道 (真理)

道は須臾も離るべからざるなり 離るべきは道にあらざるなり

幻想的な物語 2015年8月31日

2015-08-31 21:24:27 | 社会・経済・歴史・情報公開

8月26日に「フルフォードレポート英語版(8/24) ~秘密結社と公の権力中枢との現在の同盟の見直し」と言うレポートが掲載されました。世界の秘密結社が9月に日本に集まってこれからの世界のあり方について相談する、と言う内容です。彼らはオカルトや思想・哲学などを信奉して世界を動かしてきた組織や地域に何らかの関連があり、テロや災害を憂い新しい統治システムを立ち上げようとするようです。こういう志を煽るかのように奇しくも世界各地でテロや事故・災害が連発しています。

もう一つの動きとして、縄文八咫鳥と言う古代からの秘密結社が世界のロイヤルファミリーを主軸に世界再生プログラムを実行していて、その計画について出版物を発行して公開しています。これによるとNEW WORLD ODERは日本の縄文八咫鳥が草起しているもので、アメリカもヨーロッパもその計画の一環で変革を進めていると言う内容です。

板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」 参照

現在の極秘とされる政治状況、経済のからくり、世界的な混乱の目的などの根拠が示され、政治家が自伝を公開したり、企業がノウハウを公開するような宣伝効果を狙ったものとはまったく思えません。この書の内容は、まさに時期が来て、混乱に終止符を打ち、世界を戦争のない平和な時代に導くための現実的なマニアルであり、しかも最も重要な世界の経済と統治についての中心的な権限を持つ組織からの世界への指示に近い提案のように思えます。フルフォードさんもこの計画を奨励して重要な役割をしているようです。

スピリチュアル情報でも、まもなくイベントが起こるといったようなメッセージが流れ、イベント後の新エネルギーや宇宙科学の最先端の情報も公開され、すべてはこの日本発の改革と連動していることがわかります。また一部こうした動きに乗り遅れまいとしてメッセージを歪めたり、政治的にも過度な動きに拍車がかかっています。

政党の再編は、アメリカもヨーロッパもロシア・中国・・・なども連動して新しい統合の動きが加速し始めているように錯覚します。分かりやすい例として中国の分割自治、北朝鮮が韓国との統一について動き始めていることなどです。朝鮮問題は歴史的に日本の皇室もゆかりがあると公言している以上、ある種の高度な政治的合意の中で作業が進んでいることになります。日本の戦争責任とお詫びの問題や天皇の南方への慰霊の旅、安保と憲法改正の流れなどはこの枠の中の動きも考慮されていると考えたほうが自然に感じます。

国内は政治的反対運動で満たされ、マスコミが誇張するいつものデッキレースが行われ、国民が左・右以外考えることが出来ない状況、つまり適当な時期に一つに流れを変えることができる環境づくりが行われているように見えます。今年に入ってからこのような動きの根拠が出版物で公開され、今まで限られた情報で思考して来たマイワールドが突然大きな波に押し流され、潮が引いた後のようで空虚に感じます。

世界の金融経済や政治の混乱をこのような歴史的構造の中で改革することは、王族などその立場で収入を得ている方々の安心材料であり、金融経済の現場に携わる方々にとっては批判しながらも避けられないそういう意味では現実的なプログラムです。

しかし、私たち一般市民は不況など様々なことへの不安が先走ります。信頼に足りる暖かいメッセージが聴こえてきません。老後は安心なのか、人生を豊かにする就労プロセスはいつからはじまるとか、無償の医療や教育にについてその根拠となる改革理念など、関心ある材料は見当たらないのです。

スピリチュアル情報でもこの日本発の再生プログラムが発進されているメッセージがありますが、新しい時代が始まることに期待をかけ、人々がこのまま新時代に入るとアピールしています。チャネラーと翻訳者の感性の違いなどで揺れている傾向も見えます。

空白の時が数年過ぎて行くでしょう。また地震の後始末のように、支配の偏向が市民の心の傷として残らないよう、まず貧しい人たちが贅沢ではなくともごく普通の生活が出来るよう、病気の人が手厚い治療が受けられるよう、そして子供たちを安全に守りながら、この大きな波によってさらにたくさんの犠牲者が出ることのないようこころから願うばかりです。

お金や権力にまつわる人々が、何をなすべきか、どれだけ重いものを捨てることが出来るか、彼らにとって地球よりも黄金よりもはるかに重い課題を突きつけられているのではないでしょうか。

そしてそれは幻想的な物語のようです。

 NEW SEED 2015 ・ One Personal より転載


シンプル・ライフ~天のデザイン

2015-08-31 04:02:02 | シンプル・ライフ 

The Lord of the Rings

 

2015年8月31日

人類の秘法(道=真理)その鍵がどのように伝えられてきたのでしょうか、正しい宗教の経典にはその極意が伝承されてきましたが、時代が下るほどに異端が跋扈しその解釈は有名無実となってしまいました。

老子には元始(ゲンシ)、孔子には項屣(コウモ)、釈迦には燃燈佛(ネントウブツ)がその秘伝を法灯を伝授しました。

老子は、道徳経、第一章の中で「道可道、非常道、名可名、非常名、無名、天地之始、有名、万物之母、故常無欲、以観其妙、常有欲、以観其竅、此両者、同出而異名、同謂之玄、玄之又玄、衆妙之門、」

解釈:道というは、常にいうその道ではない。その名でもない、名が無いが、「天地の始め」であって、その名をあえて、「万物の母」という。つねに無欲である故にその妙を観る。「天地の始め」であり「万物の母」この両者は、同じ根源から出ているが、名を異にしている。これを玄(玄関)という。玄の中の玄を、あらゆるものを生み出す神秘の中の神秘、それを衆妙の門という。(衆妙の門:多くの人々に付与された命の微妙な出入り口)、玄妙不可思議なメスの陰門(ほと)は、これぞ天地を産み出す生命の根源、と解釈されています。

※  「玄関」と言う日本語の漢字は、本場中国では使われていません。仏教の経典の中にしか使わない聖なる言葉を日本語では人の出入りする「戸」のある場所、聖なる「玄関」と言う言葉を日常の中で使っています。

老子の清静経では、「大道は無形にして転地を成育し、大道は無情にして、日月を運行し、大道は無名にして万物を長養す。吾その名を知らず。強いて名付けて道という。」

 ※老子は道徳経・清静経・黄庭経の三経を遺しています。

解釈:大道は本来形象はないが、よく天を生じ、地を育てることができる。本来感情はないが日月を運行することができる。本来名称をもって表現できないが、天地間の万物を養育することができる。私自身、その名前を知らない。それで強いて道と名付けた。と伝えています。

釈迦は、弟子スプーティに「解脱に至る道(真理)は、どのような道でしょうか。」と問われ、「解脱に至る道によって解脱を得るのではない。また道でないものによって解脱を得るのではない。スプーティよ、解脱がそのまま道であり、道がそのまま解脱である。一(真理)を得ることが、その一切である。」と答えました。

