水に浮かび物思う

カリフォルニアの海でカヤックに出会う。キャンプやハイキングの話も。

サンフランシスコ再訪 三日目 前半

2009年07月07日 | 旅行

ぼくはEよりもだいぶ早起きしてしまったようだ。寝巻きのまま、窓際の長いすに横になる。サンフランシスコも少しずつ目を覚まし始めたようだ。






そのうちにEが起き出し、ほどなくしてインターネットカフェに向かった。友人にメールをする。ニュースを見ると、インフルエンザの警戒レベルが5に上がったようだ。この休みが終わって帰国したときに何も問題がないといいが。

フト横を見ると犬と目があった(Good morning)。彼(あるいは彼女)の主人は脇に新聞をさし、オーダーしたコーヒーを待っている。衛生がカンペキに約束されている社会よりも、犬と一緒にコーヒーショップでコーヒーが飲める社会のほうが、ぼくは好きだ。もっともフナムシと一緒に寝るようなぼくが衛生のことを語るのはなにやらヘンといえばヘンなのだが。

朝食の後、サンフランシスコのパタゴニアのショップに行き、防水透湿素材("H2No"というらしい。おもしろい)のシェルを買った。150ドルくらいであった。かすかな雨の下、ぼくとEは買ったばかりのオレンジ色のシェルをかわりばんこに着て、街を散歩した。







哲学的な町
昼はバークレーへ。昔よく行ったベトナムのヌードルスープを食べる。米の麺がビーフで取ったスープに入って出てくる。薬味やホットソースをお好みで入れて、ライムをギュッっと絞って一口スープをすすればそこはもうベトナムの屋台である。これがうまいんだ、本当に。



その後は、何をするとはなしに、昔Eと住んでいた家のあたりをウロウロしたり、お土産になりそうなものを物色したりした。街を散策しているうちに気がついたことがあった。Barnes & Noblesという書店が閉店していたのである。Barnes & Noblesはいわゆる全米チェーンの大型書店である。中にはスターバックスなんかが入っていたり、椅子やカウチなんかが入っていたりして、とてもリラックスして本を選ぶことができるので、ぼくもEも好きでよく行ったものだった。それがなくなっているのである。

「きっとバークレーの人たちが反対して撤退させちゃったんだよ」とEがゆう。ぼくらがバークレーにいたころ、そんな話があったなあと思い出した。バークレーは大学町で、もともと地元の本屋さんがたくさんある町だ。いわゆる古本屋のたぐいも多くあり、その手のマニアはわざわざ遠くからバークレーまで本を物色に来る、なんてことを聞いたことがある。そこへ大手のBarnes & Noblesがやってきた。当然地元の小さな本屋さんは打撃を受ける。そこで地元の本屋さんを守るための運動が学生の間で展開されていたのだ。

「本当になくなっちゃったんだね」と、E。ぼくらはある種の感慨にふけった。情報が定かでないので本当の経緯は分からないけれど、ここバークレーなら十分あり得る話であって、この町の持つ見えない力というのを改めて感じたのだった。自治というのは本来こうゆう姿なのかな、と思う。住民たちで意見を合わせて行って交渉する。ルールを定める。住みやすい町にする。それがここでは行われている。

夕食はメキシカンレストランへ行った。食堂のような飾らない店で、ぼくもEも大好きな店である。ココアの入った少し珍しいエンチラーダを食べる。メキシコ料理にしては深い味であった。そう、ここバークレーではメキシコ料理まで哲学的になるのである。