後立山のバリエーション入門ルート、杓子岳の双子尾根に行ってきた。山岳会の同期のドギーと一緒。
(樺平から)
【日程】2008/04/12-13
【行程】
(4/12)二股(08:34)->(9:54)猿倉->(11:59)小日向のコル手前->(14:59)樺平手前の肩 快晴無風
(4/13)樺平手前の肩(06:20)->(07:22)最初の岩峰->(09:09)杓子岳->(10:06)丸山手前の鞍部(10:27)->(13:16)猿倉->(14:23)二股 曇り無風、杓子岳の山頂で風
【メンバー】L.ドギー、Gil
(4/12) 直前に車のバッテリー上がりが発生して出鼻を挫かれたが、土曜日の朝は道の駅で仮眠の後、無事に二股の駐車場に7時半に到着した。小雨がパラつくのを嫌って車内で二度寝してから出発、の前にビーコンチェック - 今回はドギーの指示でビーコン装備。
除雪された舗装路は猿倉の駐車場の手前まで続き、猿倉の積雪は1.2m程度だった。小屋の左手に周ると直ぐに白馬尻への踏み跡と分かれて双子尾根を登る新しい足跡が付いていた。スノーシューの跡と登山靴の跡が先行していたが登山靴は途中で右に逸れていってしまった。尾根は広くなりガスっていたらルーファイがちょっと嫌な感じ。今日は青空でなんとも長閑なもの、目の前にこれから登る双子尾根を眺め、あれが杓子尾根とのJPかなとか地形図と照らし合わせて確認する。
(画面左から上がってゆく)
沢に向かっていたのを小日向のコルの方向、左に進路を変えるあたりから足の潜りが気になりだす。今回は主に僕の判断でワカンはクルマに残置してきた。稜線に上がりさえすればラッセルにならないだろうし、核心では荷物を軽くしておきたい。同行のドギーはあまり山に来られなく、また雪山経験を積んで来た北海道では殆どスキーでの移動とのことでラッセルに慣れない様子だった。僕は、まぁここ4ヶ月は記録の通りなわけでザクザクと先頭を行かせて貰う。風も無くとにかく暑い。
小日向のコルからはスノーシューが小日向山に向かっていったが、双子尾根にはショートスキーのトラックが延びていた。傾斜も大したことはなく氷化もしていないので壷足で踏み跡を付けてゆく。
途中、ボコボコと岩が露出していて、結構立った取り付きから直登すれば潅木を漕いで行かなければならない箇所があった。先頭の僕が一瞬立ち止まりドギーに「どうする?」と聞かれたが、右に巻いたスキーのトレースを追うことにした。二本あるトラックのうち谷側は流れるが尾根側に足を置いていけば大分安定している。しかし進むに連れて尾根側に小さなシュルンドが幾つもバックリと割れた下を通過しなければならなくなり、これは失敗だった。危険なので越えられそうなシュルンドを潅木を使ったり慎重に雪を固めたりして尾根に戻る。
この後は危険箇所も無く、ただただ稜線漫歩を満喫した...と言いたいのだけれど、途中で僕が眠くなって来てしまった。幕営予定地の樺平は直ぐの筈だけれども注意力が落ちると危険なので5分程しっかりと睡眠を取らせて貰い、チョコレートを補給して復活。時間的にもう到着だろうと信じて小さな肩に登ると、果たして目の前になんとも平和な雪原が広がっていた。写真で見た樺の木の下には先行したショートスキー組が既にテントを張っていた。この木のあたりは雪崩が直撃しそうなので、僕たちは雪原に降りる手前を掘ってテントを張った。
(樺平 - テント張りたくなるよね)
あまりに眺めが良いので水作りは外宴会しながらとなる。ドギーは高所障害なのか具合があまりよくないのと、普段からあまり大酒は飲まないので僕は一人で勝手に飲んでいる。今日は菊水の1L缶なので残すわけには行かないのだ。
(メガ菊水で宴会)
(4/13) 3:30起床。ドギーの具合は相変わらずでボーっとしているが頭痛薬でなんとかしたようだ。朝飯に失敗して塩辛くしてしまったのが悲しい。ハーネス、ヘルメット、アイゼンを着けてショートスキー組に遅れて出発。樺平からののっぺりした登りは遠目には良くわからなかったが以外にも傾斜があり疲れる。ここでフクラハギを消耗してはいけないので、爪先を開いて極力フラットに足を置くようにする。下が延々と落ちている雪面の登りは、朝の雪が固くてアイゼンは良く効いて不安は無い。
(朝から疲れる)
ドギーは杓子沢を上がってくる登攀Pを見て「変態やなー」と言っているけれど、僕らは変人で留まっていられるいられるだろうか。