また、摩訶迦葉に法灯を伝える時「吾に正法眼蔵あり、涅槃の妙心、実相無相にして微妙の法門、不立文字、教外別伝、これを摩訶迦葉に附嘱す。」【粘華微笑、玄嚢鼻直】と説き、正しい法が目の蔵(老子:谷神)にある。それは涅槃(天国)へ通じる道で、あるといえば無い、無いようである、微妙な法門である。文字を立てず(文字に表すことはない)、教えの外に別に伝える(誰にでも教えるものではないし、教えるというものでもない)、一人から一人に単伝独授するもので、これを摩訶迦葉に附嘱(一指相伝)し、その機微を顕しました。そして鼻を捻って微笑し(粘華微笑)それは鼻の玄嚢の直すぐ上である、と記しました。

達磨大師は釈迦以来の四諦句として「教外別伝・不立文字・直指人心・見性成仏」とその奥義を禅宗に遺されました。一つ一つの四字成語をよくよく観察してみて下さい。どの経典でも、これは名のつけようもなく、経典の文字をいくらあさっても解るものではないと伝えられています。

一指相伝:一を指して相伝える、直指人心:直かに人の心を指す、など似たような表現ですが、ではそれが具体的に何を意味するのかと考えると曖昧になります。つまり求めなければ得られないものの特徴です。

また、面目と言う言葉は、顔面の目と言う意味であり、すなわち「大元である」という意味ですが、熟語には「面目一如」一の如く、「面目一新」一に新(親)しむ、「面目躍如」躍する如く、「一」に関することでそれによって改まること飛躍(脱皮)するとは…、このように日常の様々な言葉の中に「道:真理」は隠されています。

この「道」は、無形無相、無声無臭で、見ることも聞くことも嗅ぐことも触れることもできません。これが道の実体です。

イエスは、「わたしは道であり、真理であり、命である。だれも私(道)によらないでは、父のみもとにゆくことはできない。」 (ヨハネ伝第14章)と言いました。

※    イエスの墓が青森県三戸郡新郷村大字戸来にありますが、地名の「三戸」「戸来」あるいは「戸来人」などの「戸」の由来について論語の中で次のように解釈しています。

雍也第六:子曰誰能出不由戸何莫由斯道也

解釈:子曰く、誰か能く出づるに戸に由らざる。何ぞ斯の道に由ること莫からむ

真理を得ていない場合はこのように教訓的な解釈になります。

「誰か外に出るに戸によらないものはない、どうして、(生きるに)この道によらないことがなかろうか。普通戸の無いところから出入りすることはなく、人は、無意識的に戸を用いる。道路も、無意識的にそこを通るが、もとからあったものでなく、人々が往来するから道路となったものである。道路には通る人々により、悪しき所に通じるものも、善き所に通じるものもある。道とは、ここでは、人が生きる道のことであるが、さまざまな道がある。無意識的に生きているのかもしれないが、先人の道を辿っているものである。(周公のごとく)生きた人の道(斯道)によるべき、・・・」

孔子が伝えているのは「人間の魂はどこから来てどこへ往くのか、この戸による・・・」つまりもときたところに帰る道のことでした。

イエスは私が「道であり、真理であり、命(性命=霊)である」ことを証明するために神はイエスに十字架で磔になる機会を与えました。この時の場所は「ゴルゴダの丘(しゃれこうべの丘)」でした。つまり人の頭の部分です。そしてイエスと共に2人の盗人が処刑されました。三人が同時に磔になりました。

汝姦淫するなかれ”と言いますが、姦淫の源は目にあります。目で色を見ることで心が動じ罪を犯します。つまり左右両目は磔になった2人の罪人で比喩し、イエスは真中の十字架で〝私は真理である“を比喩しました。

また仏教の「如來」は、済いとは「菩薩が來るが如し」と言う意味に使います。この「來」と言う文字は「十」の字に「人」と言う文字を3人を書いた字です。つまり十字架に3人が磔になったことと同じになります。

如=女の口=玄牝之門(老子道徳経で“玄なる牝の門”と表現)

來=十(十字架)に从(罪人が2人従う)もうひとり、「人=キリスト」が真ん中にいて十字架に人が3人、3っの目を意味していました。

 

そして「戸」と言う文字について、聖書の中で「戸をたたく」と言う真理に関する機密の表現がありますが、「戸」の「一」の字を取ると「尸」(しかばね)と言う字になります。「一」は「点」の伸びた形で、「一なるもの」の意味です。つまり真理の表現です。「尸」が「一」を得て「戸」になる、つまりこの「戸」が「真理」を表現しています。京都の大文字焼きの「大」の字も「人」が「一」を得て「大」になる、やはり「一」が真理であることを継承しています。

キリストの墓がある「三戸」「戸來」の地名については、東北方面の方はご存知のように青森県には「一戸」「二戸」と言う地名があり、キリストの足跡が秘められていると思われます。

「戸來」は「如來」と同じで、そのときがくれば十字の秘密が公開され、真理が得られることを印しています。キリストが日本に、しかも東北に来たことの意義はやがて歴史の真実として明かされ、世界がひとつになり、宇宙とつながる史実となってきます。聖人はそのために足跡を残す天命を担っていました。

昨今、次第に歴史の真実が明らかになってきていますが、「真理」に基づいて歴史が明らかになるのはこれからです。エジプトも中国もどの古代文明もすべて十字などの形象で顕した「真理」を探求する歴史そのものでした。天のデザインは細微に渉っています。

 Deshi A                                                                     


観音菩薩伝~第8話 妙荘王、ルナフールを罰す。第9話 妙善姫、修行に専心する決意を固められる

2015-08-31 02:12:38 | 観音菩薩伝・観音様

 

2015年8月31日

第8話 妙荘王、ルナフールを罰す

 カシャーバは、一隊の精鋭を引率して興林国に帰り着くと、同時に意外な消息を聞いて驚きました。それは、慈愛深い王妃宝徳妃の逝去でありました。前々月の十九日の夜に世を去れたことを聞いたカシャーバは、指折り数えてみたところ、ちょうど逝去の日が須弥山で白蓮を見付けた日と時刻までもが一致していたことを知りました。
 これは、不思議なことだ。こんな二つの大事件発生の日時が完全に一致するのは、そこに何かの因縁があるからに違いない。これは只の偶然の一致ではないと思い、カシャーバは兵士たちを兵営に帰舎させるや、休む間もなく急ぎ宮殿に参内して復命しました。
 妙荘王は悲しみに暮れていたが、カシャーバの帰りを心から待ち望んでいました。カシャーバは先ず心から王妃の逝去を悼み、続いて道中の苦難、沿路の険阻から雪中に白蓮を発見した顛末を一部始終報告しました。
 妙荘王は、妃の逝去で心中が愁傷で顛倒していた丁度その時に白蓮の消えたことを聞いて更に驚き、胸を掻きむしられる想いでした。無理に笑顔を繕って、カシャーバの労を慰め犒いました。雪連峰の奇蹟が事実と解って悦ぶべきところであるが、妙荘王の心は鉛のように重く、苦悶に塞ぎ込む一方でした。それは、他ならぬルナフールの事です。

