夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

東京美術倶楽部鑑定書添 鯉 福田平八郎筆

2020-10-06 00:01:00 | 掛け軸
小生のワイシャツのボタンがとれた場合の修理は小学校一年の息子の仕事・・・。



面白くてやっているのでしょうが、意外にうまく、小生よりうまいかもしれません。



さて父が存命していた頃、我が家の男子誕生の際に福田豊四郎氏に描いていただいた作品のひとつに下記の「鯉」の作品があります。

鯉 福田豊四郎筆 その8
絹本着色軸装共箱二重箱軸先象牙 
全体サイズ:横725*縦1600 画サイズ:横564*縦486



上記の作品は父と母からの小生への伝世品であり、表具もかなりの上等品で私のお気に入りの作品です。ただ母から聞いたのはこの作品を観ながら父が「いい作品だが福田平八郎の鯉の作品には及ばない。」と話していたそうです。それから福田平八郎の鯉を描いた作品に注目していました。

福田平八郎が描いた鯉の作品では大正期の作品をカタログなでにはよく見かけましたが、昭和期になってから鯉を描いた作品にはなかなか縁がありませんでした。当然福田平八郎の鯉の作品には贋作があり、とくに大正期の作品は贋作が多くいようで、また出来もそれほど注目に値する作品もありません。そこで父が話した時期の昭和30年代以降の作品を探していましたが、残念ながらそれより少し前の昭和初期の頃に描いたと思われる本作品をこのたび入手いたしましたので紹介します。



鯉 福田平八郎筆
絹本着色軸装 軸先木象牙 東京美術倶楽部鑑定書添 共箱二重箱
全体サイズ:縦2200*横610 画サイズ:縦1310*横415

 

鯉は福田平八郎の重要な生涯描き続けたテーマのひとつであり、第三回帝国美術展に出品されるた作品は代表作のひとつになっています。福田平八郎の絵はとてもモダンな感覚で線もデザイン的なセンスのある線で描いています。



*1921年(大正10年)における第三回帝展に出品した「鯉」が特選となり、宮内省(現・宮内庁)が買い上げています。



本作品は下記の作品、昭和7年(1932年)の「真鯉」と同じ頃の作で、印章も同一印章です。

昭和7年(1932年)「真鯉」 京都国立近代美術館蔵 横722*縦553



父が福田平八郎の鯉の鯉の作品を高く評価した頃に描いた作品には下記の作品があります。

昭和29年1954年作 「鯉」 第10回日展出品作 リッカー美術館蔵 横1292*縦968



この作品については福田平八郎の述懐の記事があります。

「近年の私の表現方法からは、鯉を描くのは難しかったので、長い間描きませんでした。久しぶりにこの鯉(「鯉」1954年作)を描いた見ましたが、初めから終わりまで苦しんで描きました。二尾の鯉を右と左に向けた双鯉ですが、漢時代の銅器のようなところに狙いを持っていたので、少々堅かったようですが、私には良い勉強になりました。この形に上に苦労したことを思い出します。」(「三彩」 昭和33年4月臨時増刊より)

本日紹介する作品は東京美術倶楽部の鑑定書があり、令和元年(2019年)9月9日の日付があります。また表具は春雅堂製(京表装有限会社春雅堂)で当方で探している作品の上村松園筆の「清少納言」と同じ表具先です。なお箱書は落款の書体から昭和30年頃かもしれません。

 

この頃は盛んに愛好家らが日本画を蒐集した頃で誂えがしっかりしています。



前述のように本作品の作品中の印章は、昭和7年(1932年)の「真鯉」と同一印章です。

  

この昭和7年頃から福田平八郎の作風は写実的な画風から、よりデフォルメされた画風となるため述懐のように鯉を題材にした作品はしばらく描かなかったのでしょう。



そういう見地ではこの作品は貴重なものかもしれませんね。



川端龍子、川合玉堂らの巨匠も鯉を描いていますが、福田平四郎については「福田平八郎の絵はとてもモダンな感覚で線もデザイン的なセンスのある線で描いている。」という表現があてはまるのでしょう。



父が比べた福田豊四郎と福田平八郎の鯉の作品ですが、私はどちらの作品も好きですが、願わくば福田平八郎の昭和30年代の作品と比べてみたいという願いがあります。

ここで復習として当方所蔵の他の福田平八郎の作品の写真を並べてみました。

最初に入手したのは画帳からの作品のような小作品です。昭和初期頃?

苺 福田平八郎筆 その1
紙本着色額装 誂:布タトウ+黄袋
画サイズ:横220*縦180 SM



ところで福田平八郎の号についてですが、別号に「九州」、「素仙」、「馬安」、「馬平安」というのがあります。「平」とともに昭和30年代まで用いられていますが、「馬」は父の名「馬太郎」から、「安」は母の名「安」からとったものです。「九州」は出身地そのままですね。

次は扇面の作品。昭和15年頃?

扇面竹図 福田平八郎 その2
紙本着色扇面額装 タトウ
額サイズ:185*245~545



下記の作品は掛け軸の作品を額装に改装した作品です。大正末頃?

ガザミ(ワタリ蟹) 伝福田平八郎筆 その3 
紙本水墨 軸先木製 合箱
全体サイズ:縦1280*横565 画サイズ:縦465*横435



福寿草 福田平八郎筆 その4 大正10年頃?
紙本水墨 軸先 共箱
全体サイズ:縦*横 画サイズ:縦*横(未測定)



最後は叔父が所蔵していた作品です。 昭和30年頃?

参考作品
椿 福田平八郎筆
絹本着色絹装軸 共箱
画サイズ:横507*横416



当方の作品は真贋はともかく、資金の乏しい蒐集家の血と汗の結晶・・・。

ところで本作品と同時期の作品には下記の作品があります。



思文閣のカタログ図録である「墨蹟資料目録」に掲載されている作品です。



ちなみに売価は150万円ですが、この作品については妥当な金額だと思われます。









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