それは木造の古い教会だった。
扉はすでに壊されているが、その上の漆喰に、エンジ色のペンキで描かれた十字がはっきりと見て取れる。
中に入ると、こじんまりとした集会堂の机や椅子は運び出され、祭壇も空っぽだ。あとは外壁を取り壊すだけの状態だった。
祭壇の左横は、牧師の控室と思われる部屋に通じていた。ここも扉はすでに撤去されており、素通しだ。
忍び足で歩いているつもりだが、古い床板はミシミシと音を立てる。
その控室らしい空間に近寄ってみる。何もないのだが、一角にカーテンがぶら下がっていた。そのカーテンをあけると、地下に向かう階段が見えた。
破れたガラス窓からは、ひっそりとした光しか入ってこないので、階段は暗い。
慎重に下りていくと、すぐに足が床についた。
わずか六段か七段程度の階段だった。