シリウス日記

そうだ、本当のことを言おう。

追補の2・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-01-26 16:40:04 | 日記

第一章樋門操作の客観的な記録が無い事について。
今回の飯山水害の基本的な原因は「皿川樋門は閉じなくても、開けっ放しでも大丈夫である」という誤った認識を飯山市と千曲川河川事務所が共有した事にある。
実際にここ10年間ほどは2017年の台風の時も含めて、「開きっぱなし対応で大丈夫であった」と言うのが事実ではある。(注1)
しかしそれはある限定条件、千曲川の水位が飯山観測所数値で8m程にとどまっている事が必要であった。
その事を理解せず「今回台風19号でも大丈夫である」という判断が致命的であった。
そうしてこのような判断をした飯山市、それからそれに賛同した河川事務所の責任は半分半分という所であろう。

そうして、実際は皿川樋門は開きっぱなしのままで皿川堤防を決壊させ、その決壊場所から千曲川から逆流してきた泥水を市内に氾濫させた。
しかし「事の重大さに恐れをなした河川事務所と飯山市」はそのような事実を公表することはなく、「皿川樋門は閉められた」とし飯山市に至っては「市は出来る限りの事をやったのであり、原因は全て台風19号にある」としました。

さてここで問題になる事は「皿川樋門は本当はどうだったのか?」という事であります。
実際に閉じていたのか、開いていたのか、その客観的な動作記録がどこにもない、という事です。
そうしてそこにあるのはただ「樋門を操作したとされる操作員からの報告のみ」なのです。
くわえて指摘するならば、今回の飯山水害に関係した樋門・樋管は皿川樋門だけではなく、栄川樋管の状態がどうであったのか、という事も大変に重要な問題なのであります。

樋門・樋管の操作においては河川事務所からの指示というものもありますが、実際に操作員がその指示にしたがって樋門・樋管を操作できたのか、という事もまた重要な事であります。
しかしながら、現状ではその事を確認する手段は確保されておりません。
その事がまた一般的には「河川事務所が出してきた報告を信じる以外には方法がない」というような状況を作り出しているのです。

しかしその事は仮に河川事務所が虚偽の報告を出してきた時には誰にもその事を反証できない、という事になります。
そうして今回、飯山市の水害の事例では「その様な事が実際にあったのではないのか」という事が強く示唆されます。(注5)

あるいは、ここは逆の言い方をしてもいいのかもしれません。
実際には河川事務所の主張通りに「樋門は閉められていた」が「それを裏付ける客観的な記録はどこにもない」といってもいいのかもしれません。
そうしてこの状況は交差点で2台の車が衝突した場合にお互いの運転手が「お前が信号を無視したのだ」と言い争う状況そのものであります。
しかしながら、近年ではそのような状況を改善するために「ドライブレコーダー」なるものが登場しています。
さてそうであれば当然ここは「樋門レコーダーの登場」が期待される事になります。

第二章皿川樋門についている不思議な水位計について(注4)
「皿川樋門についている不思議な水位計」というのはこれです。
http://archive.md/CTqoA
全景だとこうなります。
http://archive.md/r2YkQ

樋門の左側入口上部に箱状のものが取り付けられています。
そうしてどうやらこれは「超音波距離計」である様です。(注2)
その箱状の位置からその下を流れる水面までの距離が分かります。
そうして、その場所に堆積した泥がない場合は、あらかじめ水がない場合の距離は計算で分かっていますから、そこを流れる水流の厚さが分かる、という仕組みになっています。(注3)

さてそうやって測定された数値はこのページで見る事が出来ます。(2020年1月現在)
http://www.hrr.mlit.go.jp/chikuma/bousai/kasen/data/index.html

飯山市関連では左側に5つの樋門・樋管が、右側に1つの樋管が表示されています。
それぞれ「内水位」と「外水位」がありクリックすると「10分ごとの数値」が、それから1時間ごとでは過去1日分の数値を確認できます。
そして「外水位」は上記で説明した「箱状の測定器」が千曲川出口の入り口側に対応する位置に取り付けられているものと思われ、そこでの水深の測定値であろうと思われます。

従いましてこれらの数値はそこに立てられている水位標を使って測定した水位の値にはならない事には注意が必要です。
しかしながら、皿川側と千曲川側のどちらの水深が大きいのかは判断することができ、従って樋門の中を水がどちら方向に流れているのかを確認する事には使えます。
ただしそれは樋門内部を流れている水流の水面が「超音波測定器の取り付け位置より低い場合」に限りその様に使えるのであって、今回、河川事務所が回答している様な、樋門を閉じたとする時の内水位6.43mでは「測定不可になる」という事を知っていなくてはなりません。
(この測定器は測定器本体が水没したら用をなさなくなります。)

