シリウス日記

そうだ、本当のことを言おう。

その19・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-01-05 15:56:46 | 日記
千曲川に対する避難勧告について

飯山市が持っている基準から見ていきましょう。
飯山市地域防災計画 (平成31年2月22日改定版)
第2編 風水害対策編

https://www.city.iiyama.nagano.jp/assets/files/kikikanri/tiikibousaikeikaku/02.pdf

いろいろな箇所に重要な文章が書かれているのですが、それは注1に回します。
P312 基準一覧に
『○千曲川増水
(引用者注釈:飯山水位観測所の水位が)
9.0m、避難準備・高齢者等避難開始発令
9.4m、避難勧告発令

と明記されています。

当時の飯山市公表の水位データから
水位9.0mには2時12分に到達
水位9.4mには2時45分に到達していた事がわかります。

さてそうなりますと
2時15分あたりで「避難準備・高齢者等避難開始」を発令しなくてはならなかった。
そうしてまた
2時50分には「避難勧告」を飯山市がお持ちのハザードマップに従って市内全域に発令しなくてはならなかったのです。

しかしどちらも発令されませんでした。
こうして「飯山市は自分で決めたルールを守る事すら出来ない組織である」という事が分かってしまうのでした。

さてここで「千曲川の状況に応じた避難勧告を出せなかった」飯山市長の言い訳を見ておきましょう。
・12月飯山市議会で の市長答弁
http://archive.md/zRcEN

『千曲川本堤からの越流となれば即刻避難勧告を出すということです。』

越水してから避難勧告を出す、というのでは大幅に遅いのですよ、市長さん。
こんな答弁を平気で市議会に対して行うのですから、市長さんの水防に対する誤理解度がよくわかるというものです。


『近くの集落は避難勧告しましたが、しかし、深夜真っ暗です。
飯山市街地の人口は北町などを除いておよそ6千人おられる。
その中には高齢者の方も子供さんも赤ちゃんもいらっしゃる。
安全に避難してもらうことが何より重要であると考えました。』

「必要ならば、真夜中の避難にならないように取りはからえ」と「第2編 風水害対策編」には書かれています。
そうして当然の事ながら「必要な場合は真夜中でも避難する事が必要になる」のですから飯山市はぬかりなくその準備をしておけ、とも「第2編 風水害対策編」には書かれていますよ、市長さん。

『明るくなって 大勢の方々が安全に避難できるのが私はベストと判断したわけです。
それで6時40分に避難勧告を出したわけです。』

これは「皿川氾濫に対する避難勧告」ですね。(注2)
従って「飯山市は千曲川の状況については一切忘れていた」という事がよく分かる答弁になっています

さてそれで「実際のところはどうだったか」といいますと、飯山市は2時15分あたりで「避難準備・高齢者等避難開始」を発令する準備をしていた。
しかしそこに「皿川があふれた」という連絡が飛び込んできた。

それで千曲川の事は一切忘れ去られ、ただひたすら皿川氾濫の対応に追われた、という対策本部の右往左往する状況が目に浮かびます。

そうであれば水防活動をする対象が一つ増えただけでオーバーフローを起こす飯山市の対策本部のキャパシティーと言うものも改善する必要がありそうですね、市長さん。

そうしてまた、この時に千曲川対応チームと皿川対応チームとに分けている事ができていれば、飯山市が自分で作ったルールに従って2時15分に「避難準備発令」が行われ「避難勧告」も2時50分には「市内全域に向かって発令されていた」という事になります。
2時15分といえば市長が言う所の「北町に避難勧告を出したのは3時20分です」と言う時刻よりも一時間以上も早く市内全域に向かって注意喚起ができていた事になるのですから、本当にこれは残念な事でありました。

追記
そうして本当の事を言うならば市長は13日の4時25分から10時までの間、千曲川の水位が計画高水位10.4mを越えていたにもかかわらず市民を避難させなかった、という重大なミスを犯していたのでした。(注3)
これは「市長は5時間35分の間、1500名ほどの市民を無用のリスクにさらしていた」と批判されるべき事であります。

注1
P251
第1節災害直前活動
風水害については、災害発生の危険性をある程度は予測することが可能であり、被害を軽減するためには、気象警報・注意報等の市民に対する伝達、迅速な避難誘導等、災害の未然防止活動等の災害発生直前の活動が極めて重要である。
・・・・・
P251
2 市民の避難誘導対策
風水害により、市民の生命、身体に危険が生ずるおそれのある場合には、必要に応じて、避難準備・高齢者等避難開始の伝達、避難勧告、避難指示(緊急)を行うなど適切な避難誘導を実施し、災害の発生に備える。
・・・・・
P252
(1) 市は、風水害の発生のおそれがある場合には、防災気象情報等を十分把握するとともに、河川管理者、水(消)防団等と連携を図りながら、重要水防区域や土砂災害警戒区域等の警戒活動を行い、危険がある場合または危険が予想される場合は、市民に対して避難のための避難勧告等を発令するとともに、適切な避難誘導活動を実施する。
・・・
などなど、これらの内容を本当に飯山市が理解し実行出来るようになっていただきたいものです。

注2
 台風19号に関する被害状況等
(令和元年10月13日 10:00現在)

http://archive.fo/K9Uxa

『6:37 内水の能力を上回る増水により、飯山地区の福寿町区、本町区、肴町区、上町区、新町区、 鉄砲町区、奈良沢区、栄町区、県町区と秋津地区の北畑区に避難勧告発令』
となっており、「内水氾濫に対する避難勧告である」という事がわかります。

注3
飯山水位観測所での計画高水位10.42mと避難勧告水位9.4mの関係について。
計画高水位については以下のページを参照願います。

計画高水位
http://archive.md/uw7k

実際の河川水位が計画高水位を多少越えただけなら、堤防の高さには余裕があるのですぐに堤防からあふれ出すことはありません。
しかし「計画高水位はその堤防が継続して耐えられる水位」であって「この水位を超えた場合はすぐに決壊する」という事ではありませんが「決壊の危険性が発生する」という事にはなります。
従って「決壊にそなえて避難している事が必要」となります。

それで飯山水位観測所の計画高水位は
飯山水位観測所
http://archive.md/2wyfk
より10.42mである事が分かります。

そうでありますから、避難勧告発令の水位は計画高水位よりは1mほど低い所に「飯山市によって設定された」のです。
そうしてこの設定はまずまずは妥当なものであろうかと思われます。

といいますのも、この場所での堤防の天端は12mであって、越水が発生するのはその値を水位を越えた時となるからであり、そう考えますと越水までは避難勧告発令から2.5m程の余裕がある、という事になるからです。

注4
ついでといってはなんですが、ここで一つ優れものの水位計を紹介しておきましょう。
危機管理型水位計

中央橋下流の「ライブカメラ」と中央橋をはさんで右岸にある「危機管理型水位計」が表示されています。
後はそのマークをクリックしてすこし遊べばOKです。

これは「堤防と川の断面図上で水位が表示される」という優れものです。
それから綱切り橋の上流にも一つありますので、要確認です。

元のページはここ。
http://www.hrr.mlit.go.jp/chikuma/bousai/kasen/index.html
「危機管理型水位計」クリックで飛びます。

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