 ここで話は少し前に戻りますが、カシャーバ一行が出発した数日後、妃が急に病を患いました。初め自覚症状はなかったが、ただ精神的に気分が勝れず、それが日の経つに連れて重くなり、やがて終日昏睡状態が続くようになりました。時に覚めても人と話すのを好まず、話をしないとまた眠ってしまうので妙荘王は不思議に思い、宮医を召し入れて詳しく診察させました。
 ところが驚いた事に、六脈が全然ありません。医者を換えてみたが、みな異口同音に何の病状かも判断が付かず、従って薬の調合の仕様もありません。妙荘王は慌てて諸大臣を招集し、このことについて相談しました。アナーラは前に進んで、
「先日、ルナフールは医薬を研究していると聞きましたが、老臣の見たところ、彼には相当の来歴があるように感じられます。何か特別な才能があるかも知れません。今は軟禁中ですが、彼を喚問して診させては如何でございましょう。もしかすると、王妃様の奇病を治すことが出来るかも知れません」
「これは、よい事を思い付いてくれた。直ぐ此処へ喚べ」
と、自衛官にルナフールの召喚を命じました。
 妙荘王は、ルナフールが登殿するや否や急き込んで
「汝は、妃の病気を治すことができるか」
するとルナフールは
「脈を診て始めて、治せるか否かが分かります」
「それでは直ぐ妃の症状を診てくれ」
 妙荘王は、侍女に命じてルナフールを宮中に案内させました。小半時ほどしてルナフールが殿内に戻って来ますと、待ち焦がれていた王は早速尋ねました。
「どうであったか」
 ルナフールは、首を横に振って
「もう、いけません。王妃様には、六脈が全くありません。これは即ち魂が昇り、魄が降った徴候です。初めに手を執りました時に、已に六脈は絶えていました。後で詳しく計りますと、微かな一縷の気脈しかありません。それが、止まったかと思えば亦動きます。直ぐに危険はありませんが、目下のところ神魂は已に躯から離れています。寿命は、恐らく七日間を超えることがないと存じます」
「それは、如何なる理由によるのか」
「それは大概の場合、前世の罪が未だ果たされていないため、なお幾日か床の間での災いを受けなければ、気が絶えることはないということでございます」
 妙荘王は、この事を聞いて腸が寸断され、心は針で刺されたようで、涙が止めどなく頬を流れました。
「王妃のこの患いは一体何の原因から起こったのか、何とか癒す方法はないのか、どのような犠牲でも払うから、妃の命だけは助けてくれ」
 妙荘王は、哀願にも似た悲しい声を上げました。ルナフールは嘆息して
「王妃様の病気を治すには、お釈迦様の家薬である炉内の丹薬を得て厚生する以外に方法はありません。王様、万に一つの希望も持たれますな。それよりも、早く王妃様の後事をご心配なされたら如何でしょうか」
 妙荘王は、哀しさを堪えて
「果たして妃は、何の病症に罹っているのか。遠慮せず、余に答えるがよい」
 ルナフールは、屹と頭を挙げ、じっと妙荘王を正視して
「この病気の起因は、短い期間に作られたものではありません。実は、人としてこの世に転生し、智識が開かれるに従って、喜怒哀懼愛悪慾の七情を内に感じ、色声香味触法の六賊がこれを外へ誘い出します。それによって凝り固まった人間の精・気・神を擾し、これを擾乱分散させてしまいます。故に人生は、短い一場の春夢の如くになってしまいます。長寿と言いましてもせいぜい百年に過ぎず、精・気・神が完全に散失した時には永眠を免れません。況や王妃様は高貴の身分にお生まれになりましたので、表面は何事も常人より好いようですが、その実七情・六賊に冒される度合いも大きく、常人より凶悪で精・気・神の崩壊も特に早いのでございます。常日頃、妄りに殺生して口腹を充たしたがためにそれが悪業となり、このような病床の災いとなったのでございます。只、業の満ち了るのを待って気は絶たれましょう。もし強いてこの病を名付けるなら、『七情六慾症』と診断できましょう。治癒の方法は、絶対にございません」
 妙荘王は、聞き終わるや否や、怒髪当に冠を衝き大声で叱責しました。
「狂人奴が、口を慎め。汝はこの奇病を治し得ないならそれでもよい、よくも大胆にいい加減な虚言を造って自分の愚庸を掩い隠し、国母を侮辱したものだ。こんな者は、許して置けぬ」
 そう言ったかと思うと、左右の護衛官に向かって
「この小賢しい奴を雁字搦めに梱縛して、一刀の下に処刑せよ」
と声を震わせて命じました。両側の護衛官は、これを聞くや一斉にルナフールを取り押さえ、結び目を固く縛り上げ刑場へ連行しました。刑の執行官は、寒気人に逼るような鋭利な剣を持って刑場で待っていました。そこへ護衛官がルナフールを引き摺り出し、土下座させました。
 妙荘王が高台で処刑を待っていたその時、突然アナーラが急ぎ大股で入って来て
「王様、暫くお怒りを収めて老臣の話をお聞き下さい。ルナフールの無礼は誅するに値しましょうが、只今王妃様は危篤状態で、正に生死の境を彷徨っておられます。なお一つの良い療法も考えられないで、徒に殺人を行うことは甚だ宜しくありません。老臣の愚見によれば、それより彼を赦して、別に王妃様のご病気を治す良策をお考えになられたら如何でございましょう」
 妙荘王は、不満ながら一理ありと考え直して
「老卿が替わって命乞いをしたから、特に卿の顔を立てて赦してやろう。ただし死罪は赦しても、活罪は赦す訳にはゆかぬ。彼を二百の大棒の刑に処し、牢獄に禁固して罪に服させよ」
 アナーラは
「只、彼の命を赦していただきさえすれば、その上何を申しましょう」
と王の恩徳を謝しました。
 武官は、ルナフールを縛り地に倒し、続いて大棒を振るって二百打ちました。傷口から鮮血が吹き出し、体中が紫色に腫れ上がったが、ルナフールは呻き声一つ上げません。大棒二百の刑を終えた後は、死刑囚の牢獄に押送して両手に手錠を掛け、両足を鎖で縛り、首に首枷を嵌め、扉を釘で固く打ち付けました。正しく活地獄の刑法です。
 ところが第六日目の夜、獄官がルナフールの牢獄を調べに来て愕きました。ルナフールの姿形が、跡形もないのです。手錠や鉄の鎖や枷が剥ぎ取られ、それらが一面に散らばっているだけでした。獄官は慌てて牢役人を集めて訊問したが、みな異口同音に
「先刻までは、固く鎖に縛られていました。彼は重犯なので、私たちは更に大紐で頭髪を括って高く吊っておきました。門も開かれず、戸も開けられていないのに、どうして逃走できたのでしょう」
 不気味な空気が漂って、一同は灯火を翳して牢内を隈無く捜しましたが何の痕跡も見付かりません。獄官が事の重大さを察して急ぎ執刑大臣に報告するや、執刑大臣は事態の大きさに肝を潰して、深夜に関わらず急ぎ参内して妙荘王に奏上しました。ちょうど妃の事で会議を開いていた妙荘王は、焦燥と憂悶で気が立っていた時なので、一時に怒りが爆発し
「即座に執刑大臣を解職し、獄官を斬首して、後の戒めとせよ」
との旨を宣しましたが、心の中では早く誰かを派遣してルナフールを捜し出さねばならないと考えました。その時宮女が慌てて登殿して地に伏し
「申し上げます。王妃様は、たった今ご逝去遊ばされました」
妙荘王は、一瞬眼の前が暗くなり暫く呆然としていたが、急に立ち上がりルナフールの事も忘れて足早に後宮に入って行きました。
 王妃は医者たちが手を束ねてから日一日と病状が重くなり、薬石効無く九月十九日の夜遂に息を引き取ってしまいました。
 妙荘王は、声を上げて慟哭しました。妃の死は妙荘王にとっては大打撃であり、悲しさと孤独がヒシヒシと胸に迫りました。王妃の内助の功は妙荘王の善政に関わりが深かったため、あたかも自分の親を失ったように啜り哭く声が家々に聞こえ、国民はみな優しく慈愛に満ちた王妃の死を悼み悲しみました。

