皿川氾濫に対応したハザードマップについて
飯山市が「避難勧告を出すのが遅れた理由」として真っ先に主張したのは「皿川氾濫に対応したハザードマップがない」という事でした。
したがって「どのエリアまで対象にして避難勧告を出したら良いのかわからなかった」としています。
そうしてまた長野県もそのような主張を受け入れる形で「皿川氾濫の場合のハザードマップつくりを行う」としています。
さてハザードマップと言うものはどんなものか、とりあえず見ておきます。
・飯山・柳原ハザードマップ
https://www.city.iiyama.nagano.jp/assets/files/kikikanri/hazard-map/1iiyama-yanagihara.pdf
とか
・飯山まるごとマップ
とか
・千曲川の氾濫シミュレーション
http://www.hrr.mlit.go.jp/chikuma/bousai/hanran/simulation/iiyama.html
とかいうものもあります。
さてそれで、千曲川の場合は「堤防が決壊する恐れがある」という事で「避難勧告を出す。」
その時の目安として「ハザードマップが示しているエリアを対象とする」のでしたね。
千曲川の場合はそれでよく分かります。
しかし同じような考え方が皿川に適用できるのでしょうか?
皿川堤防の決壊を前提にするのですか?
計画高水位を越えたから皿川堤防があぶない?
そもそも「皿川堤防に計画高水位が存在するかどうか」も怪しいものです。
そうして今回、皿川右岸堤防がどのようにして決壊したのか、その検証が全くされておりません。
もちろん現在まで一切の報告はなしです。
どのような現象がそこで起こっていたのか、それは「計画高水位を越えたから堤防が決壊した」という事とは全く別物の現象であり、それで堤防は破壊されたのでした。(皿川堤防にあった2つの弱点については・その16を参照願います。注1)
それから「樋門ゲートの存在」。
ゲートを下した場合は基本的に排水ポンプ車での排水をおこなう。
当然の事ながら今回の様な「ゲートを下したが排水ポンプ車がそこにはいなかった」などという「間の抜けた対応」はもうしませんよねえ。
それから、ゲートはきっちりと降ろす。
そうであれば「今回の様な千曲川からの逆流の市内への流出」も考える必要はありません。
加えて「皿川堤防の弱点も明らかになり、その部分のそれなりの補強も済んだ」。
その様な状況下ではどのような形のハザードマップが必要になるのでしょうか?
と言うよりは実はすでにハザードマップは存在している。
それは千曲川決壊のハザードマップでよいのです。
ただし、どれだけの水量が皿川からあふれてくるのか、それがわかれば「千曲川のハザードマップに水深を書き込める」。
それで「皿川のハザードマップは完成」です。
しかし「どれだけの水量が皿川から流出してくるのか」それを見積もる事は相当に難しいことですね。
とはいえ、このシリーズではすでにそれを「流域雨量指数をつかって」やっています。(「・その25」と「・その26」を参照ねがいます。注2)
その結果は「飯山市で今回見られた水深の深さは皿川からの流出水量だけでは到底説明できない」というものでした。
さて、長野県はどのような形での「皿川対応のハザードマップ」を仕上げてくるのでしょうか?
そのハザードマップは「単に今回の水害の空撮映像を地図に落としたもの」なのでしょうか?
それとも真面目に「山に降った降水量から皿川の水量を推定し、市内への水の流出量を計算して、市内の水深を算出したもの」なのでしょうか?
