(08/01) Cosmiques小屋(01:52)-(03:58)Mont Blanc du Tacul山頂-(09:26)Mont Blanc山頂(09:51)-(12:30)Goûter小屋-Tête Rousse小屋(15:10)-Nid d'Aigle駅(16:50)
少しうとうとした程度で0時半を迎えてしまった。0:45頃に食堂に下りていって朝食。パン4切れ、ジャム、チーズ、丼一杯のコーヒー(予約時に紅茶/コーヒー/チョコレートから選ぶ)と、お代わり自由のオレンジジュース。適当に席に着いてそそくさと済ませ、籠に入っていた自分のテルモスを受け取って部屋に戻る。装備を整えてから下駄箱で靴、スパッツを履く。この時、既に暑すぎて、薄手ダウンを脱ぐことにした。
(靴置き場で準備)
(小屋前でアイゼン履いて出発)
2時前に小屋を出てMont Blanc du Tacul方面を見ると、既にヘッ電の列が登っている。ダブルストックでトレースを追って行くと、相部屋のオーストリア3人Pに追いついた。呼吸はまだ問題ないけれど、無理をせずゆっくりペースに付いて行く。Col du Midiの平地から登りに転ずる手前でストックを仕舞ってピッケルに持ち替える。これは結構正解で、斜度が増してきたところで他のパーティーがストックを仕舞っている箇所で抜かすことが出来た。
(Col du Midiを抜けて登りに転ずる)
Mont Blanc du Taculの西尾根に乗ったところで、トレースは広い尾根を追うものと、右手に切れて行くものに分かれた。尾根を暫く追って気が付いたのは、Mont Blancへの最短ルートのMont Mauditへのコルは右手で、尾根を真っ直ぐ上がって行くとMont Blanc du Taculの山頂へのルートだった。CT的に余裕があったのと、稼いだ標高が勿体無かったので、Taculの山頂は踏むことにする。
山頂直下の簡単な岩場を処理して十字架のあるピークに到着。
(Mont Blanc du Tacul山頂)
Col du Mont Mauditまでは下りなので楽。そこからの登り返しで、Taculまでで一度抜いたパーティーを抜かせて貰う。締まった雪のトレースはしっかりしているけれど、トラバースの箇所などでは雪崩たらやだなと思った。
で、そんなトラバースの一つを越えた先で渋滞ポイントがあり、どうやらここが核心らしい。急な斜度(ガイドブックによると50-55°)を稜線まで詰めるところで、上でフォローのビレイをしているパーティーや、フィックスを張って数人が連なって登っているパーティーが居た。フィックスロープはあったけれど、殆ど埋まっていて使い物にはならなかった。
(トラバースを通過して急斜面に向かう)
(渋滞待ち)
15分くらい待ってからQuarkとピッケルの二本持ちにして取り付いてみると、既にステップは出来ているしアックスはバスバス効くしで問題無し。ビレイポイントの渋滞を右からかわすところだけ岩稜にピックを引っ掛けるようなことをして、最後は小さい雪庇を切り崩した跡を抜けた。
(雪庇を抜けて下を見る)
そして目の前にはMont Blanc。
(Mont Blancが姿を現した)
(Mont Mauditに寄る気力は既に無し)
左手にMont Mauditが見えるけれど、既にここまでの登りで息苦しくなって来たので、淡白に山頂は諦める。斜め下にトラバースしてMont Blancに向かうことに。太陽が上がって来てルートが赤く染まって来た。目の前にはたおやかな山頂があるのみでもう滑落の心配があるようなところはなさそうなんだけど、ここからが低酸素との戦いだった。
まだ500m以上も登らなければならない。100mでも高度を稼ぐのが辛く、休憩をこまめに入れて水を飲む。出発で一緒だったオーストリア3人Pや、ここで団子になった他のパーティーとお互いに励ましあって山頂を目指す。ちょっと歩いては、ダブルストックに寄りかかって頭を胸より下げて深呼吸。眩暈が収まらなければ座って休憩。時間的には追われていなかったのが救いだった。
(なんなんだ、この辛さは!)
(あとほんの少し、でも辛い)
ほうほうの体で山頂に到着。感激というより、もう高度を上げなくて良いのが嬉しかった。
(来たルートをバックに)
オーストリア3人Pが上がってくるのを待って握手。往路を戻る彼らと別れてGoûter稜の下降に入る。
綺麗な稜線上のルートには幅の広いトレースが出来ており、これを快適に下る。下りのなんと楽なことか。Goûter小屋手前で少しの登り返しがあり、ほんの僅かでも高度を上げることがまだまだ辛い。
(Goûter稜の下降)
(なかなかに幅広のトレース)
(Goûter小屋は新しいのを建造中)
Goûter小屋でアイゼンを外して岩稜の下降に入ると、雪はまだ残っており登ってくる人はアイゼンを付けている。残置ワイヤーに体を預けながら下って居るときに、登ってくるガイドからアイゼンが無いと難しいと言われ、安定しているところでアイゼンを履きなおす。登りのパーティーの通過を待っていると下りのガイドパーティーが抜いて来たが、この客が遅いので抜き返し、逃げるように下った。
(Tête Rousseまで雪)
(Grand Couloirもこの通り)
Grand Couloirは雪で埋もれていて心配した落石は無かった。アイゼンのまま、バケツトレースを通過した。Tête Rousse小屋までは雪。ここから尾根筋で始まる下山道には雪は無いのでアイゼンを外す。痛い足の裏を庇いながら、殺風景な中を鉄道駅まで下山した。
(足首に来る下山路、ibexが唯一の癒し系)
Bellvueでケーブルに乗り換え、バスでChamonixに帰幕。
【装備】
- 衣類: 長袖厚手シャツ、薄手フリース、ヤッケ、厚手股引、フリースズボン、オーバーズボン。予備で薄手ダウン。自分の厳冬期装備からフリースを薄くしたものになる。無風快晴だったので、行動開始からフリースとヤッケのフロントジッパーは開けたまま。常に行動しているので寒さは感じなかった。
- 靴: La Sportivaの厳冬期用Nepal EVO GTX。軽い夏靴のTrangoにしようか迷ったけれど、寒いと困るのでこちらに。実際、Trangoで登っている人はかなり居たし、Gouterからの登りに至ってはもっと軽量の靴も居た。Midiからのルートの場合、短くても蹴り込むところがあったので、厳冬期用靴の方が安心かと思う。
- アックス: Quarkと縦走用ストレートシャフト。今回の条件だと縦走用一本でも良かったかも知れないけれど、Quarkがあると安心。また、クレバスに落ちたときのリカバリーにも2本あったほうが良いとのこと。
- アイゼン: Petzl CharletのVasak。氷はないからこれで十分。
- その他: 知人から、レスキューの際に困るから、ロープは無くてもハーネスは履いていけと言われた。それに加え、セルフが取れるようにスリングx3、環付きx2、ATCガイドを念のため。
なにしろ天気待ちの山だった。到着時からほぼ2週間、ガイド協会からはずっと雪崩の心配を言われ続け、ルートの状況を尋ねるたびに "Bad.","Forget about it." のネガティブな回答しか得られなかった。その間、テン場で知り合ったパーティーでGoûterから登頂した人も居たけれど、時間に余裕があったので当初予定のルートで天候を待つという選択をした。
結局、計画段階からトレース泥棒に終始したわけだけれど、では自分(達)でトレースがないところに初見で行けるかというと、まずルートファインディングで躓いていただろう。馴れない山域での地形図読み、斜面や広くて丸い尾根に取るルートなど、クレバスを避けるとかいう以前に日本で勉強して来てねと言われているようだった。