池袋犬儒派

自称「賢者の樽」から池袋・目白・練馬界隈をうろつくフーテン上がり昭和男の記録

夢と人格

2021-06-13 06:05:10 | 日記
「流れだよ。たまたま君のところにしわ寄せがいったということだ」
「偶然だと言いたいのか?」
「流れでそうなっただけだよ。君の評価が低いという話は聞いたことがない。何度も言うようだが、年齢が最も重要なポイントだ」
「ロートルのくせに高い給料をもらっているというわけか」
「頼むから興奮しないでくれ。オレのつらい立場もわかってくれよ。オレだって、こんなことを話しているが、いつ首が飛ぶかわかったもんじゃない」
 話は一時間以上も続いた。赤城原は、途中で何度も激高した。今まで腹の中にためてあった不満を大川にぶちまけた。大川は、すべての状況を予測し尽くしてきたかのように、のらりくらりと話をかわしていった。
 最後になると、さすがに赤城原は疲れてきた。(もう、どうなってもいい)そんな考えがちらちらした。
「あまりに突然で残酷な仕打ちだ」
「会社は非情なものさ」
「なぜ歳をとっているのが悪いのだ。これまで積み上げてきた知識や経験は、会社には不要なのか?」
「そうは思わない。でも、もしこんな早期退職の話が、子供が生まれたての若い社員に行ってみろ。家族で路頭に迷うことになる。我々の世代なら、定年が少し早く来たと思うこともできる。だから、若い連中のためにも、ぜひ今回の話を受けてほしいんだ」
「オレだって路頭に迷うさ。今の今まで、会社を辞めるなんて考えもしなかったのだから」
「オレも必死で抵抗したさ。関係会社に重役待遇で移ってもらったら、とね」大川は椅子の背に身体をあずけ、大きなため息をついた。「でも社長に反対された。関係会社は全部プロパーが育ってきているから、外様が来るのを嫌がっているらしい」
「…」

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