川上未映子「ぜんぶの後に残るもの」

              

 読売新聞日曜版読書欄に「こんどの震災と原発事故をめぐる考察のうちで、もっとも心にすっとしみこんだのは、川上未映子さんの週刊誌エッセイでした。五月までの分が『ぜんぶの後に残るもの』(新潮社)に入っています。言葉の軽快なリズムの奥に、世界を冷静に見すえる線が一筋とおっている本。」とありました。

 私も同じ印象を持っていて、震災後、日経新聞の夕刊に川上未映子のエッセイが何回か掲載されたのですが、その震災に関する文章に非常に共感を覚えたのを覚えています。他の記事、作家とは一味違う偽りのない感情、漠然とした不安を感じる文章だった。小説を読んだことはないのですが、この人はいいなあと思いました。

 震災に関するエッセイが巻頭に7~8編、多数はそれ以外の通常のエッセイ集です。作家の周りで起こったこと、ネットで知ったことなどについての四方山話しなので詳細は省略しますが、世の中の大きな熱に対してちょっと斜に構えてひんやりとした視線を投げかけるスタンスが気持ちいい。この手のエッセイは一冊に纏められると少々ツーマッチ、飽きてしまうのですが最後まで楽しく読み通せました。

 ところで、このエッセイの大多数が載ったのは週刊新潮の「オモシロマンティック・ボム!」という連載です。これまでたまに週刊新潮は買っていたのですがその存在すら知りませんでした。おそらくエッセイなんて内容ないし読むだけ時間の無駄という固定観念があったからだと思います。
 そんな中、このエッセイは面白い、毎号でも読みたいと楽しみにしているのが(といってもたまにしか買いませんが・・・)、柳沢みきおの「なんだかなァ人生」です。ムチムチ、ムンムンのエロい漫画を描いている人ですが、意外や意外で本音さく裂の文章が面白い。こちらも早い単行本化を望みます。


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