池袋犬儒派

自称「賢者の樽」から池袋・目白・練馬界隈をうろつく老人の日常

空間の歴史(2)

2024-03-19 17:22:24 | 日記

ある日、西口商店街の細い裏道で、落ちていたレジ袋の中身を探っているところを、通行人からとがめられ、口答えしたことで喧嘩となった。いや、実際には、通行人が何を言いたかったのか、私が何を言い返したのか、よくわからない。栄養失調のせいか、耳はよく聞こえなかったし、頭も回らなくなっていたからだ。

相手と言い合いをしている最中に、向こうで声がした。何故だかよく分からないのだが、その声が自分のものであるような錯覚におそわれた。そちらに目をやると、誰かが私の方へ向かって走ってくるのが見えた。

私は反射的に身を翻し、走り出した。どうしてそんなことをしたのかも、よくわからない。頭が混乱していたのだろう。

あふれかえるような人混みの中を縫いながら逃げた。雑多な話し声や音楽が耳にビシビシと当たってきた。

どのくらい走ったか、自分でもわからない。街の様子が、まるで違っていることに気がついた。声も音楽も消えていた。それどころか、周囲に歩行者が誰もいないのだ。私を肩で息をしながら立ち止まり、そろりと四方へ目をやった。。

商店街を抜けて住宅街に足を踏み入れてしまったようだった。

コメント
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