第9話  妙善姫、修行に専心する決意を固められる

 姫が怪我をしてからと言うもの王妃は、姫の挙動には格別の注意を払い、常に四・五名の宮女を身辺に侍らせて保護させ、閑なときでも姫が外へ遊びに出るのを制限しました。宮女達には、姫と一緒に危険な遊びに同調したり相手になった場合は厳しく罰すると命令しました。
 姫は宮女達に迷惑が掛かっては自分の罪になると思って、温和しく宮中で坐行に励み、常に瞑想し、書籍・経典を読み耽って、閑な折りには二人の姉姫と琴を奏でて共に寂寞を慰め合っていました。
 暫くは何事もなかったが、図らずも母君が重病を患ってしまいました。その時姫は僅か七歳でしたが、夙根深く、天性厚く、母君の疾病を見て万々の焦慮を感じ、孝心深く終日神仏に祈願し天地に救いを求めました。
 姫・妙善は、母君の病気中、昼夜を分かたず身を介抱に尽くしました。
「どうぞ、私の寿命を短縮してでも、母君の寿命を延ばして上げて下さいませ」
しかし姫の祈る厚い心に関わらず、王妃の病は日々に重くなるばかりでした。姫は甲斐甲斐しく薬を献じ、茶湯を上げるなど、母君の身辺一切は自分の手で面倒を見ました。王妃が何時目を覚ましても、常に姫は側にいて離れず看護を尽くしました。母君の苦しみを見かねて姫は、更に願を掛けて祈りました。
「一生を弥陀に帰依し、衆生を救いますから、どうぞ母君を延寿させて下さいませ」
姫は悲壮な覚悟で祷りましたが、王妃の病状は日ごとに悪化する一方で、死期が日一日と逼っていました。九月十九日の夜、王妃は力なく眼を開け、側に座っている妙善姫の手を執って
「吾が心の姫よ。母は、そなたの成長を待つことが出来ません。中途でそなたを捨てて別離して行くのは、真に忍びないことです。だが母が死んだ後、そなたはよく父君にお仕えして、決して拗ね逆らってはなりません。父君の感情を損ねないように、母の言うことをくれぐれもよく聞くのですよ」
 ここまで言って王妃は嗚咽で言葉が続かず、両頬には二筋の涙が流れました。この母君の臨終の際に残した遺言は、姫の小さな心を針で刺し、刀で腸を抉られる思いでした。熱涙は止めどなく流れ、悲哀の情が高まって目先が一瞬真っ暗になったと思うや、床上に昏倒してしまいました。その瞬間に、王妃は遂に永遠に去って逝きました。
 姫は介抱されてやっと気が付きましたが、王妃の逝去を知らされるや、一層激しく身を震わせて慟哭しました。食事も碌に喉を通らず、七日七夜、室内に閉じ籠もり嘆き悲しみました。最も親愛する母君に去られた幼女の心は、哀れというほかありません。
 しかし、この哀哭の中に、姫は一つの霊機を悟りました。所詮人の世は常ならず、生あるものは必ず滅し、有為は転変して栄枯盛衰・離合集散は限りがない。如何に愛する人であろうとも、遅かれ早かれ別れなければならない諸行無常を、姫はこの時切実に身を以て体験しました。
 高貴な身分の母君でさえも死ななければならないのに、況や一般の衆生においておや、例え王座・権力を有する父君であろうとも、この問題に対する解決方法は見出せないでしょう。人間は誰しも、立場と環境に合わせて、その器なりの悟りに到達するものでありましょう。姫は、密かに想いました。
「母君は、私を生み育てて下さった、どれほど御苦労を重ねて今日まで撫養愛育して下さったことか。この厚い恩徳に対して少しも報うことが出来ないままに、母君は私を棄てて往かれた。私の罪は、非常に重いに違いない。王女の身分でありながらこんなに苦しいのに、一般の人はもっと苦しいに相違ない」と。
 姫の想いは、いよいよ深くなっていくばかりです。この罪を滅ぼすにはどうすればよいのか、姫は一つの問題を真剣に考え始めました。ある日姫の心の中に、大きな閃きが感じられました。
 慈悲深い弥陀とその証者仏陀の得られた道に一心に帰依して、救いを求める以外に方法はない。仏陀が求められた心法は、三界十方を超越して一切の苦厄を救い、九玄七祖共に極楽浄土に返らせる大法力である。今直ちに罪を懺悔して修行を志せば、必ずや一条の光明があるに違いない。よし、決心して身を棄て、仏門に帰依しよう。そうすれば、母君の高恩大徳に報いられるに違いない。母君を救うには、私の功徳が是非必要である。そう決意した姫は、宿願が実現するまでは、この事を誰にも言うまいと心に決めました。
 その日から姫は、終日経典の参悟に没頭し、礼拝に努め、長い光陰を総てこの中に費やしました。はっきりした目標を定め真の生き甲斐を得た姫は、魚が水を得たように心から歓喜し、日一日と磨きを掛けるに従い、その成長と進歩は驚くばかりでした。
 あらゆる経典を克明に読み、丹念に調べ、経義を細密に参悟しているうちに仏陀の真髄が分かってきました。悟れば悟るほどに真実を極めた玄妙の理は、姫の心を捉え、姫の全霊を傾倒させるに到りました。
 姫は瞑想・参悟が進むに連れて、仏陀の得られた道に一つの大事を悟りました。それは、今まで仏陀の得られた道であろうと信じ奉じて進む僧侶達に大きな誤りがあったことです。誰しも徒に形式と念経に力を注ぎ、心の伴わない戒律と勤行を科し、仏陀の得た法と全く遠く懸け離れた行法をしていたことであります。
 更に姫の心中に一つの思索が纏まり、結論に到りました。
「一般の信仰を見るに、ほとんどの者は現世の利益を願い、物慾の満足を条件に帰依して行を修めている。涅槃の道を得るには、そのような心掛けではとても到れるものではない。仏陀の真宗は、永遠に霊的の逍遙自在を得るものである。生死の輪廻を断ち切るには、それらの雑念と慾情を棄てなければならない。棄てなければ更に因果を造ってますます輪廻を余儀なくされるはずで、この繰り返しは尽きない」
 姫は亦、仏陀の真伝は教外別伝であり、一般に信奉されているのは形式的なものであり、真髄ではない。真髄は不立文字であり、どんな経典にも載っている筈のないものであることを発見しました。この事を悟った姫は、今度は一途にその法を得たいとの念に駆られてきました。姫は一心不乱に繰り返し経典を入念に調べ尽くしましたが、心霊を打つべき真髄はやはり何れにも載っていません。姫は、その至上教法を悟得したいと心中に念じました。
「仏・法・僧の三宝は、別の意義があるはずである。仏が求め得た法であって、仏の法であってはならない。法を得るための僧でなければならない。法は眼で見分けが出来るものではなく、全霊に刻み込まれるべきものである。私は、それを得たい。経典はそれに到達する路程を単に指示するだけのものであって、別伝の心法は明師によって得ない限り目的を達することができない。奇蹟も同じく手段であって、真の極楽は空寂無一物、無慾無色の境界でなくてはならない」と気付きました。
 すると姫の口からは、自然と金剛経の一偈が詠まれました。
  若以色見我    若し色を以て我を見んとし(あるいは)
  以音声求我    音声を以て我を求めば
  是人行邪道    是の人は邪道を行ずるものにして
  不能見如来    如来を見たてまつること能わざるなり。
 ここに至って姫は、最高の道を求める決心を固めました。将来、宿願は必ず果たされる。もし私が真法を得た暁には、その法を衆生に施し、行者達を啓蒙したい。と悟った姫は、大きな希望に胸が膨らみ、限りない喜びが湧いてくるのでした。
 天は、常に善き人の路を絶やさず。姫の修行は、幸運にも、亡き母君の妹、つまり叔母である保母の大きな暗助によっていよいよ蕾が膨らんできました。保母も信仰に厚く、姫のよき理解者であります。保母は早くから夫を亡くし、以来ずっと姫の撫育に尽くし、姫の居る所には必ずと言って良いほどに保母が付き添っていました。この保母の温かい心尽くしは、姫にとって満貫の力であり、二人で一緒に坐行し、日夜参悟に努めました。
 姫は相を借りて理を悟らせる譬喩表現に優れていたため、保母は姫の経典講義には常に心霊を傾けて聞き入りました。実際、姫の説法は驚くばかりに宮女達を感動させました。道理・道義を講ずれば奥理に徹し、その雄弁は止まるところを知らず、端座瞑想はいよいよ円熟を極めてきました。
しかし、二人の姉君は逆に冷たい眼で姫を見て、暗かに妹姫を気狂扱いにし、妙荘王に度々告げ口しました。
「一国の王女として生まれながら、富貴栄華の福禄も受けずに、神仏ばかりに妄想していると却って国中の人々から笑われます」
 妙荘王はこれを聞いて顔は曇らせたが、多忙のため姫を見に来られず、心では母君を亡くした淋しさに一時的に気を紛らせ心を慰めている、ぐらいにしか考えていませんでした。当時、仏陀に帰依する人は貧賤な身分か、身寄りのない老婆・老人が殆どでした。その他疾病に罹った人とか寡・孤独者、あるいは生活に痛め付けられた人達で占められ、このような者たちが至る所で托鉢を持って家々を乞食して回っていたため、王家はもとより、良家の子女で仏門に帰依する者はありませんでした。
 仏門に帰依する者たちはむしろ軽視されていた時代であったため、姫が身を棄てて仏陀に帰依することを聞いたら、妙荘王は気も顛倒するばかりに驚き怒るに違いありません。王の面目と名誉と権力に掛けても、必ず姫を制止することは明らかであります。
 善悪に関わらず事実は何時の間にか伝わるもので、姫の修行は何処からともなく全国の仏道を信奉する信者に洩れ伝わって行きました。殊に尼僧達にとっては百万の味方を得たよりも心強く感じられ、人々は躍り上がるほどにこの事を歓迎しました。今までが世間から良く見られていなかっただけに、大きな光が人々の心の中に点じられました。


