東京都現代美術館(MOT)に行ってきた。
MOTアニュアル2006
No Border 「日本画」から/「日本画」へ
毎年、年度末に開催される企画展「MOTアニュアル」。去年は女性作家にスポットを当てたものだったけど、今年はカッコつきの「日本画」。MOTの企画だけあって、従来の日本画の概念規定には収まらない作品ばかり。
出品作家は、松井冬子、篠塚聖哉、町田久美、長沢明、吉田有紀、三瀬夏之介、天明屋尚の7名。日本画の公募展で活躍しつつも、そちらで受け入れられないモチーフを現代美術のフィールドで描く作家から、岩絵具や膠などを一切使わずに「日本画の精神」だけをよりどころとする作家までの多彩な顔ぶれ。なかでも特に印象に残ったのは、松井冬子と町田久美の作品。
松井冬子は、芸大大学院で日本画を専攻していて、公募展でも活躍しているという、いわば生粋の日本画家。そんな彼女が現代美術のフィールドで描くのは、幽霊画など、現代の日本画の世界ではほとんど描かれることのないモチーフ。完璧に近いテクニックと精密な線で描いた幽霊や、腹を開いて子宮を見せびらかすかのように横たわる女性の視線を観ていると、身も凍るような恐ろしさを感じた。
町田久美の作品は、雲肌麻紙に墨で線を描き、そのごく一部に顔料で彩色したもの。少しきわどいモチーフを、大胆な構図と漫画に通じるようなシャープなラインで描いた作品からは、絶妙なバランスで立ったような緊張感を感じた。大作も良かったけど、ほぼA3サイズの小品群が特に印象的だった。しかも、そのほとんどが高橋コレクションの所蔵。さすがは目のつけどころが違う。
転換期の作法
ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの現代美術
社会主義体制崩壊後、「民主化」「自由化」などの転換期にある中東欧諸国の現代アートにスポットを当てた展覧会。日本ではあまり知られていない10人と1グループの作家たちの作品を展示。
私とは価値観や感性が違いすぎるせいか、???と思うだけの作品が多かった。映像作品(ドキュメンタリーっぽいものが多い)を全部観れば3時間以上になるので、手続きをすれば1回だけ再入場できるそうだけど、とてもそこまでじっくり観ようという気にはならず、あっというまに観終わってしまった……(汗)。
そんななかでも私が気に入った作品は、赤いソファベッドに小さな穴がいくつもあって、そこから小さな声が聞こえてくるイロナ・ネーメトの《多機能な女性》と、ビニール袋に入ったカップめんがスナック菓子が勝手に動くクリシュトフ・キンテラの《もううんざり》。特に後者は、タイトルのような心境になりそうだった私を、ぐるぐる回るネギが癒してくれた。
MOTコレクション あなたのいるところ/コラージュの世界
いわゆる常設展。以前は東京都美術館から移管された作品から年代順に……といった構成だったけど、最近はテーマ別にコレクションを構成したものになっていて、以前よりも楽しめる展示になっている。
今回、最も印象に残った作品は、クリスチャン・ボルタンスキーの《死んだスイス人の資料》。ビスケット缶に貼られた630人の写真が、暗くて広い展示室に浮かび上がるのを見ていると、ホロコーストのできごとが決して歴史の本の中だけの話ではないことを実感させられるようだった。
最後に定番の宮島達男《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》でシメ。やっぱりこの作品を観ないと、MOTに来た気がしないなあ。
東京都現代美術館(最寄り駅:清澄白河or木場)にて、いずれの展覧会も3月26日まで(月曜休館)。
MOTアニュアル2006
No Border 「日本画」から/「日本画」へ
毎年、年度末に開催される企画展「MOTアニュアル」。去年は女性作家にスポットを当てたものだったけど、今年はカッコつきの「日本画」。MOTの企画だけあって、従来の日本画の概念規定には収まらない作品ばかり。
出品作家は、松井冬子、篠塚聖哉、町田久美、長沢明、吉田有紀、三瀬夏之介、天明屋尚の7名。日本画の公募展で活躍しつつも、そちらで受け入れられないモチーフを現代美術のフィールドで描く作家から、岩絵具や膠などを一切使わずに「日本画の精神」だけをよりどころとする作家までの多彩な顔ぶれ。なかでも特に印象に残ったのは、松井冬子と町田久美の作品。
松井冬子は、芸大大学院で日本画を専攻していて、公募展でも活躍しているという、いわば生粋の日本画家。そんな彼女が現代美術のフィールドで描くのは、幽霊画など、現代の日本画の世界ではほとんど描かれることのないモチーフ。完璧に近いテクニックと精密な線で描いた幽霊や、腹を開いて子宮を見せびらかすかのように横たわる女性の視線を観ていると、身も凍るような恐ろしさを感じた。
