チンチン電車

都内で唯一残った路面電車。
生まれ育った街を走る。
ぽっかり空いた時間。
仕事帰りに寄った。
両親を老人ホームに入れる為、率先して売却した実家。
ひとえに両親の介護を放棄したかったから。
長い間、罪悪感にさいなまれていたが、、、今は、あれが最善の方法だったと思っている。
当時は人手に渡った実家を、ただ見る為に寸暇を惜しんで来ていた。
その度、憎しみと悲しみに打ちひしがれていた。

その時を過ぎ、懐かしさだけが残った。

母校の中学生の制服姿が、かわいらしくも思える。

街は様変わりしたようで、あちこちに昔のままの残像を残している。

あの時、私は、確かにこの街に生きていた。