 


釈迦仏説~三世因果経 全編

2015-08-30 00:13:05 | 釈迦略伝・釈迦因果経

2015年8月30日

人はどのように因果の報いを受けるのか、今の自分自身をより正しく理解するためにご参考にしていただきたいと思います。

 

 釈迦仏説~三世因果経

その時、阿難陀尊者(アナンダソンジャ:釈迦の弟子)が霊山会上に千二百五十人とともにおりました。阿難は頂礼合掌し、釈迦佛を幾重にもとりまいている遥か遠くに跪いて問いました。この浮世において一切衆生は末法(法が乱れた世の終わり)の時に至って多くの不善が生じ三宝を敬わず、三綱五倫は雑乱し、下賎の人、貧困な人、六根の足りない人、そして終日殺生をしては命を害する。又富貴や貧困の不平等がある人、なにを以ってこのような結果の報いがあるのでしょうか。望ましくは世尊のお慈悲を持って弟子に解説してくれますようお願いいたします。

仏は阿難と諸弟子に告げて曰く、

『汝等よく聴きなさい、善哉!善哉!吾は当然汝等に明らかに解説します。世間一切の男女、貧賤富貴や苦を受け極まりない人物、福を享け尽きないのも是みな前世の因果の報いです。是ゆえに身を修めなければなりません。』

『何を以って行うのでしょうか』

『先ず父母を敬い孝行しなければなりません。次には三宝を信じ敬う、三番目は殺生を戒め生き物を放す、四番目には布施を行う、こうして後世に福の種を蒔くことです。』

 

富貴は皆定めによる、是は各々前世に修めた因です。

ある人が受持すれば世世の福禄は深い。

 

善男信女よ因果の言葉を聴きなさい。

三世因果の経を念ずるを聴きなさい。

三世の因果は小さいことではありません。

仏が言われている真の言葉を軽んじてはいけません。

 

今世、官職(公務員)になれるのは何の因ですか?

前世に黄金を以って仏身を装ったからです。

前世に修めてきたのを今世受けるのです。

高貴な服や金の帯を仏前に求め、黄金で仏を装う、つまり己自身を装うのです。

如来仏を蓋うというが自身を蓋うのです。

官職になるのは容易であるというなかれ。

前世に修めていないのにいずこから来ることができますか。

馬に乗ったり、籠に乗ったり出来るのは何の因ですか?

前世に橋を修理したり道路を補修した人だからです。

上等の絹織物を着ることの出来るのは何の因ですか?

前世に衣類を僧や人に施したからです。

衣食が安定しているのは何の因ですか?

前世に貧しい人にお茶や飯を施したからです。

衣食が無く不安定なのは何の因ですか?

前世に半分文(一文の半分)のお金も惜しんで人に施すことの無かったからです。

高楼大邸宅に住んでいるのは何の因ですか?

前世に米を寺院に施したからです。

福禄が具足しているのは何の因ですか?

前世に寺院を造ったり涼亭を建てたからです。

容貌が端正で威厳があるのは何の因ですか?

前世に咲き始めた新鮮な花を仏前に供えたからです。

聡明で智慧がある人は何の因ですか?

前世に出家して身を修めたからです。

きれいな妻、美しい妾、これは何の因でしょうか?

前世に多くの仏門と結縁したからです。

夫妻が長く晩年まで互いに己の道を守り仲良くするのは何の因ですか?