そこのところは「長野県作成の皿川ハザードマップ」についての今後の要注目ポイントとなります。
注1:・その16・皿川堤防にあった二つの弱点
そうしてそのような重要な事実を知ろうともしない飯山市と河川事務所。
その為に「左岸から水があふれた」という住民からの重要な情報は全く生かされなかった。
注2:以下・その25および・その26へのリンク
・その25-1・皿川のフォトアルバム
皿川上流域からの流量を計算するための舞台の説明
・その25-2・樋門を閉めた時点での皿川上流域から時間当たり流れ込んだ水量の算出
加えて、皿川下流域(英岩寺あたり)での水位の経時変化の確認
・その25-3・12日~13日の皿川上流域からの時間ごとの流入水量を求めた
流域雨量指数計算で気象庁が使っているマニング公式による。
・その25-4・飯山市と河川事務所の主張の通りに今回の水害を構成し検証した。
その結果は現実に起きた事と全く一致しないものとなった。
そのようになった原因は「飯山市と河川事務所の主張が現実に一致していないものであるから」という事になる。
・その25-5・皿川本体の排水状況と樋門を開けたとする水位についての検証をした。
排水ポンプ車1~2台では到底「樋門を開けたとする水位に到達できない事」が分かった。
それはつまり「千曲川河川事務所の情報公開請求に対する回答は作文でしかない」という事の証明でもある。
・その26・城山雨水排水ポンプ場のポンプ稼働状況と浸水深さについて検証した。
3号機を動かす必要がないにも関わらず動かしている。-->栄川樋管からの逆流が疑われる。
皿川からの氾濫水だけでは13日7時15分時点での飯山市の浸水状況は到底説明できない事がわかった。
追伸:2021/6/9:飯山市が住民アンケートで作り上げた皿川ハザードマップについて
アンケートの実施状況: ・参考資料の11-3 より以下、引用
◎総務部長(栗岩康彦)
まちづくり課のアンケートということで、まちづくり課のアンケートについては、市街地における災害リスク分析を行って、計画に反映するということを目的として実施しておるわけですが、アンケートには避難行動に加えて時系列の状況、あるいは今回の災害に対する課題、問題点ということを求めるということであります。
これにより災害に関連した調査だということで認識しております。
コメント:このアンケート結果の一部ではあるが以下の資料に報告されている。
・飯山市まちづくり基本計画(都市計画マスタープラン・立地適正化計画)令和3年 3月:https://www.city.iiyama.nagano.jp/soshiki/machizukuri/keikaku/oshirase.htm/oshirase.htm
◆6番(松本淳一)
アンケートを取られるのはいいんですが、と思います。ただ、内容がですね、水のすごい動き、これは関心事項であるし、調べなければいけないところがあると思いますが、災害時の市民の行動とか心理とか、防災上の問題点とか、特に情報伝達がどうなっていたかというようなところをもっと調査すべきだというふうに私は考えます。
須坂市では、昨年12月に災害のアンケートを実施してやっています。今、分析中だということですが、もう少しきちんとしたものでやるおつもりはありますか。
◎総務部長(栗岩康彦)
アンケートにつきましては、時系列に(引用注;浸水深が)何センチあって、どういうふうに住民の方がどこにいたかとか、そういうことを詳細に聞いたり、課題等の記載欄もあるということで、現在のところはそのほかの調査については予定しておりません。 <--引用ここまで
コメント:まちづくり課によって行われたこのアンケートによって皿川氾濫の実測によるハザードマップが完成している。
上記資料・飯山市まちづくり基本計画(都市計画マスタープラン・立地適正化計画)令和3年 3月: 第四章 立地適正化計画 :https://www.city.iiyama.nagano.jp/assets/files/keikaku/20210506-041036.pdf :の P113 に浸水範囲の図がある。それがまさに「長野県が作る」と言っていたハザードマップそのものになる。
だが残念な事にこの浸水エリアまとめにはウソがある。それは何か、というと「右岸および左岸の有尾区への浸水」がほとんど無視され、書かれていない、という事である。
ちなみに ・その30-2・皿川堤防改修計画詳細(長野県提示) :によれば今回皿川氾濫で流出した水量は
・皿川から市街地への流出水量61万m^3 :流出面積90ha ー->平均水深 68センチ という事になる。
追伸の2:(2021/7/25):国土地理院が作った今回の皿川氾濫に対応したハザードマップ
透過率のスライダーを動かすと、下に隠れた地図情報が読める。
ただしこのハザードマップ、有尾区と県町区の浸水情報は書き込まれていないのが残念な所。それから宮沢川氾濫の情報もない。だが飯山市街地の大方の所はそれなりに読みとれる。
但し浸水深さは最大の時ではない、あるいは浸水したがあまり深くないところは表示されていない模様。
追伸の3:(2012/9): 上記の国土地理院の浸水深さほぼ実測マップと : ・その29-2・「地点別浸水シミュレーション検索システム」について :で紹介している国交省の「地点別浸水シミュレーション検索システム」の千曲川決壊後5時間時点での計算結果は驚くほどに一致度が高い。(計算結果は20%ほど高めではある。)
そうであればほぼ台風19号での市内への浸水の進展状況はこの「浸水シミュレーション」で再現できている、と考えてよい。
同上追記:ドローンにて動画撮影された市内の浸水状況はこちらから確認できます。
https://www.youtube.com/watch?v=c4lQ4wckcOc
ネットまとめページはこちら: https://matomedane.jp/page/39432 :ないしは:https://archive.fo/wULW9