英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

マン島って知ってました?

2008-01-10 | イギリス
マシュー・ニール
「英国紳士、エデンへ行く」


この歳になって初めて知ることが沢山あります。この本を読むまでは、「マン島」に関してオートバイレースで有名だと言う以外何の関心も持たなかったでしょうね。イギリス本土とアイルランドの間、アイリッシュ海に浮かぶ小さな島「マン島」は、イギリス王室の属国 (Crown dependency)として独自の議会、貨幣を持つ自治領で、イギリス連邦には加盟しているがイギリス連合王国(UK)には属していません。ちなみに外交と軍事はイギリスに委託だそうです。

時はヴィクトリア朝中期。この歴史的にも文化的にもイングランドと一線を画すマン島の1人の男が、一攫千金を夢見て密輸船を建造し商売に出るのですが、どうもツキに見放されたらしく上手く荷が捌けない・・・。で、下した選択が、傭船としてのカモフラージュ。船を借り上げた男達ってのが、タスマニアにエデンの園があると信じて疑わない牧師と、その随員として乗り込む人種優劣主義者の医者、そして何をするにもどこか他人事な植物学者の3人。まとまりのない一団が一路タスマニアに向けての航海を続ける訳ですが・・・。
一方、タスマニアは19世紀初期よりイギリス人による入植が始まり(初めは流刑植民地として)、入植者による島に住むアボリジニとの争いで彼らを絶滅寸前までに追い込んでいた。
タスマニアで3人の探検隊が見たものは・・・。次第に深まっていく牧師と医者の意見の相違は最後には狂気の事態を呼び起こすことに。
マン島VSイングランド、イングランドVSタスマニア、入植者VSアボリジニ、純血VS混血、船長VS船員、科学VS信仰、牧師VS医者等々、多角的かつ様々な対立軸で描かれる物語は全編を通してコミカルではあるが、時に残酷にシリアスに展開していく。
個人的にはマン島=タスマニア?に感じたりも出来たりして・・・。
原題は「ENGLISH PASSENGERS」。読み出しから、読了まで絶えず一定の満足感を切らさない技巧はさすがです。このプラチナ・ファンタジイシリーズ、今後も期待できるぞ!


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