ミランダ・ジュライ「あなたを選んでくれるもの」

               


 アメリカの映画監督、女優であり作家のミランダ・ジュライの新作です。短編集「いちばんここに似合う人」を読んだのが2011年10月でしたが、それ以来の2作目のようです。


 寡作の理由は本書に明らかで、映画の準備も芳しくない、書き物の方もなかなか筆が進まない、書いても書いても思うとおりにいかなくて書き直して、塞ぎ込む。
 そんな中、毎週家に届く「ペニーセイバー」、いろんな人からの「これを売ります」広告が並んでいる小冊子です。ここに広告を出している人に会って、どうしてそれを売りに出したのか、どういう生活を送っているのかなどを訊きたいと考えたことから生まれた一冊です。


 片っ端から電話をかけて、取材をさせてもらえないか、写真を撮らせてもらえないかと依頼。それで会ったロサンジェルスに住む10人(+家族)の写真付きドキュメンタリーです。


 実際に会ったのはもっと多くて、その中から選んだのでしょうが、変人とはいいませんがちょっとクセのある人物ばかりです。会話の取っ掛かりは売り物なのですが、風変わりな人物像、その人生についての話しがメインになります。


 共通しているのは、パソコンをほとんど使っていない、少し時代遅れ(中高年者が多いから当然ですが)のアナログな生活を送っていること。そして、著者が質問する「これまでの人生でどの時が一番幸せでしたか」に対する回答は様々ですが、その時に比べると今は寂しい、人との接触が減った毎日を送っている。


 人生への諦めがあるのか、もともと開けっぴろげなのか、他人には言えないようなことも口にする人達。ミランダ・ジュライは、普通なら遠慮するようなエロ、グロも含めて心の内にある真実をオープンにする人への共感が強いのだと思います。
 先頭を切ってまず自ら、冒頭1ページ目に「何もかもが元のままだった。前の彼氏の3Lサイズのコンドームは洗面所の引き出しにまだ入ったままになっていた。その人とするときは、いつも痛かった。」などと書いています。
 いろんな人物が登場しますが、後半に登場する変人度の高いロン、ドミンゴ、ジョーへの共感が強く、興味深い(愛すべき)人物として描かれます。


 10人への取材を通して、自分の仕事を見つめ直したり、考えを改めたり、多くの影響を受ける出会いとなるのですが、最後は意外な展開をみせてこの取材は終わります。


 写真も多くて読み易く(著者だけでなく我々読者も他人様の家の中、思い出の品々は興味深い)、230ページありますが遅読の私でも3時間程度で読み終えました。
 軽く読めるのですが、生の人間が持つ摩訶不思議な存在感がユニークかつリアルに描かれているので、これは何なんだろうかというザワザワとした違和感が胸に残ります。


 最後の最後におかれたジョーによる自作のエロい五行詩を集めたノート(愛する奥様に贈り続けた)の写真。かわいいぬいぐるみのカットを横に沢山並べて、本当にこれは何なんでしょうか。
 これとドミンゴの部屋の壁に貼った空想の中のかわいい奥さんとベイビーの写真の数々。自分には絶対にできないこの露出。一体何なんだろうか。この2枚を見るだけでもこの一冊を手に取る価値はあると思います。





コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「CoCo壱番屋」(元住吉)

          


 久しぶりのココイチ。定番のクリームコロッケを封印して、期間限定の「キャベツメンチカツカレー」、2辛でルー追加。


 うまい。あまりメンチカツという食べ物は好きではないのですが、想像どおりキャベツの食感がいいです。クリームコロッケ、パリパリチキンなどお気に入りに引けを取らない品質。大満足の一皿となりました。



 隣り駅までの5~10分程度の自転車。近いといえば近いけど、やっぱり心理的に遠いです。日吉駅周辺へのココイチ進出を心からお願いしたいです。閉店となった綱島店は今月再オープンするようです。うらやましい。




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ウルフ「ダロウェイ夫人」(土屋政雄訳)

           


 今年の5月か6月に読書の媒体をこれまでの印刷物から基本、アマゾンのキンドルに代えて、もう長くなったのですが、まだ電子書籍化が進んでいない作者、出版社もあり、最近は揺り戻しで本とキンドルを併用しています。


 大好きな土屋政雄訳をまとめ買いして未読だった数冊があり、ヘミングウェイ「日はまた昇る」、ジェイムズ「ねじの回転」、モーム「月と六ペンス」と読んで、そしてキンドルに戻って、バージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」です。


