あまり政治マターのネタは書きたくないのですが、ここ最近の2件については言っておかねばならないかなと思って書き込みます。
まず、1件目はこの新聞記事。
--------------------------------------------------------------------------------
【毎日jp】事業仕分け:90事業に改善通告へ 「反映不十分」
政府の行政刷新会議は9日、過去の仕分け結果が反映されていない事業を対象に行う事業仕分け第3弾の「再仕分け」に関連し、各府省が11年度予算概算要求に計上した約90事業について、仕分け結果の反映が十分でないとして、改善を求める「通告」を行う方針を決めた。「再仕分け」対象の111事業とは別に、仕分け作業を経ずに改善を求める。9日夕の同会議で正式決定する。
90事業は廃止判定を受けたのに別の名前で「復活」している事業や、予算縮減判定の反映が十分でないもの。廃止判定された文部科学省の「地域科学技術振興・産学官連携」が、ほぼ同内容の「イノベーション成長戦略実現プログラム」(20億円)として計上されたり、農林水産省の「農業経営改善総合支援事業」が「地域農業を担う経営体育成・確保推進事業」(4.5億円)として予算要求されており、これらの事業を「実質的に廃止と言えない」と判断した。
また、国土交通省では各省が政策を競う「政策コンテスト」で廃止判定された事業の予算獲得を目指す例もみられた。地方のバスや私鉄の交通網維持のための補助金交付などを組み合わせた「地域公共交通確保維持改善事業」(453億円)で、統合前の複数の事業が「廃止」などの判定を受けていた。10日から始まる同コンテストを前に、刷新会議がけん制した形だ。
--------------------------------------------------------------------------------
私の十二指腸潰瘍再発まで引き起こした、未だに覚えている昨年11月13日の金曜日(苦笑)に行われた事業仕分け第一弾で、「地域科学技術振興・産学官連携」が「廃止」と判定された訳ですが、継続中の研究が複数有り、その研究費で雇用されている研究者も多数いて雇用不安まで出ると言った状況の中で、全国知事会の反対もあって、最終的に新規募集を行わずに継続中の研究のみを続けて、研究期間を満了させて順次終了させていくフェードアウトの手法を取ることになった訳です。その際、文部科学省本省の事業は、予算科目を整理するために別の予算科目に纏めて継続することとなりました。
ところが、上記記事によると、『事業仕分け結果の反映が十分でない』と『改善を求める「通告」を行う』と言うことだそうで、その中に「地域科学技術振興・産学官連携」も『別の名前で「復活」している事業』としてノミネートされてしまいました。
順次終了させていくフェードアウト(経産省的な表現だとサンセット)方式で、関係各所の了解が得られていると思いましたが、行政刷新会議はそれですら問題視しているのでしょうか?
そもそも、研究開発と言うのは1年で終わるものでもなく、研究者の数と一定期間の時間を掛けないと成果が出て来ないものです。それを途中で止めた場合、逆に今まで投資した資金をドブに捨てることになりかねません。それにも係わらず、行政刷新会議は一律でバッサリ止めろと言うのでしょうか?
もし、行政刷新会議、ひいては現民主党政権がそう言うつもりであるならば、この国に未来は無いなと思います。
実際、第一弾の事業仕分けの後、東大の大学院博士課程在籍者やポストドクターへアンケートを実施したところ、かなりの人達が「研究者になるのを諦める」か「海外へ出て行く」のどちらかになったそうです(ソース:東京大学総長室・平成21年12月18日付「若手研究者育成資金縮減の影響調査及び反対署名」)。つまり、日本で研究を行いたいと考える人が少なくなったと言うことです。
円高によりどんどん海外へ工場が出て行く中で、日本国内での研究開発の拠点を設けさせることで、その拠点でのエンジニアの雇用と海外から技術料収入を確保しようという考え方に沿って、今までは日本政府の政策として、各種の研究開発支援制度や企業への研究開発減税を進めてきた訳です。ところが、その重要な基盤である「人材」が海外に流出するか、研究開発に行かないと言う事態は、技術立国政策の根幹を揺らがす状況だと思います。
話を広げすぎましたが、研究支援を途中でバッサリ止めろと言うのであれば、この事態を更に加速すると思います。実際、私の身近でもこんな話があったりしますし。
【日経ビジネスオンライン】未来への扉を閉ざされた科学技術 第一話『失ったのは「カネ」ではなく、「熱意」だった』(著者:山根一眞氏)
正直言って、この記事に出てくるU先生へ「『事業仕分け』で、来年度から研究費がゼロになりそうです」と言わざる得ない立場になってしまった私としても、事務方として不公平にならない程度でこの研究課題を採択するよう内部を説得しただけに、言うこと自体に忸怩たるものがありました。それをまた今年も繰り返すと言うのであれば、大学等の公的機関の研究者はもう日本政府・政府関係機関のことを信用しないかも知れません。
まっ、テレビ上がりの国会議事堂の中でファッション誌のモデルをやった某大臣には、こんなことは理解出来ないかも知れませんけど(嫌味)。