Doll of Deserting

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氷上の蒼。:序章(ギンイヅ。8000HIT記念御礼連載)

2005-08-21 12:38:59 | 過去作品連載(捏造設定)
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氷上の蒼。
序章
 なだらかに形成を保っていたものが、突如として歪曲していく。イヅルはこれまで幸せというものが手元にありすぎて、それが幸せというものだということに気付けなかった。これは正しくそれについての罰なのだと、強く自分に言い聞かせる。きっと唇を食い縛ると、端から僅かに血が滲んだ。
 ―…人は等しく、これは確かに陰惨である、と呟いた。イヅルもその言葉に疑問などは抱かなかった。これだけ酷く斬り付けられていれば、誰でもそう思うのは当然だ。現場は、血にまみれていた。しかし、確かに父は間違いなく刀傷の跡があるのに対し、母にはそれが見受けられなかった。それでも母は死んでいる。息づく音など微塵も聞こえない。イヅルはそのことに、改めて絶望することになった。それならばつまり、父は死神に殺されたということだ。仲間であったはずの、死神に。
 大体、なぜここに自分は連れて来られたのだろうと思う。父と母が死んでいる現場など、普通ならば子に見せないものではないのだろうか。それとも、自分は吉良家の時期当主として、これを見ても動じない強い精神でなければならないと、遠まわしに言わしめられているのだろうか。
「…全く、景清もシヅカも、イヅルを一人残して逝きおって…。」
 伯父の声が聞こえたが、それにはイヅルへの同情など少しも含まれてはいない。声色からして、おそらくまさか自分が面倒を見るのかとうんざりしているのだろうと思われた。イヅルはどうすることも出来なかったが、家さえあれば一人で生活したいと思っている。しかし、親類縁者がそれを許してはくれないだろうということは分かっていた。自分は、吉良家の当主になるべき人間なのだから。
 下級で平民と同じ暮らしを強いられてはいても、貴族となればその自尊心は限りなく誇り高い。イヅルはむしろそれが忌々しかったが、父母は尊敬出来る人々だったために誇りというものは気高きものなのだと信じて生きてきた。しかしこの伯父を目の前にして、早速それが崩されようとしているのだ。
「父上、母上…。」
 悔しさに、声が震えた。しかし涙だけは流さない。もし流すとすれば、それは父母に与えられた命を失いそうになった時だけだ、と心に決めた。誇りを穢されるような死に様を強いられた時だけだ、と。
 目の前の両親はもう何も発することはない。父の背中に染め抜かれた【三】という文字が、母の腕に枷のようにはめられた【三】という文字が、イヅルの目に激しく焼きつく。矢車菊の紋章が、更に自分の脳を刺激した。
「…僕は、必ず再びここへ来ます。」
 そして、父と母が手にしていた【三】というものを、今度は自分が手にしよう。自分がその代を継ごう。そう決意を固めた。両親は、強い人達だった。母は異人との間の子だったために大変な境遇にあったが、イヅルは母から受け継いだ金糸と碧眼を宝のように思っていた。彼女は、酷く美しく、凛とした雰囲気を持った人だった。父にはよく剣技の相手をしてもらったが、互角に戦える者はそういないのではないかと思われた。そんな彼らを親に持ったからこそ、自分は誰よりも強くなりたい。そう思った。
(寒々しい…。)
 両親の死に様を思い出すと、殺した相手は一つしかない。そして 父を殺す必要があった者など、他に誰がいようか。
 空が晴れ晴れとしているのが、まだ明るい世界に自分を置こうとしているようでやけに腹立たしかった。


 とんでもない捏造連載序章です。(汗)うわーこれ大丈夫なのかなー。色々と。(笑)これから更にとんでもなくなります。ていうか8000HIT記念こんなんでいいんでしょうか。(泣)私が何となく見た夢から遂に連載にまで出世してしまい…。(笑)
 ええと何か恐ろしく妄想激しい連載ですが、宜しければお付き合い頂けると幸いですv

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