水に浮かび物思う

カリフォルニアの海でカヤックに出会う。キャンプやハイキングの話も。

サンフランシス再訪 三日目 後半

2009年07月08日 | 旅行

Sea Kayaker
すでにこの二日間で、この借り物のコンドミニアムの中でぼくは自分の居場所を見つけた。中が収納になっている、窓際の備え付けのカウチ。分厚いクッションを背中にあてると、霧にやさしく包まれたサンフランシスコ・ベイの景色がちょうど眼下に見えてリラックスできるのである。

ぼくは窓のさんの部分にワイングラスを置き、REIで久々にかった雑誌「Sea Kayaker」のページをめくった。そこにはFreya Hoffmeisterという女性の話が書かれた記事が載っていた。ワインと本。懐かしい景色。ぼくにとってまさに至福の時間が始まろうとしていた。しかしそれは、とてもリラックスして読めるシロモノではなかったのだ。

フレヤはオーストラリア一周の遠征の最中だ。既に70日が経過していて、トータルで3300kmほど漕いでいるという。驚くべきは漕ぎ日の一日の平均移動距離が54kmもあるという。これはかのポール・カフィンが漕いだときに匹敵するペースだという。以下、インタビュアーとの会話をかいつまんで抜粋。

*** 以下、引用。

フレヤ:昨日は80km漕いで、最高のパドリングでした。本当はもっと行けたけど、ペースを守らなくちゃね。

インタビュアー:今回はラダーをつけていますね。

フレヤ:そうです。とてもよいです。昨日は少しサーフィンができたわ。

インタビュアー:ニュージーランドとアイスランドの時はラダーはなかった?

フレヤ:そう。波の中ではジグザグに漕いでたわね。

インタビュアー:ラダーがないというのはやっぱり問題ですか?

フレヤ:それはあなたが何を「問題」といっているのかによるわ。ただAからBに速く行きたいのであれば、ラダーは必要でしょう。ポールはそれをしたかった。彼は空荷のカヤックを漕いでいた。もし私のカヤックが空荷だったら、昨日は優に100kmは行けたでしょうね。

インタビュアー:それほど速く移動するとなると、どの程度オーストリアの観光ができますか?

フレヤ:確かにあまり見てないですね。だって一日10時間から12時間くらい漕いでいるから。キャンプの準備もあるしコンピュータも開く。誰も一回のトリップで全てのことはできないでしょ?

インタビュアー:ポールと違って、女性が一人で海岸を旅するとなると、また人々の反応も違ってくるでしょうね?

フレヤ:漕いだ後は風の通りがいいシルクのドレスを着るんです。これだと見栄えがいいから("It looks nice and sexy")、私に話しかけるのは、ヒゲのポールに話かけるのとは、おそらく違うでしょうね。

インタビュアー:傷つきやすさがあるというか・・・?

フレヤ:傷つきやすさ!?なにそれッ(怒)!?"Anybody who would like to approach me in a bad way is going to have a tough time."私を怖がらせるのは昨日現われた巨大でグロテスクな蜘蛛だけよ。

インタビュアー:電気クラゲなんかは大丈夫?

フレヤ:今のところいないですね。いつもトップは何もつけずに漕いでるから、助かるわ。いつも腰にシルクを巻いているだけ。寝るときもシルク。肌にいいんです。漁船が来たときのために手元にシルクを置くようにしています。

*** 引用おわり。

と、こんな具合である。ドキドキ。いいい、一体この女性は何者なのだ!?Maud Fontenoyといい、どうしてぼくが本を開くとこう、女性離れした、いや、人間離れした女性ばかりが登場するのだろう。シーカヤッカー界のレジェンド、ポール・カフィンと比肩するばかりでなく、ブログで情報を発信し、キャンプ道具を持ち運び、しかも夜はシルクのドレスでLooking niceなのである。シーカヤッカー界のポールとジョンもびっくりである(意味ないです)。いまだかつてSea Kayaker誌に"sexy"なんていう単語が登場したことがあったであろうか?ないッ!おそらくこの25年間はあるまい。なぜ25年間かって?それは、この雑誌が創刊25周年記念号だからである。



今フレヤはゴールドコーストのあたりにいるという。ぼくはぜひとも彼女を遠くから見守りたいと思うのである。