さて長々とこうして「この不思議な水位計についての説明」をしてきた理由ですが、これが当面は「樋門レコーダーの代わりになりうる」という事を指摘する為です。
但し現状のままでは不十分であり、樋門ゲートの上限と下限にリミットスイッチを取り付け、そのオン/オフ情報をこの超音波水位計の測定値情報を送信する際に同時に送れる様にソフトを手直しすることが必要です。
それさえできればあとは「今この樋門・樋管が閉じているのか、それとも開いているのか」をネット上でいつでもどこででも確認できる、という事になります。

注1
「その8」および「その20」を参照ねがいます。

注2
「超音波式水位計」についてはこのページの最後に説明がのっています。
http://archive.md/mlhoU

注3
「その場所に堆積した泥がある場合」は正確な水深は測定されません。
http://archive.md/W89Rx

注4
なぜ「不思議な水位計」と呼んだのかと言いますと、この水位計は樋門の閉さ・解放の目安を与える数値は測定できないからです。
そうなると「いったい誰が何の目的に使うものなのか?」よく分からない事になります。
まあそれでも「対象河川の水位の上昇判断」には使うことが出来、「実際に出動して目視確認が必要な状況になりそうかどうか」という事の判断には役立ちそうです。
そういう意味では「市長さんの『皿川にも水位計が欲しい』というリクエストには一部分ですが答えることが出来るもの」と言えそうです。

注5
このシリーズの「その25-5」を参照願います。

追伸
上記のような「オンライン樋門モニターシステム」の発展形としてはたとえば
「樋門遠隔監視操作システムの概要と今後の課題」
http://www.kai-koei.co.jp/archive/notekoei/14-2.pdf
なことや、新潟県では
「河川管理施設における遠隔監視制御システムの有効性について」
http://www.hrr.mlit.go.jp/library/happyoukai/h27/B/B10.pdf
な事などもやっている、と言うようなことは当然ながら千曲川河川事務所は了解済の事であると思っております。

第三章
飯山樋管での6時31分時点での水位<--写真あり

じつは千曲川水位で気になっていた事が3つほどありました。
1、楽農家さんの読みでは皿川ポイントで堤防の高さから2mしたあたりまでしか
水が来ていない、と主張されている事。
これは樋門横の階段に残っている千曲川の「はなどろ」と楽さんはいってましたが
その残り方からの推定でした。

2、6時31分に撮影された、とするこの写真の水位が堤防高さに対してあまりにも低い事。
http://archive.md/lvexE
(水位観測所では堤防高さに対して1mを切る所まで水が上がった、とされている事に対して、、、。)

3、空中から撮られた動画で見ると、千曲川の水位がそれほど高くは見えない事。
以上の3つが気にかかっている所でした。

それでまずは1、からです。
但し以下、車道標高は地図からの読み取り値をつかっており、水位標高はすべて
それをベースに計算しています。

皿川樋門の下流にもう一つ排水樋管があり、そこにも階段が付いてます。
その階段に残っている泥の様子から水はその場所の堤防の車道の高さから
1.8m程に来たと推測されます。
車道標高が319.3mですから水位標高は317.5mです。

同様に皿川樋門では車道高さから1.7m下まで水が来た。
但し車道高さは水位換算で10.5mとしています。
車道標高が319.4mですので水位標高は317.7mです。

栄川樋管では1.7m下まで。
車道標高が319.4mですので水位標高は317.7mです。

飯山樋管では車道から1.65m下まで、となります。
車道標高が319.8mですので水位標高は318.15mです。

さて飯山観測所では水位はピークで11.17m。
水位標高は318.3m。
車道標高は319.3mですので堤防した1mまで水が来た事になります。

さて、こうやって並べてみますと「堤防下1.8m~1.65mまで水が来た」というのが
4か所、ただ水位観測所のみが堤防下1mまできた、と主張しています。

そのことはまた中央橋から下流域では水位標高が317.7m~317.5mであるのに対し
観測所の水位標高のみが318.3m、栄川と皿川に対しては0.6m高い水位になってます。

さてこれはいったいどうした事でしょうか?

2、についてですが、飯山樋管の写真の水位から水位を計算で出しても車道から1.65mとなります。
飯山樋管の写真を撮った反対側に水位標があり、それを使いました。
そうでありますから、「階段に残った泥でピーク水位を知る方法」というものは
それなりの精度がある、という事になります。

そういうわけで「飯山水位観測所に秘密がある」という事になりそうです。

追伸

その後、水位観測所での堤防高さのレーザー測定を行った結果、車道位置で水位換算で12.3mである事が判明、水位観測値を11.17m->11.1mと訂正すると最高水位は車道高さより1.4m下という値となり、「堤防下1.8m~1.65mまで水が来た」という水位観測所以外の観測地点との差は「誤差範囲内に入った」と見るのが妥当である模様。(4月26日記)

御立野排水暗渠(おたてのはいすいあんきょ)位置での最高水位は、階段に残っていた泥の跡から堤防の階段が始まる位置から1.69m下である事を確認した。(19cm*8+17cm:写真あり)

飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