 名作の誉れ高い作品で、かなり以前に手に取ったのですが、全く気分が合わず早々に止めたのを覚えています。今回は気分は小説モードだったので自然に入れました。


 何という自由で生き生きとした精神。これは90年前の1925年に発表された小説です。6月のロンドンのある1日、クラリッサ・ダロウェイ夫人を中心とする多くの人物の意識の移ろいを丁寧に紡いだ作品。爽やかでひたすら美しいのですが登場人物の多くは50代です。
 街の美しさ、自然の美しさ、恋の記憶、生きることの虚無感、劣等感からくる嫉妬、他人の老いを認識している自分の老いなどなど、どれも表面上はロンドンの中上流階級の生活の調和の中に納まっていますが、意識はどこまでも飛躍します。
 天真爛漫なかわいらしさから低俗な愚痴まで、人間の思い、しぐさ、行いが神々しいように表現されます。この芸術作品を何と評価していいのか、単純な言葉では収まらない多重性、魅力があります。


 土屋政雄訳を知ったのは、マイケル・オンダーチェの「イギリス人の患者」(映画「イングリッシュ・ペイシェント」の原作)ですが、全編、詩人が書いた小説を見事に翻訳しきった土屋訳の見事さ、芳醇さの再現です。素晴らしい翻訳です。


 私も長らく外国小説の気分ではなく、たまたまこの時期に巡り合いましたが、今の気分、感想だと歴代10冊に入る大傑作の印象です。読み手を選ぶと思いますが、個人的には、あやうく読まずに死ぬところだった危ない危ない、です。



 なお、本ブログ(記事)をアップするにあたり、いつもどおりアマゾンなりどこかの表紙映像を借用しようと思ったのですが、本で買った訳でもないしなあと考え、キンドルの画面を自分で撮影したものをアップしました。




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「キルフェボン」(銀座)

           


 キルフェボンのハニーシードレスのタルト。店前の写真で見て、店内で実物を見て、宝石のようなブドウ粒、こんな綺麗なスイーツ見たことないと思いました。この写真のピースだと少し印象は違いますが芸術品です。ホール7千円を買う勇気がないので、カットで週末の贅沢です。キルフェボンのタルトは本当にどれも美しい。


 味はおいしいマスカットとクリームと生地で変わらないといえば変わらないのですが見た目も大事です。




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「サルヴァトーレ・クオモ」(東銀座)

           


 我が家のデリバリーピザは、サルヴァトーレ・クオモ(綱島店)と決まっていて、たまに他のチラシを試しても失望するばかりなので最近は固定です。何といっても自然で本格的なピザがうまい、しかも他ブランドと比べて値段も高くない、これに尽きます。


 先日、ぶらり歩いていた時に見つけた新富町駅の地下鉄入口近くのマンション1階に入っている東銀座店です。デリバリーでも店舗で食べさせる店があることは知っていましたが、ここは配達用のバイクも沢山並んでいますが、店の構えはオープンな普通の店です。一人で食べられるカウンターがあることも確認しました(二人用のテーブル席がそこそこあっても混雑する昼は心理的に避けてしまいます)。


 ランチのピッツアセットです。5~6種類からピッツアを選べますが、まずは基本のマルゲリータにしました。家で頼むときも、だいたい、マルゲリータ(かマリナーラ)、4種のチーズ(子供たちが大好きで絶対)、ドック(かツナとコーン)の3種なので食べ慣れた味です。初めて作りたてをいただくことにちょっと興味がありましたが、もとがデリバリーでも十分に出来立て感は強いので、大きくは変わらないです。それでもトマトのフレッシュ感が際立ち、これはいいなと思いました。


 目の前で生地を練って、具材を入れて、メラメラ炎の上がる窯で焼き上げるので、実に美味そうな雰囲気もあります。ピッツア職人の手際が良く、ピッツアは本来、3~5分程度でパッと作ってさっと出す料理なんだということがよく分かりました。


 サラダと小さいカップのスープと小さいデザートと飲み物(訊かれたので食事の前にと注文)が付くのですが、混雑していたようでサラダ以外はピザを食べ終わった後に出ました。値段は1280円なのですが、1000円(パスタセットの値段)ですと言われたのは提供が遅かったからなのかどうかは分かりません。




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
   次ページ »