池袋犬儒派

自称「賢者の樽」から池袋・目白・練馬界隈をうろつく老人の日常

空間の歴史(4)

2024-03-21 16:28:23 | 日記

それは木造の古い教会だった。

扉はすでに壊されているが、その上の漆喰に、エンジ色のペンキで描かれた十字がはっきりと見て取れる。

中に入ると、こじんまりとした集会堂の机や椅子は運び出され、祭壇も空っぽだ。あとは外壁を取り壊すだけの状態だった。

祭壇の左横は、牧師の控室と思われる部屋に通じていた。ここも扉はすでに撤去されており、素通しだ。

忍び足で歩いているつもりだが、古い床板はミシミシと音を立てる。

その控室らしい空間に近寄ってみる。何もないのだが、一角にカーテンがぶら下がっていた。そのカーテンをあけると、地下に向かう階段が見えた。

破れたガラス窓からは、ひっそりとした光しか入ってこないので、階段は暗い。

慎重に下りていくと、すぐに足が床についた。

わずか六段か七段程度の階段だった。

コメント
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