大阪発達支援センターぽぽろブログ ぽぽろ番

ぽぽろはNPO大阪障害者センターの子育て・教育支援部門です。
大阪市鶴見区今津北にあります。

何を求めて?!

2012年05月04日 | 児童デイサービス
 「ぽぽろ番」は連休の3日、応援で鶴見区放出の学童に入りました。

 このところ思春期真っ只中で何か体の芯から突き上げてくるような感情の高まり・不安定さを感じるAくん。モヤモヤしたやり場のない情動が感情や行動となって表れているように感じます。(この背景や行動の裏側にある発達へのねがいについてスタッフ間でも話し合ってきました)

 学校でも家庭でもその感情を周りにぶつけてきます。学校の様子を見に行った時は大荒れの日でした。ぽぽろでも時々ですが、突然に大人につっかかってきて髪の毛を引っ張ることがあります。地域の相談機関から施設入所の話しも出ています。
 当然ですが、家族としては入所させることは子どもがかわいそうという思いや親として後ろめたさなどを感じてしまいます。一方でもうこれ以上精神的にも体力的にも「向き合えない」という限界状態になられているのも事実。相談を受けたときに、私は親子で少し距離をとって生活する中で関係や行動も改善されるかもしれないのでそれも選択肢の一つだと思うと伝えました。約半年前の相談でも、もっと「ロングショート」(ショートステイを長期にとる)やデイサービスなども増やしたらどうでしょうかと話し合いました。

 この日、私は身をもってやり場のないAくんのイライラ感やエネルギーの大きさ、ご家族の大変さを感じました。また、いつも彼に寄り添い悩みながら、決して消極的にならず前向きに支援のあり方を考えるスタッフや若いアルバイト諸君に敬意を払う一日ともなりました。

 さて、その日、学童が始まる10時には男は私一人しかいませんでした。スタッフのHさんからはAくんの担当は体力的に?「男性スタッフしか務まらない」と言われていましたから、彼の「散歩」に付き合うのは私だと腹を固めてペットボトルのお茶を2本買いに行きました。結果、文字通りぶっ通しで約5時間の「散歩」に付き合うことになりました。1時間前に迎えに来たバイトスタッフのKさんの万歩計が10キロを超えていましたから、A君と私は多分30キロ前後は歩いたことになります。終わってみると右足の人差し指の付け根には大きな豆ができていました。

 写真はこの一枚しかありませんが、これがすべてを物語っているように思います。
 「道なき道を行く」A君の後姿です。


 正直言ってこの日の彼の行動は理解しがたいところがあります。
 目的(地)があるようでないような…。
 まるで今日のテレビでやっていた『K≠Q0怪人20面相 伝』のように、地図に引いた直線上を行こうとするかのような行動でした。「行こうとするような」と書いたのは彼の場合には壁や木などの障害物でふさがっていたり狭すぎて身体をすり抜けることができなかったりすると、勿論飛び越えることができないので諦めるしかありません。腕を前に突き出して「ガァー」「アー」と言いながらひたすら前方に向かって歩こうとしました。

 そのときの行動をどのように理解すればよいのでしょうか?

 ①とにかく直線を行こうとする。少しでも隙間があれば突き当りまで入っていく。隙間があれば建物を一周する。前方を覗いて狭すぎたり行き止まりで無理だったりが分かると諦めるか、わざわざ10mから20メートル離れた壁や家の塀・門まで走って行きタッチして引き返してくる。
 いわゆる「一歳半の壁」といわれるが、彼の場合、それ以前の直線的・一方向的な「○○だ、○○だ」という認識の世界ではなく、それを乗り越えた「○○ではない、□□だ」という認識の世界は獲得しているはずです。だから、先を見通して無理と分かればユーターンするし、ちゃんと帰って来れます。にもかかわらず、少しでも可能性があると見るや下水溝であろうが藪の中であろうが突き進もうとするのは何故だろう?また、突き当りと分かっていても引き返すために?わざわざタッチをしにまでいくのは何故だろう?
 そこにものすごい「意志の強さ」「頑固さ」を感じます。
 横についている私を強く意識しているからなのか?そういえば、2~3回私が入れないような狭い道に彼は入って、狭い隙間を抜けたとたんに私をまくかのように走り出したこともあった。一度だけ、イライラして叫びながら私に突っかかってきたことがあったが、あれも私がうっとうしかったからなのか?(目当ての所?道?が分からなくてイライラしたのか?とその時は思ったが…)
 私が姿を消したら一体彼はどうしていただろうか?「ちょっと休憩しよう」と言って立ち止まったら、後方の私を見て怒りながら前に腕を突き出して前進していたし、一方で「ちょっと待って!」と靴を脱いで足をもんでいる少しの間は立ち止まって待ってくれていた。気にしながら一人で行っちゃったのだろうか?