長い登りに飽きてきた頃に核心と言われている岩場に到着した。先行Pは右にトラバースして行ったようだが、面白そうなので岩場を直登してみることにした。這松で支点を取ることが出来るが、難しそうでなかったのでロープは出さず。残置ロープも必要なく這松の枝や岩角を掴んで登れる。ただし岩がボロボロなので剥がれや落石には気を遣った。岩場を抜けると肩幅より狭いようなカリッカリに痩せた尾根になっており、長さにして3mくらいしかないのだけれどもとても緊張し小さい歩幅で進んだ。風があったらやだな。
(最初の岩峰 - 左の木の直ぐ上あたりが取り付き)
(最初の岩峰 - 上から)
その先もまた登り続け、さっきより傾斜は無いがちょっと長い岩場に到着。取り付きは安定していてやはり潅木を掘れば支点を取れそう。しかし岩が完全には出ていなくて、また草付きのように見えて嫌らしい。右にちょっと巻いているトレースからは直ぐに稜線に上がれそうなのでこっちを選択した。岩に当たるかなと思ったアイゼンはそんなに悪くは無く、ピッケルの刺さりも良くて快適。
(右のバンド状を進んでからリッジに上がった)
あとは面倒くさそうなところはなさそう。登り始めるとただただ長く、腰を下ろせる休憩適地が見つからないままジャンクションピークまで歩かされた。
もう頂上はすぐそこ。最後はプチ雪壁にステップが刻まれていて先頭を行った人が羨ましい。
(頂上直下の短い雪壁)
そして稜線では期待通りに剱が迎えてくれた。風が思ったほど強くなく助かる。
ショートスキー組は白馬鑓のほうに南下したようで、ここからは僕たちだけ。稜上は雪も少なくカリカリになっている。登りではずっと先行した僕だけれども、相変わらず下りでは遅れる。仮面ライダーと違い力の一号・技の二号といったところか。そして間近に見る大雪渓、というより上部の小雪渓の傾斜にだんだん恐怖心が出てきた。
計画では白馬岳に登頂後に下山であった。ドギーの判断で雪渓の下りは小雪渓よりもこちら側が良かろうとのことで、杓子岳-白馬岳間の最低鞍部にザックをデポして白馬に向かう。こっちは下りでビビりが入ると時間が読めなくなるのでなるべくならパスしたいのだが、ドギーは白馬に登るという。それとなく「剱に雲掛かってきたよ、天気崩れるよ」と言って見たりするがリーダーは歩行を止めない。でも丸山の頂上に着く前に昨日からの自分の体調が心配になったようで中止を決定。
(白馬、マジで行くの?)
一瞬ほっとするが、これから雪渓の大下り。コケたらすごい速度で下山できるだろうが試したくない。ジグザグに切ってあるトレースに沿って歩くと若干横滑りする感覚が気持ち悪く、傾斜の緩むところではいっそ谷側に向いたほうが安定する。遅れに遅れて休憩しているドギーのところに到着し、デブリ帯からは傾斜も緩くて大股でザクザク進める。
(長い大雪渓 - 小雪渓と山荘は左側)
白馬尻から違うトレースに引っ張られて迷う場面があったが、ほどなく夏道に復帰して猿倉、そして二股に帰ってきた。猿倉までクルマで入れるGWの記録が多いけれど、静かな山行が楽しめるならば車道歩きも我慢出来る。次の狙いは白馬主稜、見た目にも美しい稜線はGWを避けて来たい。
最後の核心と踏んでいたクルマのエンジンも掛かり、無事に帰路に着いた。
装備について:
事前にネットで調べるとロープを持って行ったけれど使わなかったというのが多い。
中間支点も取れないだろうからヌンチャクも要らないだろうし、ロープ切断を起こす岩角や長い懸垂も無いようだからロープも一本で良いかなぁと思っていたのだけれど、慎重派のドギーはロープは二本、ヌンチャクは各自3本装備で計画を立てた。もっとシビアな状況を考えたらこれくらい持たなければということと、今回のパートナー(僕)は重くても文句言わないとの考えが働いたと言っていた。自分が次にこのルートを計画するとしたら、ロープ50m一本、環付きx3、確保・下降器、スリングx3、デイジーチェイン、ヌンチャクは予備で一本かな。
ワカンについては、ドギーはあれば良かったと思ったようだが僕は持って行かなくて正解。
今回は象足(=忘れた)とリッジレストも持たず。風がなかったことがあるのかもしれないが、リッジレストがなくても寝付きは良かった。しかし明け方に目を覚ましてからは背中が寒くて眠れなかったので、次回はちゃんとザックを敷こう。今回は持ってきたけれど敢えて使わなかったダウンはGWも必要かも。いずれにせよあのデカいマット省略の目処は立った。象足は湿った雪なら要らないかな。