町田久美の作品は、雲肌麻紙に墨で線を描き、そのごく一部に顔料で彩色したもの。少しきわどいモチーフを、大胆な構図と漫画に通じるようなシャープなラインで描いた作品からは、絶妙なバランスで立ったような緊張感を感じた。大作も良かったけど、ほぼA3サイズの小品群が特に印象的だった。しかも、そのほとんどが高橋コレクションの所蔵。さすがは目のつけどころが違う。
転換期の作法
ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの現代美術
社会主義体制崩壊後、「民主化」「自由化」などの転換期にある中東欧諸国の現代アートにスポットを当てた展覧会。日本ではあまり知られていない10人と1グループの作家たちの作品を展示。
私とは価値観や感性が違いすぎるせいか、???と思うだけの作品が多かった。映像作品(ドキュメンタリーっぽいものが多い)を全部観れば3時間以上になるので、手続きをすれば1回だけ再入場できるそうだけど、とてもそこまでじっくり観ようという気にはならず、あっというまに観終わってしまった……(汗)。
そんななかでも私が気に入った作品は、赤いソファベッドに小さな穴がいくつもあって、そこから小さな声が聞こえてくるイロナ・ネーメトの《多機能な女性》と、ビニール袋に入ったカップめんがスナック菓子が勝手に動くクリシュトフ・キンテラの《もううんざり》。特に後者は、タイトルのような心境になりそうだった私を、ぐるぐる回るネギが癒してくれた。
MOTコレクション あなたのいるところ/コラージュの世界
いわゆる常設展。以前は東京都美術館から移管された作品から年代順に……といった構成だったけど、最近はテーマ別にコレクションを構成したものになっていて、以前よりも楽しめる展示になっている。
今回、最も印象に残った作品は、クリスチャン・ボルタンスキーの《死んだスイス人の資料》。ビスケット缶に貼られた630人の写真が、暗くて広い展示室に浮かび上がるのを見ていると、ホロコーストのできごとが決して歴史の本の中だけの話ではないことを実感させられるようだった。
最後に定番の宮島達男《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》でシメ。やっぱりこの作品を観ないと、MOTに来た気がしないなあ。
東京都現代美術館(最寄り駅:清澄白河or木場)にて、いずれの展覧会も3月26日まで(月曜休館)。
TBさせてもらいました。
日本画って、枠にはまった伝統芸術なイメージがありましたが、そうとも言えない時代でしょうかね。
もしかしたら同じ日にいらっしゃったかな?
個人的には、「日本画」「洋画」という枠が時代に合わなくなっているような気がします。といっても、そのようにカテゴリ分けされた展覧会自体、私はほとんど観ていないので、偉そうなことは言えないんですけど……。
日本と同じように中国には「中国画」というジャンルがあるようですが、そっちの方が遥かに将来性を感じました。良かったら1月4日の私の記事をご覧下さい。東京にも巡回するようです。
当日はニアミスだったようですね。
2年位前から追いかけているんですか!
すごいです。
私は、『美術手帖』2005年5月号で初めて松井さんのことを知りました。
ブログには書きそびれましたが、成山画廊での個展も良かったです。
最近は、週刊誌などでも取り上げられて、人気急上昇中ですね。
MOTのサイトで、作品について語っているお声を聞きましたが、頭の回転も速そうな感じでした。
こちらにもコメントさせていただきます。
この展覧会既に2回ほど行ったのですが
行けば行くほどそれぞれの作家さんに
興味がわいてきてハマっていきます。
もう一回は必ず行くつもりでいます。
2回行かれたうえに、3回目も計画されているとはスゴイです。
日本画もこれから面白くなりそうですね。
MOTアニュアルを見に行ったのですが、ボルタンスキーの大作に出会い感激しました。
宮島達男のデジタルカウンターは、はずせないですね。
ボルタンスキー、素晴らしかったですね。
あの部屋だけ、空気の重さが違いました。
この作品のために、隣の展示室の照明が工夫してあったのも良かったです。
宮島達男さんは、谷中で新作が見られますよ。
良かったらぜひ。
現代アート好きの人のブログを見つけるには、
作家さんの名前でブログ検索するといいですよ。
お試しください。