 ②気がつくと同じ地域、同じ道をグルグル回っている。特に(この日は?)細い道や家と家の間にある抜け道にこだわっているように思いました。
 土地勘があったからなのか?目的地があったからなのか?
 一度彼の校区だということは分かっていたので「Aくんのお家に行ってみようか?お兄ちゃんがいるかな?」と言った後にスピードがぐんぐん高まり、走り出しそうなほどだったが結局家にはたどり着かなかった。(道順くらいは知っていると思うので、結局帰りたくなかったのか?)
 それとも、彼の校区に着いた初めの頃に三叉路だが突き当たりの家と家の間の狭い境界に入り込んだときに、玄関の陶器の傘タテをひっくり返して壊してしまい、引き返してきた彼を引き止めながらお家の方に謝ったことがあった。(見失いそうになったのでAくんの名前を呼びながら平身低頭でいきさつを伝え、名刺を渡そうと財布の中を探してていると「もう気にしなくていいですよ。それより早く行ってあげて下さい。いいですいいです!」と何度も優しく言っていただいてホッとしたが…。)彼は気にしていたからだろうが、その直後には私の左腕をグイと抱えて歩き出した。その「失敗」を彼は気にして、もう一度やり直しをしようとして「同じ地域」をグルグルグルグル回っていたのか?元々私は記憶力が悪いのだが、小さい路地だったので二度とたどり着くことはなかった。


 ③「同じ地域」というのは彼の通う小学校の周辺でしたが、「学校に行こうか?!」と誘っても学校から一筋離れた道を歩き、決して学校を囲む道や門には近寄ろうとはしなかった。
 今日はいつもの土曜日ではなく祝日とはいえ木曜日だったので学校周辺まで行ったのか?少し遠くに見えたが、門が閉まっていたから近寄らなかったのか、学校が嫌で近寄ろうとしなかったのか?
 そもそも何故学校周辺に行くことになったのか?ぽぽろからは歩いて20分程度だから近いといえば近いのだが、線路に沿って人一人しか通れないような道を歩いていて、丁度踏み切りのところにさしかかったときに電車が来て、踏切カンカンが鳴り止んでバーが「はいどうぞ」というようにあがったので、たまたま踏み切りを乗り越えて見覚えのある地域に踏み込んだ?というような感じだったが。


 ④いつの間にか、ぽぽろへの帰り道であるJR学研都市線の踏切手前まで引き返せているが、必ず手前でユーターンして超えられない。自転車の迎えが来た3回目も渡らなかった。
 そういえば踏み切を渡るときに走っていたのは浮「からか。それで、ひょっとして浮ュて渡れなかったのか?
 もしくはぽぽろには帰りたくなかったからなのか。引っ越してからのぽぽろ利用はこの日が4回目。彼はこの日の朝に(人が少なかったからなのか?)やっと5分ほど部屋に入れたのです。環境(場所、狭い空間、声が響く環境など)の変化が受け入れられず、余計に来てすぐの「散歩」になるのです。


