夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

黄瀬戸(胆礬)蕪文銅鑼鉢

2022-03-23 00:01:00 | 陶磁器
3連休にはお雛様の店じまいです。お飾りと片付けを手伝い始めて息子は何年になるのだろう・・、小生よりも解っているようでこちらが指示される側になっています。



「どうもうまく外せないな~」雑巾を首に回した小生・・。



「どれどれかしてごらん」と頭巾をかぶった息子。



上村松園の鈴木松年修業時代の作品は今少し飾っておきますが、息子は小生の蒐集作品に未だに無関心・・・



さて本日は黄瀬戸の作品の紹介です。使い勝手の良い作品群に黄瀬戸の作品がありますが、年代の特定などに難しさがあります。



本ブログでも瀬戸絵皿をはじめとする黄瀬戸に類するような作品をはじめとしていろんな黄瀬戸の作品を紹介していますが、本日は「銅鑼鉢」というちょっと大きめの作品です。



黄瀬戸 (胆礬)蕪文銅鑼鉢
誂箱
口径265~267*高さ57



黄瀬戸は光沢の強い灰釉である古瀬戸系黄瀬戸と、しっとりと潤いのある油揚げ肌を呈する釉中に黄土を混ぜた黄瀬戸とに大別されています。

本作品は線彫りにて蕪の文様が大きく描かれている銅鑼鉢となっています。



前者(光沢の強い灰釉である古瀬戸系黄瀬戸)は当時輸入されていた青磁や白磁の皿、碗、鉢などを写す量産品に多く使用されていますが、後者(しっとりと潤いのある油揚げ肌を呈する釉中に黄土を混ぜた黄瀬戸)は端正なろくろによって成形され、形は銅鑼鉢、向付、香炉、花生など茶具で占められる高級器皿であり、草花文様をスタンプで表して、銅や鉄を点じて緑彩、褐彩してきわめて瀟洒な味わい深い雅陶につくりあげられています。



むろん桃山ならではの創意は後者によく示されており、今日の声価も高いとされます。江戸時代に入ると灰釉の系譜の主流は美濃焼では御深井(おふけ)釉へと転ずることとなります。



外側面には轆轤成型痕が顕著であり、高台内には輪トチ跡(釉形の置跡?)が残っています。高台内まで釉薬が掛かっているのが古い黄瀬戸の原則のようです。



端正なろくろによって成形されている大きめの銅鑼鉢です。



しっとりと潤いのある油揚げ肌を呈しています。



緑色の釉の胆礬釉(たんばんゆう)が景色となっていますが、裏面までは器形が厚いので通ってはいないようです。



桃山期から江戸期に作品における特徴である虹彩も見られます。



本作品と酷似している作品として下記の作品があります。むろん下記の作品は口縁に文様があるなどかなり出来の良いもので本作品とは比較にならない作品ですが・・。本作品は下記の作品も模したものかもしれません。

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参考作品 重要文化財 萬野美術館蔵?
黄瀬戸大根文輪花鉢
高さ7.4cm 口径24.8cm 底径13.8cm



菖蒲文鉢(梅沢記念館蔵)とほぼ同様の形だが見込はやや浅くなっています。見込に大根を一株あらわすという破格の着想は桃山時代ならではのものです。このことから本日紹介する作品も桃山時代から江戸期の作と推定しています。

その線彫りはのびのびとして、大根ともいえぬ風格があります。複弁の輪花にとった縁どりの箆使いはしっかりときまり、作品の姿を引き締めています。

縁の左右に花唐草と丁子唐草を線彫りし、大根の葉とともに薄く.胆礬を点じ、総体にかかった黄瀬戸釉はざんぐりと焼き上がり、いささか潤いに乏しい趣を反面詫びた趣が深くなっています。

まるく削り込まれた碁笥底式の底には釉形の置跡が残り、渋い焦げ膚を見せています。この作品はかつて益田鈍翁の愛蔵品でありました。

*黄瀬戸で大根の文様は唯一この作品のみが残存しているとのことです。ちなみに「蕪文」も数が少ないとされています。
**『日本の陶磁第三巻』にはあやめ文のほかに蕪、露草、梅、菜の花、そして花唐草などがあるとされ、菊や桜、桐など日本の伝統的紋様は少ないという記述があります。「大根」(相国寺の所蔵する黄瀬戸銅鑼鉢)は一点のみとされます。

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使い勝手の良い黄瀬戸ゆえ当方でも幾つか入手しており、本ブログにて幾つかの黄瀬戸らしき作品を紹介しています。

黄瀬戸向付 五客揃い
古杉箱入
幅90*高さ70



古黄瀬戸 彫草葉紋花口皿
合箱
最大幅240*高台径110*高さ47



黄瀬戸茶碗(向付)
箱入
口径115*高さ75



黄瀬戸茶碗
仕覆付合箱
口径100*高さ76



これら当方の作品はいかような価値のある作品かは解りませんが、緑色の釉の胆礬釉を伴う黄瀬戸は日本陶磁器ファンには使い勝手がよく外せない作品群には相違ないでしょう。息子にはまだまだ・・・


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