
本日紹介する作品は本ブログでも何点かの作品を紹介している明末期とされてる芙蓉手の染付大皿です。ただ高台部分で大きく窯で焼いている時点で歪んでおり、作品としてはかろうじて鑑賞ができるいわゆる「ジャンク品」のような作品です。

染付の絵の出来が良いので打ち捨てられずに世に出た作品?でしょう。歪んだ部分の裏表は膠のようなもので醜く補修されておりましたが、入手金額はそれでも7万円ほどしました。
ジャンク品? 古染付山水人物文大皿 明時代
景徳鎮窯 明 万暦年間(17世紀初期) 誂箱
作品サイズ:口径362*高台径190*高さ72

芙蓉手とは、中国明代万暦年間(1573~1620)頃に景徳鎮民窯で作られた染付磁器の文様様式のことのようです。 ちなみに芙蓉とは本来はハスのこと。 芙蓉手は蓮の花を表現しており、見込中央に大きく円窓を設け、その周囲を区切る文様構成が、大輪の芙蓉の花を連想させることから、日本では「芙蓉手」と呼ぶようになt田とのことです。

万暦中国の景徳鎮で作られていた青花磁器であり、染め付けは呉須で描かれています。花芯と各弁の中にはまた別の絵柄がそれぞれ描かれるのが特徴で、蓮花を意匠した柄は素地の白で区切られる事によって品位が高まっています。その多くが水禽などの花鳥文であるのに対して人物を描いた作品は数が少なく優品が多いとされます。

主に西欧において人気を博した輸出向けの製品とされますが、窯割れや虫喰いなどがある作品は西欧向けの輸出品というより、古染付などを好んだ日本への輸出品が多いと推定されます。自由闊達な民窯の作品が日本では珍重され、国内でも芙蓉手を模した同手の作品が生産されており、有田での産が圧倒的に多いようです。

虫喰い、砂付き高台など古染付の特徴がそのままですが、これは官窯から民窯に移行して、陶土が採掘の採算上、上層部の粗雑なものを使っているせいであろうとされています。

中国の明朝末期に景徳鎮窯で焼かれた粗雑な染付磁器。それに対する古染付の呼称は、日本で近代になってからつけられたもので、江戸時代には南京染付のなかに含められていたとされます。
古染付は2種に大別され、その一つは碗、皿、鉢などの日常食器であり、造りは薄手で、見込にはいかにも飄逸で軽妙洒脱な絵模様が描かれているのが特色です。この絵画風の文様に魅力を感じた江戸初頭の茶人が、好みの茶道具に絵付させて新味を得ようと、景徳鎮窯に水指、花生、向付、鉢、香合などの焼造を注文し、その結果つくられたのが、いま一つの粗厚で風韻のある古染付です。後者は明の天啓年間(1621~27)に優品の多くが焼造されたとされています。本作品のような大皿も古染付に分類されていますが、厳密には古染付芙蓉手としていると思われます。大皿は兜皿の形状を成すものが多いようですがサイズが小さくなるとそうでないものもあるようです。さらに高台内に銘のあるものとないものとがあるようです。

*本作品は窯割れなどを膠のようなもので補修されていますが、作陶時のままの窯割れであったと思われます。

明末の赤絵とは対を成す作品ですね。明末の呉須赤絵と同様に絵付けのいいものを評価すべきで、共に本作品のように荒々しさや粗雑さのある作品に優品が多いとされます。

この作品を入手した理由は染め付けの出来が群を抜いて良かったのとこの醜い補修を簡単になんとかできると見込んだからです。

表側の見込み部分の膠を落として当方にて簡単に金繕いしています。裏面は膠のようなものをすっかり削り落としました。

それなりに鑑賞に耐え得る作品になったように思います。

このように購入前に修理の見込みがたてられるのは自分で修理したり、修理される方の意見を聞いている経験が役に立つようです。

ジャンク品ですが芙蓉手の染付大皿としては優品。探してもこのような絵付けのよい芙蓉手は意外にないものです。よって保存箱に入れて保管しておくことにしました。この程度の大きさの重さのある作品における保存箱は五分の太めの袋真田紐の紐を使います。