 ⑤目的が分からないから、他を寄せつけないような意思を感じるからといって後方を着いていくだけでいいのだろうか?バイトスタッフ諸君も考えたように楽しい散歩を心がけようとした。後方にいるときには「コチョコチョマンが追いつくぞ~」などと言うと後ろを気にし、声を出して笑いながら歩いた。手を出すと握ったり、腕を組んだりするので、ほとんどそうしながら歩いた。彼の方から腕を取りに来たり、自分から手を離して歩いたりした。腕を振り歌いながら歩くと嬉しそうだった。お弁当を諦めてお茶だけで歩き続けた「散歩」だったが、それなりに楽しそうだったからよしとしよう…、でいいのだろうか?
 とにかく。お弁当までに帰るとか、おやつにあわせて帰るとかも目標になっているようだ。勿論、お弁当やおやつの話もして誘ったのだが結局は怒らせるだけだったので、とことん「散歩」に付き合うことにした。とことん歩いて「散歩」に満足して、或いは歩きつかれてユーターンするかなと期待もしたが気持ちは切り替わらなかった。とうとう帰らず?帰れず?ご両親のお迎えの車にも乗車を拒否したので、半強制的に乗せることで「散歩」に終止符が打たれた。座った彼は暴れもせずに落ち着いて、手差しの方向に「進め!」と催促しているようすが外から見られた。半強制的だったが彼はそれで救われたのかもしれない。
 そこで、またしても大阪障害児・者を守る会会長のHさんの話を思い出した。息子のTちゃんは下校後スクールバスから降りるや、3ヶ月も梅田の三番街に毎日通い続けて場所を切り替えたとか、同じく下校後に神戸の幸せの村に電車・バスで通い続けたとか。徹底的に息子さんの気持ちや意思を尊重して付き合って、そのうちに目的地も近場になり回数も週に一回とか月に1~回とかに減ってきたそうだ。
 そんな風に付き合ってみたかったですが、時間切れとなりました。
 

 結局、私の中ではすっきりしませんでしたが、また付き添うことになったらきっと同じようにするでしょう。わずか、週に一度の学童、されど月にすると4回の土曜日の長時間学童。学童というよりも「ガイヘル」のような感じですが、9月にはまた元の所に引越しです。あと4ヶ月の辛抱となるのか、また仲間の中で遊ぶAくんの姿が見られるのか、一喜一憂しないで少し長期的に支援していく必要があるようです。
 みなさんはどう思われましたか?
 

 それにしても珍道中でもありました。文字通り「道なき道」ですから色んなところを通ります。民家同士の隙間を通るときは冷や冷やしました。畑の中、工場の周囲、藪の中…。それで助かったのは、彼がお尻を抑えて連れて行けーとばかりにギャーギャー叫びだしたときです。おしっこやったらと道端で用を足さそうとしましたが、ズボンを脱いで座ろうとしたので、あわてて「場所」を探しました。お尻を押さえながらギャーギャー言う彼を連れて探すこと2~3分、一度迷い込んだことのある運送会社の駐車場に駆け込むとたまたまトイレを発見。でっかいウンチが出てよかった!ほんまに良かった救われたぁ~!まだまだ楽しいことが色々ありましたが…、これぐらいにしておきます。


 みなさん、ゴールデンウイークはいかがお過ごしでしょうか?
 世間ではGWの初日というのは4月28日(土)を指して言うようですね。
 ぽぽスクは暦どおりの4月末の3連休に5月初旬の4連休です。しかし、スタッフは休むのが悪いと思っているのでしょうか?各連休ともに1日ずつ出勤して仕事をしているようです。放出と大東は学童を始めてから日月以外の連休は毎年ありません。私はぽぽスク勤務が基本の今年は本日(4日)は休みです。3日の出勤時に「明日は久しぶりに比良山にでも登ろうかな?」とつぶやいたのですが、もう十分体力づくりになりました。
 登山用の底の分厚いシューズは持っているのですが、平地を歩くシューズがないために先日のぽぽスクのお花見(つつじ)も今回の「散歩」もカジュアルなシューズでした。豆ができるはずです。今日、少し丈夫なハイキング用のトレッキングシューズを買いました。
 歩くのは実に楽しい!