前世に旗(仏堂に飾るのぼり旗)を仏前に供えたからです。

父母双方ともにそろって健在なのは何の因ですか?

前世に孤独な人を重んじ(軽蔑せず)敬ったからです。

小さい時から父母がいないのは何の因ですか・

前世に狩人として鳥を撃っていたからです。

子供や孫の多いのは何の因ですか?

前世に籠を開いて鳥を放してきたからです。

子供を養育できないのは何の因ですか?

前世に女に溺れ家庭を返り見なかったからです。

今世子供が無いのは何の因ですか?

前世にみだりに百花を折り取ることをしたからです。

今世に長命に成れたのは何の因ですか?

前世に多くの動物を買って放生したからです。

今世短命なのは何の因ですか?

前世に多くの生き物をした身だからです。

今世妻が無いのは何の因ですか?

前世に人妻を盗み不正な関係をしたからです。

今世夫を早く亡くし寡を守るのは何の因ですか?

前世に夫を大切にせず軽蔑したからです。

今世(下男・下女)になっているのは何の因ですか・

前世人の恩を忘れ義にそむくようなことをしたからです。

今世目がとても良いのは何の因ですか?

前世油を寺院に施し佛燈のあかりを明るくしたからです。

今世目が悪いのは何の因ですか?

前世に人に路を教えるのに分明に指さなかったからです。

今世兔唇(三つ口)になったのは何の因ですか?

前世仏前の燈りを口で吹き消したからです。

今世聾唖(耳の聞こえない人と口がきけない人)の人は何の因ですか?

前世に両親を悪口で罵ったからです。

今世「セムシ」になったのは何の因ですか?

前世に仏をおがむ人を笑ったからです。

今世手の曲がっているのは何の因ですか?

前世にいろいろと悪業をつくってきたからです。

今世脚(あし)が曲がっているのは何の因ですか?

前世に路をさえぎり、人をおびやかしたからです。

今世牛や馬に生まれてきたのは何の因ですか?

前世に人から物や金銭を借りて返さない人だからです。

今世に豚や犬に生まれてきたのは何の因ですか?

前世に人を騙して害を与えたからです。

今世病が多いのは何の因ですか?

前世に酒や肉を神、仏に供えたからです。

今世病がなく健康なのは何の因ですか?

前世に薬を人に施し、病を救ってきたからです。

今世牢屋にばかり入って居るのは何の因ですか?

前世に悪いことばかりして、少しも人に譲ることしなかった人です。

今世餓死するのは何の因ですか?

前世いつも鼠や蛇の洞窟(穴)ばかり閉ざして殺してきたからです。

毒薬によって死ぬのは何の因ですか?

前世に河をさえぎり毒をもって魚を殺してきたからです。

ひとりぼっちの孤児(みなしご)の苦しみは何の因ですか?

前世に悪い心を起して人を侵害してきたからです。

今世小人(こびと)として生まれてきたのは何の因ですか・

前世地下にて経文を見たからです。

今世吐血(血を吐く)をするのは何の因ですか?

前世肉を食べてから仏前で経文を念じたからです。

今世『ツンボ』になったのは何の因ですか?

前世に経文を誦(とな)えているのをよく聴かなかったからです。

今世『デキモノ』が多く、又霊の狂っているのは何の因ですか?

前世に仏台に魚肉を熏(にお)わせたからです。

今世体に臭気があるのは何の因ですか?

前世に線香売るのに偽妄(ぎもう:いつわり、にせ)して売ったからです。

今世首を吊りで死ぬのは何の因ですか?

前世にロウプを携帯して山林に行き罠を作り動物を捕らえたからです。

妻を亡くし、あるいは夫を亡くして孤独なのは何の因ですか?

前世に心はいつも人を嫉妬していたからです。

雷に打たれ、或いは火傷をするは何の因ですか?

秤や升を公平にしなかったかからです。

虎や蛇に咬まれて傷を負うのは何の因ですか?

前世に怨家(恨みのある家)の筆頭者である人だからです。

万般何事も自分でしたことは自分で又受ける。

地獄にて苦を受けても誰を怨むことができましょう。

因果を誰も見たことが無いというなかれ。

遠くは子や孫に至り、近くは我が身にあり。

 吃齋(きっさい)し多くを修めなければならないことを信ぜずば、

見なさい眼前に福を受けている人を、

前世に修めてきたのを今世受けるのです。

もしも、因果経を毀謗(きぼう:そしる、けなす)する人は、

来世は堕落して人身を得ることは出来ません。

因果経を受持している人は、

諸仏、菩薩が証明してくれるでしょう。

因果経を書き写した人は、

世代が勤学で家道は興隆(盛んになる)する。

いつも因果経をありがたく携帯している人は、

兇災は横にそれ禍は身にかからない。

因果経を講説(説き明かす・講義)して人に聴かせると、

来世に生まれてきても聡明な人になれます。

因果経を唱える人は、

来世に生まれてくれば多くの人に愛され恭敬(うやうやしく)される。

因果経を印刷して人におくる人は、

来世は帝王の身になる利がある。

もし前世の因果を問うならば、

武帝の前世はどんな人でしょうか。

もし後世の因果を問うならば、

希氏が大蛇の身に堕落する。

もしこの因果の感応がないならば、

目蓮が母を救うのはどんな因ですか?

もし、因果経を深く信じる人は、

みな西方極楽浄土に行くことができます。

三世の因果を説明尽くすこと歯できない。

上天の神様は善心の人に欠損させるようなことはしない。

三宝の門中で福を修める事はそう難しくない。

一文を喜んで捨てれば、万文の収入ができる。

皆さんはこのことを自分の心庫に堅く寄せておきなさい。

そうなればこの世に生きている時は福が絶えないでしょう。

もしも前世の因を問うならば、

今世受けているのがそうです。

もし後世のことを問うならば、

今世行っているのがそうです。

 

 

 

観音菩薩伝~第6話 ルナフール、妙荘王に霊薬を教える、 第7話 カシャーバ、須弥山に白蓮を探る

2015-08-29 23:18:17 | 観音菩薩伝・観音様

2015年8月29日

 

第6話  ルナフール、妙荘王に霊薬を教える

 妙荘王は、どの医者も姫の傷痕を元通りキレイにすることができないことに大層立腹され、国中の医者を国外に追放するように指令しました。宰相アナーラは、それを聞き急いで登殿して国王を諫めました。

