沈黙の春

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「関西首長のエゴ」が大飯再稼働を遅らせたby 田原総一朗

2012-06-28 09:37:11 | 原発関連

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120613/312351/

関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の再稼働が近々決定される見通しだが、私は大飯原発再稼働の決定は6月4日に下されると思っていた。これまでの民主党幹部への取材でそう確信を得ていたからだ。

 しかし結局、野田政権の「決められない政治」によってこの問題も決断が先延ばしにされたのである。その背景にあったのは関西首長のエゴイズムである。

目下の問題と将来の問題を混同している

 大飯原発の再稼働問題は、将来原発をどうするかという問題とは関係がない。今後、風力や太陽光、地熱などを利用した自然エネルギーを増やし、原発に代わる十分なエネルギーを確保できるのなら「原発ゼロ」には賛成である。

 ところが大飯原発再稼動は将来のエネルギー政策の問題ではなく、今年、来年の切迫した問題なのである。多くのメディアは再稼働問題と将来のエネルギー問題をごっちゃまぜにして論じている。

 政府は、今年の夏、関電管内の電力が15%足りなくなると試算した。もし再稼動がなければ、関電管内では確実に計画停電を行わざるを得ない。一般の生活はもちろんのこと、企業は大きなダメージを受け経済活動は停滞する。それを避けるためにも、私は大飯原発を再稼動すべきだと考えている。

Next:「電力を使ってやる」と言わんばかりの態度に西...

4月14日、枝野幸男経済産業相は福井県へ行って西川一誠知事と会談し、大飯原発の安全性が確認できたとして再稼動への理解を求めた。西川知事はその説明に納得し理解を示した。この時点では、遅くとも6月4日に再稼働を決定できると民主党幹部は考えていた。

 しかし、それがなぜ延びたのか。西川知事がその後、激しく怒り、態度を硬化させたからだ。橋下徹大阪市長、山田啓二京都府知事、嘉田由紀子滋賀県知事らが「夏の暑い間だけは再稼動を認める」としたためである。

 西川知事にしてみれば、「我々は関西が電力不足で大変困るから、それを助けるために再稼働を認めようとしている。それなのに関西の市長や県知事たちはエゴイズムの固まりだ。夏の暑い間だけ再稼働を認めてやるとは何事か」ということだろう。

 まるで「電力を使ってやる」と言わんばかりの関西の首長たちの態度に西川知事は怒り、「それなら再稼動は止めだ」となった。関西は再稼働に感謝し「ありがとうございます」と言うべきところなのに、「何を勝手なことを言っているのか」と怒ったのである。

Next:怒りを増幅させた枝野経産相の発言

もう一つ、西川知事の怒りを買った発言がある。枝野経産相の次のような言葉である。「再稼働はすべきだが、将来の原発については、再生可能エネルギーを開発し、原発を限りなくゼロに近づけるべきだ」

 「将来、大飯原発をなくすと言っているのか。それでは大阪市や京都府、滋賀県の主張と似たり寄ったりだ。そんないい加減なことなら再稼働はしない」と西川知事の怒りを買ってしまったのである。

 これで困ったのは民主党政権だが、それ以上に困惑したのが関西の首長たちである。再稼働がなければ関電管内は確実に大幅な電力不足に陥るからだ。

 そこで、橋下市長は「夏の間だけ、期間限定の再稼働を認める」と言ったのである。原子力規制の新組織ができていないため、暫定的な安全基準に基づく暫定的な判断だから「期間限定」という理屈である。

 それに対し、西川知事は再び「何を手前勝手なことを言っているのか」と怒りをあらわにした。

Next:野田首相がようやく表明した「私の判断」

 

期待外れの事故調査委員会

 今や国民の7割以上が「脱原発」と言われる。だから、メディアは「再稼働が必要だ」とは国民が怖くて言えないのだ。朝日新聞や毎日新聞、東京新聞は「原発反対」「再稼働反対」の立場である。そう主張するのが無難であり、どこからも批判は来ない。

 むしろ困惑しているのは日本経済新聞ではないか。日経新聞はものごとを現実的に報道する新聞なので、原発再稼働の必要性はよくわかっているはずだ。しかし「再稼働が必要だ」と正面から主張すれば、おそらく批判が強くなる。だから困惑しているのではないか。日経新聞の困惑は、実は国民の気持ちを表しているのだと思う。

 最後にもう一つ言いたいことがある。原発事故調査員会が期待外れなことである。

 国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)が菅直人元首相や東電の清水正孝元社長らを招致して原発事故の検証を進めている。また、政府の事故調査・検証委員会(畑村委員会)が昨年12月に中間報告を提出し、この夏ごろをめどに最終報告書をまとめる予定だ。

Next:政府と国の事故調は国民の期待に応えていない



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