ぽんちゃんの買ってし魔王な日々

ことあるごとに「買ってし魔王」が降臨する、ぽんちゃん(観音旭光の両刀使い)の物欲の日々を、周囲にばれない程度に語ります。

書籍の紹介

2010-05-30 21:23:18 | 日記

ここの所、「これは」と思って手に入れた本が次の本。

実は、東京の自宅に、講談社文庫版と、それの再版の光人社NF文庫版があるのですが、しばらく在庫切れとなっていたら光人社NF文庫で新装版が出たようで、すぐには蔵書を読めないこともあって、つい手に入れてしまった本。

海軍技術研究所と銘打っていますが、中身は日本海軍におけるレーダー開発の顛末と、その中心人物であった伊藤庸二技術大佐についての伝記となっています。伊藤庸二技術大佐は、一貫して海軍における電波工学の基礎研究に従事された方で、太平洋戦争前の平和時には当時発見直後で何も判っていなかった電離層観測を行い、現在、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が定期観測している方法とほぼ同じ、特定の周波数のパルス電磁波を直上へ向けて発射し、反射波の時間から電離層の高さを求める観測を行い、その結果を短波で世界に配信していたとのこと。この研究、軍内部では「役に立たない研究をして」と叩かれるものの、実際には、一種のレーダーである電離層観測装置を基としてレーダー装置を短期間で試作したり、長距離通信が安定した周波数を設定するのに電離層観測の研究成果が役に立ったりと、実は役に立った研究でした。

しかし、当時の官僚化した海軍の内部では、伊藤庸二技術大佐がレーダー開発を上申しても、用兵家が占める艦政本部上層部は聞く耳を持たず。個人的な知り合いであった兵科将校の草鹿龍之介少将、柳本柳作大佐がレーダー開発の必要性についてサポートしても、海軍上層部は中々開発を認めない上に、伊藤庸二技術大佐へは横紙破りと叱責する始末。そもそも、兵科将校と技術将校との間の確執や、技術将校間でも研究所の人間と工廠にいる人間との軋轢もあり、双方で足の引っ張り合いをしていると言う中で、開発部隊と製造現場と運用現場の意思疎通がうまくいかず、上層部も重量制限など無茶な条件を課してきてレーダー開発が混乱を来し、どんどん物資は窮乏して真空管から銅線に至るまで信頼性が低下していき、後は史実通りの末路に至ってしまうと。

そう言う意味で、技術マネージメントの失敗原因を把握するのに良い書籍と思います。ただ、戦後の後始末記も面白く、マイクロ波電話回線網の設置に海軍の電波技術が適用され、軍属として海軍技術研究所にいた高柳健次郎博士は部下の技術将校を連れて日本ビクターへ移って本来の仕事であるテレビジョン開発に邁進し、海軍技術将校として徴用された盛田昭夫と井深大との出会いと、それを取り巻く海軍技術将校出身のソニーの人材を簡単に紹介しています。そして、伊藤庸二技術大佐は、戦後、光電製作所を興し、漁船向けレーダーなどの開発を行う一方、防衛庁の防衛技術研究所(現在の技術研究本部・TRDI)が発足する際の初代所長に推されるも就任前に急逝された所で終わっています。

個人的にも、私の祖父が山中電機とか言う当時結構大きい会社(戦後、東芝へ吸収合併)の技術担当部長をしており、軍属として戦艦「長門」へレーダーを取り付けたり、レーダー取り付けで昭和20年8月6日に呉にいたとか、軍属の肩書きをうまく使って正式に所有許可を取った手作りの短波ラジオで軍用無線を傍受して空襲警報を事前に察知して近所の人に伝えて喜ばれたとか、幼い頃に聞かされていました。ちなみに、近所には三菱重工下丸子戦車工場(戦後、三菱自工トラック工場を経て21世紀になってマンション群に)や横河の航空機部品工場(戦後、精機光学が土地を買い取って現在はキヤノン下丸子本社)があり、重要軍事生産拠点として狙われていたようで、頻繁に空襲があって、うちの親父を背負った祖母がグラマンの機銃掃射に追いかけられつつ防空壕に飛び込んで助かったという話も良く聞かされました。それらが基となって親子三代の電子系へ進む事となったのですが、そんな電波野郎にとって、海軍レーダー開発を把握するのに最適な本でした。

海軍技術研究所―エレクトロニクス王国の先駆者たち (光人社NF文庫)
中川 靖造
光人社

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次はこの本。

「鉄道ファン」誌などでも、注意深く記事を読んでいけば動向は把握出来ると言えば出来るのですが、どの車両がそろそろ危ないかと言うのをリストアップした、鉄道版Red Data Bookとなります。井上@kojii.netさんの「配線略図で広がる鉄の世界」からのシリーズ物ですが、正式に廃止が発表する前に早めに押さえましょうと言う本で、ちょっとした鉄道写真撮影の解説も頭に載っています。

実は、「ponchan1791」名でJR九州の485系、415系、キハ67系の写真を提供していますので、どうぞ見て手に入れていただければと思います。数枚掲載されただけなので印税は入りませんし、話があっても色々面倒なのでお断りする所ですが、良く考えたらカメラマンとしての初商業誌デビュー(苦笑)ですのでそれだけで嬉しいです。

惜別乗車で広がる鉄の世界―絶滅危惧車両の事情がわかる本
井上 孝司
秀和システム

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