あれほど奇矯な行動をする女だったし、そもそも子供を産みことさえためらっていたのだから、息子が幸せな境遇で育ったとは考えにくい。もっと徹底的に探して子供を取り戻すべきだった。どうしてそのことを考えつかなかったのか。私は後悔した。
しかし、今更調べようにもあまりに時間が経っているし痕跡が少なすぎる。実家の住所も電話番号も虚偽であったのだから。どうしたらいいだろう……そんなことを考えていて、私と妻との関係が母親と実父との関係と同じであることに気がついた。どちらも入籍せず公的な文書が残っていない。そうだ、以前に実父を探した時に使った調査会社に相談してみたらどうだろう……そう思った。
翌週、外出時にその調査会社を訪ねた。当時私を担当してくれた調査員がまだ働いており、私の話を聞いてのち、彼は大きく頷いて落ち着いた声で言った。
「名前と卒業した大学が嘘でなければ、ある程度までは調べられると思いますよ。その点はいかがですか?」
「それは嘘ではないと思います。卒業証書を見たことがありますから」
「それはよかった。前回のお父上のときは関係者の多くが他界されていましたから難航しましたが、今回はけっこうスムーズに運ぶんじゃないですかね。まあ、私からあまり楽観的なことは言うべきじゃありませんが」
調査員からは一週間後に電話で経過報告があった。
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