夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

松鶴亀図 狩野了承筆 天保8年(1837年)

2019-11-26 00:01:00 | 掛け軸
義父が亡くなって百日を過ぎましたが、家内曰く、そこで百一日詣に大山の茶湯寺へ行くのだそうです。「関東には変わった風習があるなぁ」と東北出身の小生はブツブツ言いながら、ついでに紅葉見物ということで納得し先週末に出かけてきました。



百日で仏の仲間入りをした故人が、百一日めに家族が茶湯寺に詣ると知っていれば、門前の石段で待っているそうで、似た人に会ったり声を聞いたりすることがあるそうです。往きに、246から大山入口を曲がって二の鳥居を過ぎて集落の中の道を駐車場へ向かう途中、民家の密集地で、猿が!! 車の前方を横切りました!



見ると2頭いた模様。ちょうど車を横切った2頭めが、人家のフェンスを歩くのを、家族全員が目撃しました。亡くなった義父は申年で、「猿だから顔が赤いんだよ。」などとふざけてよく言っていたものでした。似た人…ていうか、あの猿だったかー!(笑) 百一日詣に大山の茶湯寺をなめたらあかん!!



境内にはよくできたお地蔵さんもありました。お参りの後は猪の肉を満喫しました。



食後の後は登山電車(ケーブルカー)へ、義母は途中の階段で挫折・・・・。



天気は良くなかったですが、一応紅葉は楽しめました。朝からのあいにくの雨で観光客は少なく行き返りの車中も含めてのんびりとできました。



さて、本日の作品の紹介です。

それほど著名ではない江戸期の狩野派の画家が描いた作品を本ブログにて取り上げていますが、本日は狩野了承賢信の作品の紹介です。本日の作品は二作品目の紹介です。

残念ながら表具や本紙に痛みがあります。



松鶴亀図 狩野了承筆 天保8年(1837年)
絹本水墨軸装 軸先木製 誂箱
全体サイズ:縦1570*横470 画サイズ:縦840*横350



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狩野了承(かのうりょうしょう):1768~1846。享年78歳。山形県酒田市に生まれ、江戸に出て狩野派に所属した絵師。実力を認められ、狩野派の最上位である「奥絵師」4家に次ぐ15家の「表絵師」のうちの1つ、深川水場狩野家の当主となる。了承賢信という。



「将軍姫君の御用絵師として活躍」という一文がインターネット上に見受けられ、年代的には第11代~12代将軍ということになりますので、残念ながら篤姫ではないようです。推測ながら、第12代将軍家慶は第11代将軍父家斉の死後に庄内藩などに対する三方領知替えの中止を決断していますが、このことは彼の出身地酒田であることから、将軍に感謝したのではないかと思われます。



日本の題材をやわらかな線で描いたやまと絵を得意とし、他の流派との交流がきびしく禁じられた狩野派の「表絵師」にありながら、華やかでデザイン性のある琳派の影響を強く受けた絵画も制作しているとのことです。



山形県酒田市に生まれた了承は、江戸に上り、画を鍛冶橋狩野家の探信守道に学び、画才を認めた深川水場狩野家梅笑師信の養子となり、その没後家を継ぐ。



初め信川、名を賢信といい、享和二年1802年に了承と改名しています。了承は、画師の狩野探信守道が大和絵に巧みであったせいか、大和絵が多く残されており、装飾的な彼の好みは、琳派の画風を取り入れ狩野派の絵師という範疇からはかなりはみ出た画風のようです。

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「祝寿図」は松、鶴、亀などを用いて吉祥を表すことが多い。よく使われるのは松と鶴、鶴と亀の組み合わせである。例えば「松鶴延年図」「松齢鶴寿図」「亀鶴斉齢図」などは、長寿や気品の高さを表している作品です。

狩野了承賢信の作品はマイナーな画家のせいかよく分かりませんが、市場には作品は少ないように思います。ちなみに贋作はまだ見たことがありません。

狩野了承賢信の作品として当方には下記の作品があり、以前に紹介しています。

他の所蔵作品解説                      
三保の松原富嶽図   狩野了承筆
絹本水墨淡彩軸装 軸先象牙 誂箱二重箱 2013年改装 
全体サイズ:縦1362*横695 画サイズ:縦468*横670



「三保の松原富嶽図」は落款に「狩野了承行年七十六歳筆 印(「賢」「信」の朱文白方印の累印)」(下記写真右)とあり、1844年(天保15年、弘化元年)の頃の作品です。本作品は「狩野了承行年六十九歳筆 印(「藤原」の朱文白丸印)」(下記写真左)とあり、1937年(天保8年)の頃の作と推察されます。

 

狩野了承賢信は実力がありながら、現代では忘れ去られた画家と言えるでしょう。「三保の松原富嶽図」や本作品も軸先が欠損しているなど保存状態の良くない状態で入手しています。これ以上状態が悪いと作品としての価値がなくなる一歩手前という状況で、「三保の松原富嶽図」は当方にて改装して状態を回復しています。



ただ忘れ去られた画家を取り上げてくれる学芸員の方もおられ、この「三保の松原富嶽図」の作品は「富士山絵画のメインストリーム-狩野伊川院栄信・晴川院養信と百花繚乱の江戸画壇」展(2018年9月22日~11月25日)と題されて 静岡世界遺産センターで催された展覧会に出品されたこともあります。



さて本日紹介した打ち捨てられようとしていた作品、改装すべきや否や・・・ 

縁起物の図柄ゆえ、義父のように悔いのない人生をおくる願いを込めて改装しようと考えています。





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