって、イチイだって。科目{属目{種目}}としてそれは“別人”。「ナ」の木を探しにやって来たのに、まったく一筋縄では行かない存在です。

熊野本宮大社と新熊野神社は梛(椥)をイチイ(イチヰ)科としているようです。しかし、笏(しゃく)に使われるイチイの類と、水に強く、浴槽の材になるマキ科は生物学の分類において異なる種でしょう。でないと、ナギにもいろいろあることになりますから。どういうことでしょうね。今度、行ったら凸レポします。

那智の大瀧(2001年12月17日撮影) ともあれ、熊野本宮大社と熊野速玉大社の境内には神木として梛があります。熊野那智大社(※01)の境内は確かめていません。
これは那智の大瀧。西国三十三番札所の第一番、那智山青岸渡寺の境内から撮影しました。勤行後、御来光直前に東の空をぴゅーっと横切る人工衛星(と思われる)も撮りましたが、縮小したらなにがなんだか・・・載せられなくなりました(がっかり)。
※01:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町。

ここからは游びです。

『樛木』から「那(奈)」を経て「冄(冉)」に到り、つらつらと思い浮かべたのが、

  • :戸(とびら)と冊(字を書きつける竹ふだ)とを合わせて、戸口にかける札の意を表す。転じて、「ひらたい」意に用いる。

    ①薄く平らな札。表札や額など。「扁額」
    ②ひらたい(ひらたし)(ア)平らで幅が広い。「扁平」(イ)長円形(oval)の。

    ①小さい(小)。「扁舟」
    あまねし。[同字]遍。「扁然」
    ③漢字の構成で、左右に分けられるもののうち、左の部分。[同字]偏。「扁旁」
  • :徧が本字・彳(辶は変化した形。みち・ゆくの意)と、音を表す扁(ヘン:ひろがる意)とで、ゆきわたる意を表す。
    あまねし。あまねく。ひろく行きわたる。すみずみまで。「普遍」
    ②たび。回数を表す語。「百遍」
  • :口と稠のもとの字(田に作物が密生するさま)を合わせて、ことばがゆきとどく意を表す。ひいて「あまねし」の意、転じて「めぐる」意に用いる。
    ①こまやか(密)。ゆきとどく。「周密」
    あまねし(遍)。広くゆきわたる。「周知」
    ③めぐる。まわる。「周遊」
    ④まわり(まはり)。めぐり。「周囲・一周」
    ⑤まこと。公平。「君子周而不比(クンシはシュウしてヒせず)」[論語・為政]
    ⑥王朝・国の名。

『福武漢和辞典』(福武書店)

そして「安寧」「安楽」という言葉。それで、あ、奈良(寧楽)だ、と。
ああ、何処かに、冉冉(ゼンゼン)として時間の廻る安寧とした空間(ナ)があるんだな、彼岸だな、そこからやって来た人々がいつか帰寧するため、どこから来たのか忘れないように守っているものがあるんだな、と。
大和よりも古いあの辺りの名を知りたいところです。那はクニと訓じたっけ。ちなみに紀伊はキの国で古名は「ソサ」とか。

那智は「那に到る智」でしょうか。ナから来る(↓)、ナへ往く(↑)ための智識。蔵。双方向(チャネル)。なんだか虚空蔵の話になってきた。
ま、仏教の聖地ですから。
悉曇(サンスクリット語を表す梵字)の体文(子音)に発声・用音を異にする「na」が4つあり、

  • 漢字「仰」、字義「支分」
  • 漢字「若」、字義「智」
  • 漢字「挐」、字義「諍」
  • 漢字「那」、字義「名字」

ここからも着想を得ています。なんとなく。

人からの伝聞なので定かではないけれども、昔、葛城は「カツ(ウ)ラ(から)来」の転訛(カツ(ウ)ラキ⇒カツラギ)だと聞いたことがあって、「ナ(から)来」の転訛(ナキ⇒ナギ)があってもいいな、とも思います。