「王様、御立腹も当然でありましょうが、早まった事を為されますな。追放を命ぜられましたら、忽ち明日から国中に医者は一人も居なくなります。そうなれば病人を治す人はなく、国中はきっと乱れることでございましょう。
 妙荘王は、屹として
「姫の傷でさえ治せぬ医者共が、どうして民人を治せるのか。民人は、無能な医者に騙されているのだ。そのような無能な医者は、絶対に国内に在住することを許せない」
 妙荘王の怒りは、なかなか解けそうもありません。アナーラは、王が一旦言い出すと後へ引かない気性をよく知っていました。
「それでは今すぐと仰せられず、十日間の猶予を与えて下さいませ。その間に姫の傷痕を治し得なかったならば、必ず仰せの通り追放いたしましょう」
 妙荘王は、詮方なく同意しました。大変な事になりました。この消息が国中に伝えられると、驚いたのは医者達です。全く顔色を失い、毎日が焦燥と恐怖とで生きた心地がしません。全力を尽くし万般の術を施したが治らず、それが罪となって国外へ退去を命ぜられるのですから実に気の毒な話です。
 城内城外の民衆は香を焚き、祭壇を設けて頻りに天帝や神仏に奇蹟の顕現を祈り始めました。みな、貴人が現れて姫の傷痕を治してくれることのみを期待していました。苦しい流離輾転の憂き目から逃れたい、だが日一日と無常の日は沈黙の内に過ぎて行きます。
 医者達の心は、丁度鍋の中で茹でられる蟹のような気持ちで、居ても立ってもいられません。容赦なき光陰は医者達の一縷の希望も受け入れることなく、瞬く間に十日の日は過ぎてしまいました。妙荘王は、宰相アナーラを召して追放を命じようとしました。
 しかし天は、人の路を断絶しません。この時、門官が登殿して妙荘王の前に出て報告しました。
「只今、門外に一人の青年書生が現れ、吾が王に謁見を賜りたいと申しております。話によりますと、姫の顔傷を治す方法を知っていると申しております」
 妙荘王は、丁度不快な折りでしたから、この事を聞くや忽ち喜んで、直ちに引見を命じました。暫くして門官が、一人の書生を連れて登殿してきました。見たところ風体に気品があり、その端正な学者的相貌からこの者には非凡な才能があるように見受けられました。
 書生は、王の前に深く頭を下げました。妙荘王は、特に錦繍の椅子に座るよう命じ
「汝の姓名と住居を詳しく申してみよ」
 書生は、身を屈めて
「私はルナフールと申し、南方の多宝国に住んでおります。生来は薬草を採り、医学を研究し、専ら人々の疾病を救っております。この度、第三姫君の額の傷痕のため御国の医者が挙って治療に当たったが効なく、ために吾が王には殊の外御立腹なされ医者を国外へ追放されるとの事を聞き、無能を顧みず、お伺いに参った次第でございます」
「汝は、姫の傷痕を治し得る自信でもあるのか」
 妙荘王は、上座からルナフールに訊きました。
「姫のこの種の疾患は、確かに世間並みの医薬では元通りに治せません」
と、ルナフールはきっぱり答えました。
「世間並みの医薬では治せないと言うのであれば、他に霊丹妙薬でもあると言うのか。上を誑かすような事を言うと、重罪に問うぞ」
 妙荘王は気色ばんで叱り付けましたが、ルナフールは微笑して
「霊丹妙薬はございますが、王様が私の罪をお咎めなさるなら、敢えて申し上げられません」
「説明してみよ。首尾良く姫の傷を治すことができたなら、罪は問わない。却って大功があろう。その代わり霊験がなければ、余を欺いた罪を許すことはできないぞ」
 ルナフールは、声を上げて笑いました。
「吾が王は貴人であられますが、高下の事を御存じありません。もっと、事情をよくお聞き下さい。姫の傷を癒す薬は人界に生えていますが、凡家では持ち合わせていません。この種の薬物は、仙仏の霊根を帯びております。もちろん、私も持ち合わせておりません」
 妙荘王は、声を張り上げて
「怪しからん事を申すな。汝も持たず凡家にもない薬とは一体何なのか、それは何処にあって、どうやって手に入れると言うのか」
 妙荘王は、弄ばれた怒りが心頭に爆発しそうになりました。その時、宰相アナーラが進み出て
「老臣が此の男を観ますに、立派な来歴があるように思われます。説く事に信じられる点がございます。どうか気をお鎮めなされて、詳しく御下問なさいませ」
 妙荘王は漸く自制して、顎でルナフールを促しますと、ルナフールは慇懃に答えました。
「他でもございません。その薬は、すなわち一朶の蓮華でございます」
「可怪しいことを言うものだ。蓮華なら、余の花苑の池に何万本とある。一朶ぐらい採るのに、何の難しいことがあろうぞ」
 妙荘王は、呵々大笑しました。ルナフールは、首を二三回横に振って
「それは違います。あの青い蓮華なら何万本と言わず、仮令何千万本あろうとも用を為しません。私の申す蓮華は、池の中には生えておりません。山の上に生えていて、根は泥土の中に付かず、華は塵に染まらず、雪に逢って開き、人声を聞いて隠れます。もし此の花弁を得て額に付けたならば、即座に傷は癒えましょう」
 妙荘王は、このことを聞いて、世にこんな不思議な事があるものか、というような表情をして、続いて首を横に振りました。
「汝は、詐りを申して余を騙そうとしている。何処の世に、根が泥の中に張ることなく生える蓮華があると言うのか」
 ルナフールは、頷いて
「どうして無い筈がございましょう。只少ないだけで、昔から今に至るまで三朶しかございません。一朶は天帝の瑤池に移され、一朶は西天の仏陀が持って行かれて蓮台とされました。もう一朶は、人間界に転落して縁者の採取を待っています」
「その人間界に転落した一朶は、何処にあるのか。凡人で採取できなければ、口が渇くまで談じても無駄であろう」
 ルナフールは、ちょっと黙想してから静かに目を開き
「場所は遠いと言っても余り遠くではなく、また近いと言ってもそれほど近くでもありません。ここから西南の方向に、一連の須弥山(しゅみせん)がございます。その中に徒高峰、またの名を雪蓮峰と呼ばれる山があります。かの転落の蓮華は、この峰の氷雪洞という洞窟の中で生長しております。時には山の麓からでも遠く望み見ることもできますが、常に白雲が周りを繞り、芳しい霧は遙か遠くからでも嗅ぐことができます。これは世上に稀なる宝であり、この白蓮を求め取ろうとしても、無縁の人は千辛万苦を嘗めても得られません。もし縁ある人で一念発起し、誠心を以て艱難を辞せずに求めるなら、遅かれ早かれ必ず願い通りになりましょう」
 妙荘王は、暫く黙って考えていたが、首を振り
「汝が既にその蓮華の下落を知り、またそれが貴いと知っているなら、どうして汝自身誠を発して採りに行かず、此処へ来て喋る必要があろうか。考えるところ、さぞかし、愚かな医者と共に余を唆し欺くための謀策であろう。余は、もう汝と話したくない。汝の話が真実かどうか、人を須弥山の雪蓮峰へ派遣して詳細に査べさせよう。もし良い報告があれば、汝を上賓の礼で待遇しよう。もし偽りの話であれば、重い刑罰を科し、生命はないであろう」
 ルナフールは、微笑して頷き引き退がりました。その結果、全国の医者は暫時追放を延期される事になりましたが、その代わりにルナフールは軟禁される身となってしまいました。


