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南北朝(日本)時代と漫画家・車田正美先生の作品を瞑想する部屋。

『オーディーン 光子帆船スターライト』

2011年06月19日 22時50分02秒 | 映画

スターライト号主要データ

■全長/352m
■全高/162m(マスト含む)船体のみ75m
■全幅/109m(ヤード含む)船体のみ35m
■船体重量/118.820t
■主動力/直線型H・C粒子加速材(全長145m) 磁気シールド270度反転型分子反応炉(直径30m)SL.02型ハイパーブースター
■補助動力/化学反応エンジン×2 重力磁場発生装置
■巡航速度/36万km/h
■最大速度/1/3c/h(3,600万km/h)(光速の1/3)
■武装/カスケード砲×8 電磁カタパルト×4 炭素レーザー砲×1(倉庫)
■搭載機/前格納庫 輸送艇×1 後格納庫 戦闘機×1 探査艇×2

『オーディーン 光子帆船スターライト』プログラムより転載

船乗りの辞書に「想定外」という言葉はない。なぜなら、航海(フロンティア)において想定外でないことなど、起こらないのだから。

*

1985年公開。21世紀にはアステロイドベルトまでレーザー(太陽光)・ネットワークが伸び、そのエネルギーを帆に受けた宇宙船による惑星間航路が運用されている世界です。

  • B.C1500年 エジプトのハトシェプスト女王 インド洋を発見
  •  800年 北欧バイキング 北氷洋を征服
  • 1492年 コロンブス アメリカ大陸を発見
  • 1520年 マジェラン ホーン岬を突破して太平洋を発見
  • 1805年 ネルソンのイギリス艦隊 ナポレオン艦隊を撃破
  • 1860年 勝海舟艦長の咸臨丸 日本人として初めて太平洋を横断
  • 2099年 スターライト号 スペースコロニー、シティ・オブ・アインシュタインを出港

デザインのモデルはこれじゃないかな。
スターライト号は国連宇宙開発機構(ISA)が20年の歳月をかけて生み出した重力制御システム、より速く、より遠くへ、夢をかなえるための核融合反応炉(※01)を備えた宇宙船です。核分裂反応炉じゃないですよ。すごいでしょ。
※01:エンジンルームの粒子加速器で星間物質を中性子に変換、高エネルギー粒子を後方に放出する。

この新しい船に乗り込む士官候補生達の、『GOTTA FIGHT』をBGMにした躍動感がいい。
その1人、石毛二郎(メイン・マストのワッチルームで操船担当)が、
「元気で帰っておいでよ」
と見送る祖母に心の中で、
「ばあちゃん、さよなら」
と告げる。木星以遠の航海から戻った時、高齢の彼女は生きているのか。わからない。これが今生の別れとは思わないが、けじめをつけて前を向く。はっとしましたね。

筑波あきらは、宇宙航行技術大学の卒業試験(最終選考)で「バカ教官」をぶん殴ってスターライト号の乗員からはずされた“落第生”ですが、その操縦術は非凡。かつてのクラスメイト達の信頼も篤い。彼が月軌道の宇宙軍司令部で最新鋭の高速戦闘機をかっぱらい、木星連絡船アルフォード号からのSOSを受信し、重力遮断航法のテストを兼ねて救助に向かうスターライト号にむりくり乗船したのが波乱の始まり。いや、軍法会議だろ、これ。
そんなやつを、「おもしろそう」というだけで鈴鹿武(船長)以下、教官たるオヤジ達が乗せてしまうのも太っ腹で、そう、スターライト号は戦艦ではない、

(鈴鹿)「昔も今も、テスト航海に必要なのはデータじゃなく度胸だよ」

だそうです。
重力遮断航行のGに耐えかねてげえげえ吐いてるクルーを尻目にあきらは操舵、テスト限界を超える加速度8Gでスターライト号を事故現場=スケアノス小惑星帯に到達させ、そのまま操縦士担当になってしまいます。帰還した後のことが心配ですが、そんなことはどうでもいいみたいです、この人達は。

アルフォード号はすでに大破、救助活動は脱出ポッドを1つ回収するに留まり、生存者である美少女、サラ・シアンベイカーは記憶を失っていました。彼女達を襲ったターミネーター防御ユニットの自爆に巻き込まれ、スターライト号は歪曲点を経て天王星あたりまでジャンプ。船体は損傷、7名が殉職。
天王星の衛星オベロン、氷の下に埋もれていた円盤型宇宙船から回収した水晶様の結晶棒には、ペンタ(※02)デジット方式のデータが刻まれていました。これをコンパイラにかけ、サラの解読によりそれは、

  • 20,000年前、アルゴ座カノープス星系にある惑星オーディーンからやって来た異星人の航海日誌
  • 北欧神話はオーディーン人と地球人のファースト・コンタクトの記憶

と判明。
※02:「5」。人間の手足が5指であることを考慮すると、ペンタデジット(penta-digit)はオーディーン人と地球人の相似を示唆しています。オーディーン人の基数は「5」なのかも。

