多面体F

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

入院の日々

2012年06月21日 | Weblog
今年の冬、大きな病気で1か月入院、さらに6週間自宅療養した。病気も長期入院も生まれてはじめてだったので、「貴重な」体験をした。幸い後遺症も残らなかったので、覚えている範囲で感想を記す。なお何の病気か、どこの病院かはあえて記さない。

●病院の職員は職種が多い
一見、看護師さんにみえる人も日勤A,B(8:00-16:30のあいだで早番と遅番)、準夜勤(15:00-23:30)、深夜勤(23:00-8:00)と勤務時間帯が異なる。朝8時出社や23時30分退社という勤務時間帯では、バス通勤はむずかしい。通勤範囲は限定される。看護師のほか看護助手、クラーク(事務)、オーダリー(物や人を運ぶ係)、清掃や配膳をする人など多くの職種がある。これらは病棟の職員で、診察室には、医師、看護師以外に臨床検査技師、診療放射線技師や理学療法士、言語聴覚士、作業療法士、薬剤師といった専門職の人がいる。それもどうやらいろんな団体・企業所属の人の集合体のようで複雑でわかりにくい。

だれに何を聞いてもたいてい「ナースに聞いてみてほしい」「ナースに相談してほしい」といわれる。しかし実際に聞くとキョトンとした顔をされ、詳しく事情を話すと「担当に伝えておきます」「あとで病室に伺わせます」と言われることが多い。 
また排他的というほどではないが、他の職種や組織のことは本当にわからないようだった。
おまけに年明けから電子カルテが導入され、検温や血圧を測定するたびにその場でパソコンに打ち込まなければならず、しかも容量が必要量より少ないようでスピードがとても遅く、脇でみていても大変そうだった。従来より残業が増えたそうだ。明らかな労働強化なので「組合問題にしてみては」と声をかけそうになった。

●病院で驚いたこと
個室には、トイレとベッド、サイドテーブルとテレビ、洋服ダンスとクローゼットがあり一見ビジネスホテルのシングルの部屋のようだ。しかしベッドの壁にはナースコールが付いている。
はじめの数日は、トイレに行くため5-6歩歩くだけでも、ナースコールでナースを呼ばないと行けない。この程度はもちろん歩けるが、発見されると「何をしているんですか!」とどなられる。病室の床にはマットが敷かれており、足が触れるとナースセンターで警戒ブザーが鳴動する仕組みになっていて、スピーカーから「どうしました?」と声が響く。やはりここは収容所である。点滴や排尿の管が付いているあいだは、トイレだけでなく風呂(シャワー)に行くのも同じで情けない思いをした。

「レレッ?」と思うことはいくつかあった。たとえば何かあるごとに「お名前をフルネームでお願いします」「生年月日は?」と問われる。たしかに他の患者と取り違えて血圧や体温をチェックしていては大変だ。しかし「今日は何月何日ですか?」「何曜日ですか?」と続くと、少々イライラしてくる。看護師さんをはじめ勤め人にとっては18日か19日か、あるいは水曜か木曜かは大きな問題だろう。しかし入院患者にとっては18日か19日かは大した問題ではない。また水曜か木曜かは正直いってどちらでもかまわない。
さらに、「100から7を引くと?」「そこからさらに7を引くと?」と聞いてくる人がいる。そのうえ「そこから7を引くと?」「ここはどこですか?」と聞いてくる人もいて、ますますムカッとしてしまう。もちろんいろんな意図があって聞いておられるのだとは思うが・・・。
大病院の7不思議に「新聞がない」ことがある。個人病院にも歯科にも人間ドックにも新聞があるのに、大病院にはない(もしかすると、わたくしが入院した病院だけかもしれないが)。それでいっそう曜日がわからなくなる。もっともテレビはあるし、個人持込みのパソコンが使えるので、ニュースはわかるのだが・・・。

また病院食は、ちゃんとカロリー計算もしてあるし充実しているのだが、なぜかおかゆと牛乳が多かった。こちらは胃腸が悪いわけではないので不思議に思った。牛乳はこちらの体質の問題で、200ccくらい飲むと下痢するので飲めないのだ。あるとき意を決して理由を聞いてみると、とつぜんふつうのごはんとヨーグルトに変わった。給食は給食の会社が調理して配達するらしいが、その連絡が悪かったようだ。これは組織上の問題のようである。

●病院の日常
病院の日常は、規則正しいといえば規則正しい。朝6時起床、21時消灯、患者にとっては食事の時間が節目となる。朝食8時、昼食12時、夕食18時、それぞれ15分ほど前にお茶が運ばれる。
メニューは、2週間に1度、ちらしずし、うな丼、サーモンフライなども出ておいしかった。
  
消灯が21時なので、朝5時とか6時とか早い時間に自然に目がさめる。やることもないので、テレビなど見て過ごすのだが、テレビはカード式である。個室はカードなしで見放題だが、大部屋は500円カードか1000円カードを使用する。未使用カードは少し手数料はかかるが返品できる。
風呂は、フロアに1つありホワイトボードに毎朝6時以降自分で記入し予約する。早い者勝ちである。
看護師が回ってくる検温、血圧チェックが朝夕2回、担当医師が2人1組で回ってくる回診が1日1回、ただしこれは「今日はお変わりありませんか」「今日はいかがですか」と「あいさつ」に来ているようなものである。その他、教授回診が週に1回ある。いわゆる大名行列で5-6人の集団だが、やっていることは「ご機嫌伺い」と変わらない。また週に2日程度、手術の日がある。手術が終わると、通常患者は1-2週間ICUに転室する。
ところでICU(集中治療室)とは血圧、呼吸、酸素飽和度 指先クリップ型パルスオキシメーターが枕元とナース室で表示される部屋に過ぎない。無菌室とか特別な治療をしてくれる部屋ではない。
ICUを出ると、人によってはリハビリが始まる。フロア内の歩行訓練から始まり、大部屋での階段昇降、下半身訓練や自転車など有酸素運動が加わる。その他、日によってはCTスキャン、MRIなどの検査がある。入院した病院のリハビリルームには、第48代横綱大鵬の手形の色紙が飾ってあった。
  
その他、見舞客への対応もある。基本的にはたしかにヒマだが、意外にいろんな用事がある。
わたくしの場合、手足が動き言葉も話せたので将来への不安はとくになかったが、不安のある人は、メンタル面がさらに大変だろう。 

外出や外泊はできるが、前日までに担当医師のOKをもらう必要がある。またその間面倒をみてくれる人の携帯番号を知らせる必要がある。わたくしは何か月も前に予約した芝居をみに出かけた。こういうことにはたしかに「許可」がいるが、ほんの道路の向かいにある郵便局に行くにも許可証が必要なのでうっとうしい。
なお買い物は、病院内にあるコンビニ・ローソンでだいたい間に合う。しかし入院したときに現金や携帯電話などはすっかり取り上げられているので、見舞いに来てくれた家族の協力を必要とする。
病院にはまだまだ不思議なことがあるようだった。
たとえば病院内で処方された薬は「おくすり手帳」に記入されない。それで同じ薬が重複して出てくることがあった。はからずも「おくすり手帳」の意義が実証された。

☆いろんなルールを書いてきた。しかしこうした「ルール」は、フロアごと、診療科ごとで異なる可能性がある。だから応用可能性という点では、あまり役に立たないかもしれない。
最後におカネの話を書いておく。個室料金は3-4万円、いくら固定資産税が高いといってもいい商売だ。食費は別で1日2000円弱。健康保険組合の通知によればだいたい360万円、そのうち90%は保険なので恵まれている。
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