シリウス日記

そうだ、本当のことを言おう。

その30-3・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-07-15 16:24:32 | 日記

4、「フルバック方式」で整備された斑尾川堤防についての考察(2020/11/09):

斑尾川と千曲川と替佐駅、ハイウエイと国道117号線、そうしてJR飯山線の位置関係から確認しましょう。

・航空写真1

・航空写真2

写真2は写真1のクローズアップで、今回の話のポイントとなる斑尾川にかかっているJR飯山線の鉄橋部分の拡大である。

写真1で左側からハイウエイ、国道117号、JR飯山線と替佐駅、そうして千曲川の順になる。
斑尾川はなぜか「Han River」と英訳されているが、これが斑尾川である。

上空から見るとよく分かるのだが斑尾川にかかっているJR飯山線の鉄橋の幅はとても広く、国道117号線の橋の幅と比較しても負けないくらいである。
そうして、ふつうは飯山線の様に単線の線路であれば川にかかっている鉄橋の幅はこれほどには広くなく、せいぜいが2車線道路の道幅の半分、というところである。

その様な目で見るとよく分かるのだが、この斑尾川にかかっている飯山線の鉄橋の幅は異常なほどに広いのである。
そうして、最初に種明かしをするのであれば、この場所の鉄橋は、鉄橋の上流側と下流側に川を横切る形の堤防がある構造になっているのである。

そうして、そのままでは斑尾川の水は上流から下流側に流れず、ここでせき止められてしまうので、それを防ぐために川の水の通り道として、横切っている堤防の下にトンネルが作られているのである。それでこのような構造をカルパートと言う(注4

・斑尾川に作られている水の通り道としてのトンネル1

・斑尾川に作られている水の通り道としてのトンネル2

最初の写真、トンネル1は上流から写したもの、次のトンネル2は下流から写したもので、画面奥上部にハイウエイが写っている。

トンネル1の写真から分かる様にこの川を横切る様にして作られている堤防の高さは川の両岸の堤防の高さと同一である。

そうして、トンネル2の写真では右側が飯山になるのだが、右端に斑尾川にかかっている鉄橋に入り込んでいる線路が写っており、少々小さくて分かりにくいのではあるが、その線路の高さが斑尾川の堤防の高さよりも随分と低い事が確認できる。

そのあたりのことが上記の写真ではあまりはっきりしないのだが、同じその場所を上流側から写すと以下の写真となる。

・橋を囲む堤防に入り込む線路の写真(この写真では左側が飯山方向となる)

この写真を見ると斑尾川にかかっている鉄橋に入り込む線路の高さと斑尾川の堤防の高さの違いがよく分かるのである。

線路が川に差し掛かる部分では線路の両側を、川を横切る形の堤防がちょうどU字溝の両側の壁を作る様にして立ち上がっていて、その2つの壁に挟まれた部分の底を線路が川を横切る様に走っているのである。(注2

さて上記の写真は斑尾川の左岸での様子であったが、右岸でも同じような状況になっている。

・鉄橋を抜けて替佐駅に向かう線路の状況(下流側からの写真:今度は左が替佐駅方向)

・その線路の下にあるアンダーパス

さてそれで「なぜこのような複雑な構造の鉄橋にしなくてはならなかったのか?」といえば、かつてこの場所では千曲川の増水で氾濫が起きた。(注1

その対策として斑尾川の堤防の高さを千曲川本堤防と同じ高さにする、いわゆる「フルバック方式」で堤防のかさ上げが行われた。

だがJRの線路のかさ上げは行う事が出来なかった。

それで、JR線路の高さは前と同じで、それはつまり「斑尾川にかかっている線路の高さを変えずに」斑尾川の堤防のかさ上げをする為に、「そこに見られる様な橋の構造」を採用する事になったのである。

5、皿川堤防かさ上げへの適用

長野県は「皿川堤防を90センチかさ上げする」と言っている。
だが現状でも皿川堤防のJR線との接続部分は皿川堤防高さよりも90センチほど低い。

従って、堤防を90センチかさ上げするとそのままではこの接続部分は1m80センチ程低いままで放置される事になる。
それでは堤防かさ上げの意味がないので斑尾川方式の「堤防で挟まれた構造を持つ鉄橋の出番」という事になる。

具体的にはどのような構造をそこで作るのか、それは長野県が考えている事であると思うが、基本的な構造は斑尾川で実現しているものと同じと想定できる。

皿川堤防をかさ上げするには、皿川にかかっている2つの橋とJRの鉄橋をどうするのかが問題であり、従って「皿川堤防かさ上げ」については今後、どのような方法を長野県が取るのかが要注目なのである。

但し、長野県がいう様な「90センチの堤防かさ上げ」では千曲川本堤防より60センチ低い事になり、飯山市長が求めた「フルバック方式」ではなく相変わらずの「セミバック方式」の皿川堤防、つまり「皿川樋門は相変わらず存在する方式である」という事になる。

注1斑尾川堤防改修前にそこで起きた氾濫

注2:ここの部分の斑尾川にかかっているJR飯山線の橋の状況、というものはなかなかに分かりにくいものではあるが、昼間に飯山線に乗って斑尾川を渡ってみればその状況と言うものはよく分かるのである。

このあたり「百聞は一見にしかず」というところである。

注3:上記のトンネル1での写真は、ここの堤防が整備された直後のものであり、草や木がおいしげってはいない。それに対して現在では以下の様な状況である。

・トンネル1の現在の状況

注4:カルパート/カルバート トンネル用語集

カルパート 

地中に設けられる人工的な水路を総称して暗きよというが、鉄道、道路などの下を横断する道路、水路をカルパートという。カルバート

 

飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