(フロイ)「血圧その他は正常じゃが、ただひとつ、第5元素のオルゴン反応が出ておる。そのためにあの異常な行動を起こすんじゃろうなあ。この髪の毛からいって、きっと北欧系の血を持った娘だろうなあ」

倒れたサラを診察する船医殿がなにを云ってるのかさっぱりわかりませんが、どうやら彼女は触媒です。
地球外生命体とのコンタクト。未知の領域を目前にして、若いやつらはオーディーンへ行きたい、行きたい。
しかし、オヤジには責任があります。殉職者が出た以上、船と乗員を無事に帰還させなければならない。8時間後に地球に向けて出航、と船長命令が下るのですが・・・。

(鈴鹿)「諸君の賢明な判断を期待する」

この8時間、実は船長があきら達に与えたチャンスでした。

(あきら)「年寄りがダメなら、若い俺達がやればいいじゃないか」

彼らは(期待に応えて)反乱を起こし、オヤジどもを船長公室に放り込んで監禁。やったぞお!とか、もうむちゃくちゃ。
スターライト号は意気揚々と次の歪曲点へ向かい、サラは羅針盤のように地球人とオーディーン人の“セカンド・コンタクト”を導いてゆきます。
それが「女王の帰還」であることを、まだ誰も知らない。

*

これでほぼ前半。後半は「アースゴード」を名乗る謎の「人格」に死刑宣告を受け、有機体を無差別に攻撃する無数の戦闘ユニットと戦う人間の、知性と勇気が存分に発揮されます。
ファイターユニット(小型戦闘機)が襲ってきた!

(あきら)「頭は使いよう、レーザー通信機能の出力をマキシマムに上げてだ、ノッチをはずせば、手動だけど粒子レーザー砲に早変わりだ」

分散攻撃メカ・バトルユニットが襲ってきた!

(林)「竜王、(大型探査艇の)即席レーザービーム砲、OKだ!」

??

(鈴鹿)「ボースン。高エネルギー噴射で突き抜けよう」
(蔵本)「イエッサー。全ヤード角確認」

オヤジ復活。ところが、メインブリッジからは操帆不能。

(蔵本)「手を使ってやる。甲板員は上甲板に集合」

は? 手?

(鈴鹿)「電磁スクレーパーを過増幅(?)させて、敵を吹っ飛ばすことはできんか」

??????

これこそが『オーディーン』の醍醐味。そもそも武装していなかったスターライト号を知悉した船乗り達が創意工夫で状況に適応、突破していく姿がこれでもか、と描かれます。
このスピード感、爽快感はちょっと普通じゃない。
なんというか、クラスヘッドのマモル・ネルソン(航海士担当)も含めて、クールに熱いんです。エリートってこういうことなんですね。

(蔵本)「サラから聞いたが、おまえの親父も船乗りだったそうだな」
(あきら)「はい」
(蔵本)「いい親父だったじゃろう・・・おまえの気性を見ればわかる・・・」

重傷を負った蔵本正之介―――通称・ボースン(※03)―――があきらと酒を酌み交わしながらこと切れるシーンは泣けました。
※03:boatswain。甲板長の意。

(フロイ)「司厨長、ほんとにこんなゴミが役立つのかね」
(桜)「ええ、圧縮ガスを強化して打ち出せば、相対速度が速い相手を切り刻んだり、すり潰したりできるんですよ。名づけてマッシュミサイル!」

ゴミで敵機を撃墜したシーンは笑えました。超リサイクル。シェフの戦闘能力が高すぎる。

光速の1/3で航行するスターライト号の美しさ、
オヤジとの悲しい「世代交代」を乗り越えてゆく若者の力強さ、
ついに太陽系から120光年、空間要塞体・ベルゲルに生身の人間が挑む白兵戦の結末―――人間性と機械(効率)化、生命体と非生命体、爆発期にあったカノープスに故郷を焼き尽くされ、脱出したオーディーン人の衝撃的な運命など、見どころがあり、考えさせられる物語です。

日本は海に囲まれた地勢・・・とういうだけでは「海洋国家」を名乗れそうもない。

ところでこれ、レンタルDVDの在庫が見つからないのよ。良い映画だと思うけどなあ。バンダイチャンネルの配信、終わっちゃうよ。
せめてサウンドトラックだけでもCD化してほしい。本当にすばらしい。

  • 音楽:宮川泰/羽田健太郎、高崎晃(ラウドネス)、雨野正道/安西史孝(T・P・O)

最後は、ずっと忘れられなかったお気に入りの会話で〆。

(マモル)「あきら、おまえよくその戦闘機を宇宙軍から持ってきたな」
(あきら)「ああ。俺はレンコンが好物だからなあ」
(マモル)「え、レンコン? なんだそれ」
(あきら)「先の見通しがいいんだよ。ははは、さあみんな、行くぞ!」


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