2012年05月25日
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橋元慶男さん |
高座で落語を披露する橋元慶男さん=本人提供 |
◆元大学教授の橋元さん提唱
学級崩壊したクラスでは、先生も子どももイライラ状態の「笑い欠乏症」だった。教員を志す約2千人の学生に笑いの効用を説いた元大学教授がいる。蓄積してきたカウンセリングの事例から見えてきたものとは――。
◆学校に家庭に「福」運ぶ
岐阜市の岐阜聖徳学園大学で今年3月まで教育学部の教授だった橋元慶男(けい・お)さん(72)。臨床心理学が専門で、長年、不登校児童を対象に「笑い療法」を実践してきた。
「こんにちはー、ははは」「アロハー、ははは」。万歳のポーズをした子どもたちが、互いの目を見ながら声に出して笑う。1カ月も繰り返すと表情が豊かになり、学校に通えるようになったという。
なぜ笑いなのか。1日に笑う回数は、赤ちゃんは400回以上だが、大人になると15回以下という統計がある。笑いはもともと遺伝子の中に入っているが、感情を抑圧するうちに回数が減り、心身の健康を害する人も出てきたと考えた。
だから、大学の講義でも笑いを欠かさなかった。学生の集中力が切れたと感じると、「しばらくの間、お付き合い願います」。落語家になって机の上に正座して小話を始める。
間が悪く、学生の携帯電話が鳴ったことがあった。普通なら怒りそうなところ、橋元さんは「携帯とかけて、いまどきの中学生とときます」と謎解きに。間を置き、「その心は、時々切れます」。学生からどっと笑いが起きた。
退職後も企業や団体で毎週のように講演する。「帰宅して開口一番、なんて言いますか?」。
男性が多い会場では決まって尋ねる。たいてい「あー、疲れた」。橋元さんが勧めるのは、自宅のドアノブを握って「ははは」と笑ってから中に入ることだ。「笑って帰ったら妻や子どもの機嫌も良くなる。初めは作り笑いでもいいから」
昨年末には東日本大震災の爪痕が残る宮城県の石巻市と女川町の計6カ所に呼ばれて、小話を披露した。参加した女性から「被災後、初めて声を出して笑いました」と言われた。今夏も訪問するという。
笑いを総合的に科学する「日本笑い学会」(1994年設立)の理事を務める。近いうちに県内にも支部を作ろうと思っている。(志村英司)
◆来月、寄席出演
橋元さんが「寺子家志笑(てら・こ・や・し・しょう)」として高座に上がる寄席が6月15日午後6時、岐阜市柳ケ瀬通2丁目の「柳ケ瀬あい愛ステーション」である。同大出身で落語家の柳家花(はな)いちさん(29)も出演する。入場無料。問い合わせは同大学生課(058・278・4189)。