1、飯山水位観測所の事
飯山水位観測所、なまえは立派ですが単に2本の水位標が河川敷に立っている、と言うだけのものです。(注1)
今までの飯山市のやり方はこの水位標を一時間に一回、目視で読み取るというものでした。
ちなみに手前の背の高い水位標は7m~12mまで、奥の背の低い水位標は3.5mから8mまでの水位を読み取るためのものです。
そうして、その様にして読み取られた水位はたとえば台風19号の場合ではこのように市役所のHPで公開されていました。(注2)
その様なやり方ですから、決められた水位水準で、そのタイミングで避難勧告を出す、などという事は到底できません。
それはまた「実際にマニュアルで決めた水位で避難勧告を出す」という事を真面目に考えてはいなかった、という事も表しています。
2、7月7~8日にかけての千曲川増水の時の千曲川水位情報の公表はやり方を変えた
この時は市役所はこのような水位情報をHPで公開しました。
しかし、公開された水位情報は従来の飯山水位観測所での目視確認水位ではなく、皿川樋門の千曲川への出口側に設置されている「外水位計」の測定値を飯山水位観測所での値に換算したものでした。
そのやり方の利点は「ネット上で10分間隔で水位情報が確認できる」という所にあります。
そのようにできますからこれから市役所は「避難勧告水位に達したら速やかに勧告を発令できる」という事になります。(注3)
3、皿川の外水位計の限界
それは水位の測定範囲の上限が5mである事です。
つまり飯山観測所数値に換算すると7.12mまでしか自動測定は出来ない、という事になります。
それではそれを千曲川の水位が超えた時にはどうするのか?
現状では皿川樋門にある水位標を使っての目視観測、という事になります。
皿川樋門に取り付けられている水位標は10.7mまで目盛りが切ってありますから飯山観測所の数値に直しますと12.8mまでの水位が観測できる事になります。
ちなみに飯山観測所では水位標は12mまでであり、公称の堤防高さまで水位標の目盛りは切ってある事になりますので、千曲川の水位を基準にして考えますと、皿川の位置の堤防高さは飯山観測所の堤防高さよりも0.8m高い、という事になります。(注5)
それで、もう一つのやり方、というのはは千曲川右岸にある「上新田揚水機場樋管」に設置された「危機管理型水位計を使う」という方法になります。(注4)
ここの水位計は堤防天端の標高を319.5mである、として水位をその高さから何メートル低いかで示します。
ただし天端まで残り3m付近の高さまで水位が上昇しないと測定開始となりません。
それで表示されている数値を堤防の標高から引いてやると水面高さの標高が出ます。
その水面標高値から飯山観測所までの河床勾配による水面標高の低下分として0.91mを引いてやると飯山観測所の水面の標高となります。
その水面をゼロ点標高が307.14mの水位標で計るのですから、307.14mを引いてやれば飯山観測所で測定したらこうなるであろう、という水位値になります。
ただし堤防高さより3m程低い所まで水位が上昇、という事が条件ですから、飯山観測所で考えますと水位が9mあたりから「上新田揚水機場樋管」の水位計の値を使える、という事になります。
こうして7mまでは皿川樋管の外水位計の値を使い、9m以上は「上新田揚水機場樋管」の水位計の値をつかえばよいという事が分かるのです。
しかしその間の7mから9mは「目視観測」という方法を取る事になりますが、これは現状では仕方が無い事でしょう。
さて、そういう訳で飯山市役所には今後とも水位観測については今までの様な「人の目に頼る目視観測」ではなく「水位計による自動測定方法」を最大限、活用していただきたいと考えております。
追記
委託樋門操作員に飯山の水位観測所での水位測定をやらせていたであろう、という事は「・その28」で述べた通りであり、これは契約上の問題を指摘されても仕方がない状況でした。
しかし、樋門操作員が樋門の水位を測定する事には何の問題もありませんから、皿川樋門で水位を測定し、それを飯山観測所での値に換算する、と言う方法は、上記の様な矛盾点を解消する、と言う点においても妥当な方法であるといえます。
注3:皿川の外水位計データを飯山水位観測所での測定値相当に換算する方法
観測所水位標の基準点標高が307.1mであり
皿川水位計・基準点標高が309.1mですから
あとは河床勾配の補正を加えて、2.17mという補正数値を市役所は採用した様です。(飯山盆地での千曲川河床勾配は1/1000である、という飯山市の主張でもあります。)
後は、皿川の外水位計のデータに2.17mを足しこむと飯山観測所での水位値になると飯山市は主張しています。
そのページの左側の上から6番目に皿川がありますので、外水位をクリックしてください。ページにデータが表示されます。
注4:「上新田揚水機場樋管」に設置された「危機管理型水位計」
水位計のマークをクリックすると別ウインドウで水位計のデータが表示されます。
左上の3つのセレクトボタンの河川横断図をクリックするとその時の水位の標高値が右端にて直接、確認できます。
右端に行くにはウインドウ下部にあるスライダーを動かす事になります。
ちなみに 「・その19・飯山市は自分で決めたルールさえ守る事が出来ない組織である
いくらハザードマップがあっても決められた水位で避難勧告が出せなくては何の意味もない。」によれば現状は「飯山観測所で水位が9.4mに達した時に避難勧告発令」となっている事が分かる。
飯山観測所での水位9.4mは標高で316.54m、河床勾配分の0.91mを加えると「上新田揚水機場樋管」では317.45mとなり、これをここに設置された水位計は「堤防天端まで2.05m」と表示します。そうして「ここの水位計の危険水位は1.76m」と設定されているのですから、「30センチほど飯山市設定の避難勧告水位よりは甘い」という事ではありますが、「2つの水準はほぼ同一水準に設定されている」と言うように見る事も可能です。
ちなみに綱切り橋の南に設置された「千曲川右岸36.0K」という水位計の危険水位は「天端までの余裕が2.12m」であり、この数値は「上新田揚水機場樋管」での数値1.76mよりも36センチ、厳しいものになっている。これは、この位置での堤防の計画高水位の値を反映している為(つまり、この位置の堤防の強さは上新田と比較すると弱い為)であると思われる。
注5:この奇妙な結論、千曲川の水面を基準に考えると皿川位置での堤防高さが飯山観測所位置での堤防高さより0.8mも高い、と言う話はなかなか納得ができるものではありません。
それでこのような「おかしな話」が出てくるのは飯山水位観測所の水位標のゼロ点の標高値が実は307.14mではなく、別の数字である事が原因ではないのか、と言うものが当方の疑問であります。
もしそうである、とすると飯山観測所で測定してきた水位では堤防の計画高水位に対して決められた避難勧告を出す基準の値を使って正しいタイミングで避難勧告の発令をすることが出来てはいなかったという事になります。
追記:危機管理型水位計を有効に使えるもう一つの事例は・その後の状況報告・2に報告されている、「大きな被害が出た静間バイパス付近で水防の自衛活動に有効に使える水位計について」という記事になります。
それから、飯山観測所に関連した「横丁大家さんの記事」があります。こちらもご参考までに。