『二月女形歌舞伎 第一部 於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)』(ル テアトル銀座)を観てきました。
- 油屋 お染
- 丁稚 久松
- 奥女中 竹川
- 許婚 お光
- 後家 貞昌
- 芸者 小糸
- 土手のお六
多い時は、同じ時刻、同じ場所に市川亀治郎(の役)が3人いました。
こういう伝統芸能に触れると、所作が暗示する「なにか」に見当がつくあたり、「日本人」を自覚します。
あたりまえのマイムが通用する場が、所属する共同体のスフィアだな、と。
で、「七役早替り」が見どころなので、ストーリーを追求するのは野暮かもしれませんが、千葉家重宝の短刀「牛王義光」とその折紙をとり戻した久松は、亡き父・石津久之進の無念を晴らして御家再興と相成ったのでしょうか。それとも身重のお染とともに、隅田川に入水してしまったのでしょうか。
どちらにしても、お染とは添い遂げられそうにない。
もし、お染(亀治郎)と久松(亀治郎)が心中すれば、
久松(亀治郎)の姉・竹川(亀治郎)はがっくり、
お染(亀治郎)の母・貞昌(亀治郎)もがっくり、
久松(亀治郎)の許婚・お光(亀治郎)は物狂いのまま、
お染(亀治郎)の兄・弥忠太と恋仲の小糸(亀治郎)がどうなるのかはわからんが、
久松(亀治郎)とお染(亀治郎)を、最後の最後に大立ち回りで救ったお六(亀治郎)はどうなってしまうのか、
それらは2人とともにフェードアウトしてしまうのですが、要するに、亀治郎だらけ、という話なのでした。
それにしても、土手のお六が漢で惚れる。
亭主・鬼門の喜兵衛(市川染五郎)←――そもそも「牛王義光」をドロボーした元凶はこの人―――を斬った久松を助けてしまうのは、かつて仕えていた竹川から受けた恩ゆえ、らしいんですが、自分も駆け落ちで身をやつしてお染の気持ちがよくわかるのか、なんでそんなに男らしい。
惚れてしまうやろ、お六、という話でもありました。