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南北朝(日本)時代と漫画家・車田正美先生の作品を瞑想する部屋。

【感想】『柳生暗殺帖』第17話-平行線の正義-

2006年05月19日 19時09分40秒 | CMC 風魔の小次郎『柳生暗殺帖』

かぶっとる。
起稿した短編小説と主題がかぶっていて、やりやすいというか、やりにくいというか。
小次郎があまりにもかっちょええので、800円分の定額小為替を用意しました。

『柳生暗殺帖』第17話-平行線の正義-

少年漫画といっても、読者の体験や年齢によってさまざまな視点が生まれます。
どうも作者の「それを読んでほしい」という意図を感じるので、無謀にも真っ向から挑みます。

(小次郎)「こっちへ還ってねェんじゃねえかと思っていたよ」

・・・以降、雪野で決闘したがゆえに飛鳥武蔵の心を理解する小次郎が、思わず垂れたお説教。
言外に羯磨衆へ与する理由を問うた彼に対する武蔵の回答は、“無”。
“無”とはなにか。

《聖剣戦争》の終焉に立ち会った小次郎は、

「人も地も星も、やがて一切が“無”になる」(JC9巻)

という、いわば臨死体験をします。
武蔵も同じものを見て、「悟」った。
そうして選んだ正義が平行していたのは、“無”の解釈の違いによるものでしょう。
“無”を知り、ならばこの世に対してどう働きかけてゆくのか、つまり「限りある命の使い方」を自問し、出した答え(=正義)が2人にとっては平行線だった。今のところ、武蔵に歩み寄るつもりがない、という意味で。

おもしろいのは、2人とも「神アレルギー」なんだよね。
小次郎は、「在ったら在ったで、嫌いだね」というスタンス。
武蔵は「騙る」とまで云っているので、存在そのものを全否定。
・・・きっと、信じていたんだろうなあ、心のどこかで。悪魔に魂を売っても、妹はカミサマが救ってくれるって。ううう。

どうやら、武蔵に絵里奈ちゃんを転生させようという意思はないようです。
彼はいったい、なにをしたいのか?

(武蔵)「我が名もまた“無”なり。全てをこの闇に呑み込み、“無”に帰す者」

神に復讐するため、現行の「決まり事」(秩序)を破壊する。
「新しい世界」(秩序)を打ち立てようとする羯磨衆と、手段は一致した。手段だけは。
おそらく、武蔵には結末を見届けるつもりはない。
こうなるともう「世界と無理心中」という表現になってしまって、ほかに言葉を思いつきません。
愛する妹を黄泉還らせて、もう1度生を分かち合いたい、という望みの方がはるかにマシだった。なんてこった。
小次郎の、

「バカ野郎が・・・!!」

という科白(せりふ)と見せた表情が、彼の気持ちをすべて物語っていて、最高に良い。
武蔵が小次郎の前に現れたのは、「足どめ」というより「最後に残されたこの世への執着」を小次郎に供養してほしかったからだ、とすら思えてしまう。
「生霊」だったけれど。
そんなデリバリーサービス、困るがな。
邂逅の場に触媒体質の神子が居合わせたことが、いずれ彼に救いをもたらすことを望みたいです。
とりあえず、武蔵は『正法眼蔵』を読め。

明日は「伊達総司対吹雪戦」について触れます。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なぎらさま、こんばんは。 (セルコ)
2006-05-19 20:14:59
なぎらさま、こんばんは。
今日は書店ジプシーしてました。ううぅ。(ノДT)
19日が発売日だってのはウソなんじゃないか!?という思いが一瞬脳裏に浮かびましたが、なんとか出会えてよかった。

>「バカ野郎が・・・!!」
今回は、とにかくコレに尽きる…。
ここで、ちょっと泣きそうになってしもうたです。
またオメンを着け直した無名のコマと合わせて、MY台所に飾っておきたい気分。(アホ)

小次郎に思いのたけをぶつけられて、とりあえずは本人も本望だと思います。
当の小次郎には、とても迷惑な話でしょうけど。(笑)

…小次郎はいい男だなぁ。(しみじみ)

まだまだ語り足りないので、茶室などでお話できたら嬉しいです。ではでは!
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セルコ様 (なぎら)
2006-05-19 20:25:30
セルコ様

ご訪問ありがとうございます。無事に『RED』を入手できてなによりです。なぎらめは、買ってからすぐ百貨店内のベンチに座り込んで読みましたよ~。

>「バカ野郎が・・・!!」
「敵」という関係を超えた、武蔵に対する小次郎のなんというか、親愛を確認できる感慨ですね。やはり、小次郎にとって彼はとても大きな存在でした。たぶん、あの場で武蔵の素顔をまともに見たのは小次郎だけでしょう。云いたいことを云って、去っていった。これも「オモイハネ」でしょうか。
これからも2人の言動に注目していきましょう(^∇^)。
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