元亨4(1324)年。鎌倉。
足利高氏(真田広之)は20歳。有力御家人の子息の倣いで、鎌倉幕府9代将軍・守邦親王(吉川英資)に仕えています。守邦親王は持明院統-後深草天皇の孫ですが、実権は執権職に移って久しく、お飾りにすぎません。
朝礼後は格子番、宮将軍の御座所を整え、それから朝餉。
ここは万事が「しちめんどくさい」京風で、高氏の同僚、宍戸知家(六平直政)はうんざりしてガツガツ飯をかき込みながら、
(知家)「御辺はあれだな、少し変わっておるな。格子戸の上げ下げだの、蹴鞠だの、御辺ほど楽しげにやっとる者はついぞ見たことがないわ」
ここから高氏の変人ぶりが披露されます。昔、大納言・藤原重通(しげみち)という蹴鞠の名手が2,000日間リフティングを・・・と延々うんちくし、知家はけっ!という感じでまともに聞いちゃいませんが、
(高氏)「(鞠の精霊が)御鞠を好ませ給う故は、国栄え、皆福あり、命長く、病なく、来世まで良いことがある、と」
さすがに来世のくだりには、え、マジ?と反応しました。
(高氏)「鞠を蹴る時、人は無心になるというのです。鞠のことだけを考えておればよい。それが心を澄ますことになり、煩悩を清め去ると。そうすれば、人は美しゅうなると」
高氏は飾太刀を奉げたり、手刀をぴしっとかざしてお手回りの品が畳の縁(へり)と平行かどうかチェックするなど、とにかく鷹揚で集中力がすごい。
なにごとにも意味はある、行為に価値を見出すのは主体である自分、それは無心になることで達する境地なのだ・・・というようなことを、たぶん彼は本気で信じていて、それは育ちの良さと母親の薫陶に起因すると思われます。公家の血が入ってますからね。
8年前、又太郎は「水無月祓」(※01)をネタに、足利家に祓うべき罪、穢れはあるんですか、と清子に問いをぶつけています。小太郎に突きつけられた、平氏の犬、が効いている。
その彼を、俺は犬以下かよ!という災難が襲いました。
※01:夏越祓、名越祓とも。「水無月祓へしに、河原にまかり出でて、月の明かきを見て、“賀茂河の、水底澄みて照る月を、行きて見むとや、夏祓へ”」(『後撰和歌集』)。
高時は「犬合わせ」(闘犬)にハマっていて、犬の勝ち負けで守邦親王とギャンブル中。ギャラリーも盛り上がって、知家なんかはしゃぎまくっているのに、高氏がつまらなさそうにあくびをし、瓶子から酒を注ぎ足して飲んでいるのを高時が見てしまいました。
(高時)「あれは誰ぞ」
(執事)「足利讃岐守殿のご嫡男」
(高時)「雷帝を引かせ」
(執事)「そ、それは」
(高時)「引かせ」
この「雷帝」がとんでもない猛犬で、犬役人(黒木佐甫良)はとっとと逃げ、綱を渡された高氏はむしろ雷帝に引っ張られて、どわあああ、と入場。なんとか将軍さまと執権さまに礼をすると、高時はまず顔をぐるりと、次に扇を回して、場内を一周せよ、と命じました。
これが全然ムリ。高氏をバカにして動かない、引けば咬む、唸る、襲う。
守邦親王は唯一笑わなくてもすむ立場なので笑いませんが、それ以外は女房連中も、同僚も、柵の外の野次馬までパッパラ殿さまに合わせて彼を笑い者に。血まみれ、泥だらけ、柵に登り、烏帽子は脱げる。高氏オンステージ。
これだけ恥をかかされても、高氏は凹たれない。どう凹たれないかというと、逃げないんです、現実から。ようやく犬が引き剥がされ、よれよれのぼろぼろ、烏帽子を被り、ふらふらしながら一礼して退場する時に視線を感じ・・・
小太郎がいた。24歳になった新田義貞(萩原健一)がじっと高氏を見つめていました。
おまえなんか俺(北条)の犬以下だ、という目に遭わされて帰宅した高氏を、そそっかしい直義(高嶋政伸)が直撃。
はあ? 北条方の姫を俺の嫁にだと?
最悪のタイミングでバラされ、右馬介は渋い表情。縁談のお使いは金沢貞顕の子、貞将(さだゆき)。高氏の従兄です。
お父さん、お母さん、僕はそのホージョーのボスにやられて血だらけなんですよ(これは云ってませんが)、ホージョーなんか大嫌いです、鎌倉にも居たくありません、おこしなんかにごまかされませんよ・・・このおこしは「京の上杉の里」から送られたもので、岩おこし系の味なんでしょうか。
意外にあっさり、では、この話はなかったことに、と清子に云われて高氏は拍子抜け。
しかし、この時点で彼はすでに清子の掌(てのひら)で踊らされています。恐ろしい。借りていた『古今和歌集 六帖』のコピーを赤橋(北条)守時さまに返してきて、と頼まれてしまいました。
はあ?? 北条???
すっ跳び退く高氏。笑えます。しかも、長いこと借りてごめんなさい、というメッセージまで託されては相手に会わざるを得ない。おこしを意味もなく上げ下げした挙句・・・NOと云えない高氏。清子、息子のリアクションにもまったく動じません。公家の出ながら肝の据わったママンです。
なんでこんなことに。早く用事をすませたい高氏の待つ部屋に、ようやく女人が現れました。
(登子)「赤橋でござりまする」
出たあ。赤橋登子(沢口靖子)の登場です。いい加減に頭を下げた高氏が彼女を見たとたん、本日3度目の、
はあ???
あまりの美しさに北条アレルギーも引っ込み、芽生えたなにかが源氏のプライドを凌駕しました。未来のファースト・レディ、登子の気持ちは、足利家中の反応は・・・気になるところですが、続きは第2回へ。
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いやほんと、第1回はすごい。このクオリティがどこまで続くのか憶えていませんが、初めて観るのと同じくらいおもしろいです。最終回までレビューできるのか、いつ終わるのか、心配になってきました。まったり、やっていきます。
そうそう、↑の「特別再現・鎌倉時代食」、参加したわけではありませんが、
鮭に強めの塩をあてて干し、そいで食べる楚割(すやわり)という料理をはじめ、酒、菓子にいたるまで、通常、個人では味わえない鎌倉武士の膳を再現します。坂東武者の豪気を伝える山海の幸の数々。
という企画で、当日の献立は、
- 酒 にごり酒 茹 物 里芋 他 三種
- 楚 割 鮭 他 蒸し物 山鳥 他
- 高盛飯
- 羹(あつ)物 清汁 油 物 野のもの
- 鱠(なます) 鯛昆布〆 他
海の幸盛合せ 菓 子 金柑 他
だったようです。では、また。