新熊野神社の“大樟さん”(2002年10月25日撮影) 楽しい游び、終わり。
これはだいぶ雑学からはずれてしまったかもしれませんねぇ。 梛でこれだけうろうろできます。「南木」から来たことを忘れそうです。
「ナ・ギ」の一族はとても古く、なにかを「憶えている人」「知っている人」「忘れない人」で、梛はそれを想起させる樹として大事にされているのではないか・・・と考える次第です。今は。
「ク・ス」については、そのうちに。

参考文献:
『秘められた日本古代史 ホツマツタヘ』(松本善之助/毎日新聞社)
『梵字手帖』(徳山暉純/木耳社)


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5 コメント

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こんばんは^^ (楠七郎)
2008-04-28 22:32:49
こんばんは^^

すごく興味深く、また楽しく拝読しました。
本を書けるくらい話ですね^^

葛城氏と楠木氏の関連を言っている人が私の側にいますが、
この「なぎ」の話から、「かつらぎ」が出てくるとは思いませんでした。

また、「虚空蔵」の単語にも、おぉと思いました。
たまに私が見る夢で、虚空蔵菩薩の真言を皆で唱えている夢を見ます。
過去世の自分はDNAが叫んでいるのか^^;

なぎらさんの文面が、とても心地いいです^^
返信する
訂正。 (楠七郎)
2008-04-28 22:34:08
訂正。

自分は→自分か

です^^;
返信する
楠七郎様 (なぎら)
2008-04-29 15:21:50
楠七郎様

こんにちは。度々のご来訪、ありがとうございます〈(_ _)〉。

>葛城氏
関連はあると思います。問題は「どう関連があるのか」ですね。
これも人伝ですが、

・阿波勝浦/勝占 (徳島県)
・紀伊勝浦      (和歌山県)
・安房勝浦      (千葉県)

カツウラは「忌部」の通った道で、「カツウラから来」たから「カツ(葛)らき」だ、なんて話を聞いて遡ったら、どうも囎唹(ソヲ)国(鹿児島県)から黒潮に乗ってやって来たようで。そちらの方に楠正行の「墓」があるのも興味深いです。ええと、甑(こしき)島でしたっけ。

>虚空蔵菩薩
それはモロですね(^^;)。七郎さんの先祖供養(三十三×nn回忌とか)に応えてなにか思い出してほしいことがあるのではないでしょうか。
返信する
>葛城氏 (楠七郎)
2008-04-30 00:18:57
>葛城氏

勝浦の話、面白いです^^
なんか説得力があります。

大阪府と奈良県の境の葛城山と
大阪府と和歌山県の境の葛城山も
なんか関係ありそう^^;

>正行
そうですね。
私の知り合いはお墓参りに行ってきましたゎ。
私は額田の首塚に行きますが。

>先祖供養
そうかもしれませんね。
なんか波長が合うのが私なんかも^^;
たまたま虚空蔵菩薩の真言と白装束の男性でしたが、
先日は十一面観音様の真言と仏像がでました。
返信する
楠七郎様 (なぎら)
2008-04-30 22:43:13
楠七郎様

こんばんは。いつもありがとうございます。

>葛城山
都道府県は便宜上、行政区画として分けられたものですから、いずれの葛城山も昔は“1つの山”として認識されていたのかもしれません。
山とか河川とか、昔の境界を想像して地図を見るようにしています。大和川や淀川のように、改修工事によって流れが変わっていることもありますので。

>お墓参り
そのお気持ちはよくわかります。自分も行きまくりました(^^〃)ゞ。

>十一面観音様
そちらまで御出でになりましたか。なぎらめも札所を廻った折はお世話になりました。七郎さんはVIPですね。
「かつらぎ」についても、いずれ拙文を上げたいと思います。よろしくお願い申し上げます〈(_ _)〉。
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