被災地支援プロジェクトチームEn

東北の中長期的な復興を目的としたボランティア任意団体です。活動のご報告をしていきます。

【防災】 修学旅行当日に備えた災害研修③

2015-04-24 21:41:53 | 日記
災害医療実習を受けた感想と学びについてご報告したいと思います。突然ですが、みなさんは災害医療という言葉をご存じですか?字面からなんとなく判断できそうですが、その意味をしっかりと知っている人はあんまりいないと思います。

災害医療とは、地震や火災など、大規模な災害が発生した時に行われる医療のことを言います。そういった災害時にはたくさんの人が怪我や病気になりますが、それに対応するお医者さんたちの人数は急には増えません。災害医療とは、「傷病者の人数>対応できる人(医療従事者)の人数、という状況になった際に行われる医療」のことを指します。大規模な災害時に一人でも多くの人の命を救うことがその目的です。

具体的には、医療体制、避難場所の準備、食糧支援の確保、PTSDのケア、ボランティアの組織、災害派遣医療チームの連携などが行われます。今回は、災害派遣医療チームにあたるDMAT(ディーマット)からお二人の講師を招きました。

まずDMATについて簡単にご説明をしたいと思います。DMATとは、「災害急性期(48時間以内)に活動できる機動性を持った トレーニングを受けた医療チーム」と定義されています。医師や看護師、そしてそれらを補佐する業務調整員で構成されたスペシャリストの集団です。

今回の講習では、そのDMATから河嶌先生と鈴木先生にお越し頂き、災害医療とトリアージについて教えていただきました。まず、災害医療について教わりました。災害医療ではCSCATTTという行動原則があります。これを分解すると以下のようになります。

Command&Control:指揮命令系統の確立
Safety:安全確保
Communication:情報伝達
Assessment:評価
Triage:トリアージ
Treatment:治療
Transportation:転送

ここでの学びが「指揮命令系統の確立」ということ。これがないと、組織は適切に動くことができません。誰が誰に命令するのか、報告するのか、そういったことをあらかじめ定めていないと、組織はうまく機能できないのです。私たちは修学旅行で石巻の中学生をアテンドします、場合によってはその子たちの命を預かる瞬間が来るかもしれません。Enという組織も明確な指揮命令系統を持っていなければ、有事の際に的確な行動をすることができないのではないかと感じました。

災害医療について説明を受けた後は、トリアージについて詳しく教えていただきました。みなさん、トリアージってご存知ですか?医療分野のドラマや映画でたまに取り上げられたりしますよね。

トリアージとは、災害時に多数発生した傷病者に対して、治療の優先順位を素早く決定するために用いられる手段です。傷病者の状態をもとに黒、赤、黄、緑の4色に色分けをします。

それぞれの色の意味は
黒…死亡、または救命の見込みなし
赤…一刻もはやく処置をすべきもの
黄…赤ほどではないが、早期に治療すべきもの
緑…今すぐ治療や搬送の必要がないもの。また、治療する必要自体がないもの。
となっています。

災害時には用意されている医療資源(医者、医薬品など)よりも多くの傷病者が発生する可能性があります。当然、全ての傷病者を救命することは難しくなるのです。トリアージは、限られた医療資源を最善な結果を生むために配分し、より多くの人命を救うために必要となるのです。

また、トリアージの特徴のひとつとして、トリアージタッグの存在が挙げられます。トリアージタッグとは、黒、赤、黄、緑の4色のマーカーがついたカードで、その人の状態を示すために、傷病者の右手に装着されます。このトリアージタッグがあると、大規模な災害で多くの救助者が入り乱れた中でも、的確に情報共有ができるようです。
 
今回の研修では、参加者が医療者側と傷病者側に分かれ、トリアージの体験をしてきました。実際にやってみると、傷病者の状態を見極めるだけでも難しいのに、そこにスピードも要求される非常に難しい作業であることが理解できました。

それでは、一般人にトリアージは無理なのか?実はそうでもないのです。確かに医療従事者でなければ傷病者の状態を判定することは難しい。ですが、それ以外の部分では私たちでもお手伝いできることがあるのです。

例えば、多くの傷病者がいたとして、彼らの状態は様々です。歩けそうな人もいれば、出血している人、動かない人もいます。そんな彼らに向かって、「歩ける人はこちらに移動してください!」と声をかけることにより、多くの傷病者の中から緑(今すぐ治療する必要のない人)の人を判定したことになりますよね。そうすれば、医療従事者が残った動けない人たちをトリアージすれば良くなるので、非常にやりやすくなります。

このように、医療知識を持たない私たちでも災害時には協力できることがあるのです。しかもこれって、医療だけに関わることではありません。災害時には医療チームの他にも、消防、警察、行政など、様々な人々が複雑に連携を取りながら活動を行います。

そんな場面で、私たちはただ逃げ惑うだけではなく、彼らに何かしら手伝えることがあると思います。避難民の誘導を手伝ったり、避難所の運営に協力をしてみたり、炊き出しをしたり、市民が協力するからこそできることがたくさんあるのです。

 今回の災害医療実習では、トリアージの知識を得るだけではなく、災害時には自分にも協力できることがあるのだという気づきを得ることができました。
                        (ぽんた)