第7話 カシャーバ、須弥山に白蓮を探る

 妙荘王は直ぐさまアナーラを呼び、ルナフールの言う蓮華の有無を確かめるための調査隊を派遣することについて相談しました。アナーラは、
「ここから須弥山に行くためには、広漠たる高原や鬱蒼と生い茂る森林が随所に繰り広げられる、遙かに遠い路程を越えなければなりません。あまつさえ高い絶壁を攀じ登り、冷たい寒気とも闘わねばなりません。そのため人並み外れた体力と胆力、そして高い識見に冷静沈着を兼ね備えた人を選んでこそ初めて目的を達することが適います。また、この調査隊の統率者は吾が王の腹心の臣下でなければならず、そうでなければ困難を懼れて途中で引き返し、虚報を伝えるかも知れません。よくよく熟慮下さいませ」
 妙荘王は、暫く沈思黙考していたが、やがて満面に笑みを湛えて
「値殿将のカシャーバを行かせるがよい。カシャーバが一番適任である。カシャーバのみが、この仕事を立派に果たしてくれるに違いない」
 もちろんアナーラも、これに賛成の意を表しました。カシャーバは剛直にして武勇に勝れ、智慧に敏く誠実であり、武将にしては珍しく信仰心の厚い家臣でした。特に妙荘王の厚い信任を得ていたため、即刻この大役を仰せつけられました。
 カシャーバは喜んで承諾し、目的を達せずば止まない決意を固めました。営隊に戻ったカシャーバは、早速五十名の精鋭な兵士を選び、飲み水・帳幕・糧食・器具・衣服等用意万端整え数日後、妙荘王ならびに文武百官の見送りを受けて出発しました。
 出発に臨んで王は、カシャーバに三杯の御酒を賜り、その壮行を鼓舞激励しました。一行は各々駱駝に乗って壮途に就き、一路須弥山へと路を急ぎました。広大な砂漠、鬱蒼たる密林、激しい急流、嶮岨な断崖など種々の難関に行く手を阻まれ、元気な兵士たちもだんだん疲労困憊してきました。
 昼間は路を急ぎ、夜は行き着いた所で帳幕を張って休息しました。人里を離れ、数十里の行程に人っ子一人家一軒すら見られないこともあり、水や果実を得ることも困難を極めましたが、幸いにも駱駝は飢えや渇きによく耐えました。こうして暁に発ち、夜は遅くに休み、約二箇月余の月日を過ごしました。漸くにして遙か彼方に白雪を頂いた須弥山の峰が見え始めるや、一行は躍り上がって喜び合いました。
 須弥山の峰々は高く険しく巍然として天まで聳え、頂上は真夏でも万年雪に覆われています。連々と続く峰は、未だ太古の姿を留めて永遠の謎に満ち、それを解く鍵は何者かが持っていて、何時の日か来て明かすのを待っているかの様です。
 調査隊一行の兵士たちは、自然の神秘に打たれて急に元気付き、勇を鼓して前進を続けました。その後二日目に、とうとう須弥山の北麓に到着しました。しかし付近一帯には、は疎か、一軒の家も見当たりません。七十二の高峰の中で、果たしてどの一座が雪蓮峰なのであろうか。尋ねる人もなく途方に暮れている内に陽は沈み、辺り一面暗くなって、前進することもままならなくなりました。
 カシャーバは窪地を見付けて、一隊にそこで野宿するよう命じました。いよいよ明日から、待望の白蓮を捜し始めるのです。食事が済むと兵士たちは疲労のため直ぐに寝てしまいましたが、カシャーバの胸は高鳴るばかりで、血潮は滾ってなかなか寝付かれません。暫く寝返りを打っていたが、急に起きあがると外套を羽織り、一振りの宝剣を帯びて帳幕を出ました。
 何時の間にか樹林の辺りまで歩いて来て、上を見上げると、高い山の所為か月は明瞭に映り、夜露は冷たく風を誘い、遠く望めば一帯の森林が茫々として月下に黒々と照らし出されていました。頂上に積もった雪は青白い月光を浴びて燦爛と輝き、眩いばかりのその銀光は眼に美しく壮観でした。カシャーバは、興味を覚え、無意識の内に足を運びました。
 雪蓮峰の峰々が遠くに見える場所に出て立ち止まり、一峰から一峰へと目を移して行くうちに、突然中央の峰からそれを取り巻く白雲が開けて白雪に映じた異光が目に止まりました。一瞬心驚き胸高鳴るのを覚え、余りの美景に見取れていると、何処からともなく芳香が辺り一面に漂い、ますます神気が昂まりました。
 カシャーバは心中、彼の山は確かに雪蓮峰に違いない。あの不思議な色は、一体何であろうか。その光は、何処から放たれているのであろうか。カシャーバは、喜びました。まさかこのように早く目的の峰が見つかるとは予想もしていなかっただけに、興奮で一度に汗ばんできました。これは大変だ。早く知らせなければならない。咄嗟にそう思ったカシャーバは、弾かれたように踵を返し、一目散に帳幕に駆け戻りました。
 その時はすでに暁天に近く、高峰の頂は旭光の七色に映じようとしていました。カシャーバの呼び掛けを聞いた兵士たちは、喜び勇んで跳ね起き支度を調え、カシャーバに従って雪蓮峰に向かいました。一日中登り続けて行くうちに、峰の裏側に回った夕陽に映えて辺り一面緋の薄衣を着せたような神秘的な光景に変わってしまいました。
 陽の沈んだ後、なおもカシャーバの一行は登り続けました。薄暮の景も過ぎて各峰々は薄黒い雪帽を冠ったままで静かな睡りに入りましたが、目指す雪蓮峰から放たれる異彩は一行を導くかのごとく輝きを増しているのでした。暫くすると一行の背面から十九夜、下弦の月が加わり照らして、別世界を歩んでいる感じに打たれました。
 カシャーバたちは逸る心を抑えてその麓まで辿り着き、気を落ち着けて注意深く辺りを隈無く見渡しました。すると、その中腹に大洞窟があり、その洞窟の中から光が燦然と輝いているのが見えました。カシャーバが大股でその方へと歩みを進め洞窟の前まで来ると、付近一帯は明るくて真昼のようです。カシャーバが全神経を集中して光の中心に目を凝らして見ると、果たして大きな白蓮が一朶、積雪の上に生えています。目を射るような光は、その蓮華の中心から放たれているのでした。
 芳しい香りと美しい光に兵士たちは、思わず一斉に歓声を挙げました。手の舞い、足の踊り、互いに妙華を見た幸福を喜び合いました。ところが、どうしたことでしょう。今まで満開であった白蓮が、人の騒ぎ声を聞くや、見る見る裡に雪の中に隠れ、遂に跡形もなく消えて辺りは急に暗くなってしまいました。
「しまった」
とカシャーバは、慌てて兵士たちの騒ぎを制止しました。しかし、その時を限りに、白蓮は姿を現しません。カシャーバは、この白蓮は人声を聞くと隠れると言われたことを思い出し、自分の軽挙妄動を後悔しました。もっと慎重に行動すべきだったのに、全く取り返しの付かない事をした。
 兵士たちも一瞬青ざめ、項垂れ萎れてしまいました。遂に一行は、已むを得ず帳幕に引き返して一夜を過ごすことにしました。高山の針を刺すような寒気はヒシヒシと身に沁みて、後悔の念は譬えようもありません。
 翌日は朝早くから夜遅くまで待ったが、白蓮が現れてくる気配は全くありません。七日七夜、昼夜交代で待ち続けたが、白蓮は再びと目前に影も形も顕すことはありませんでした。カシャーバは二度と白蓮を見出すことができないと予感したため、いくら待っても無駄と観念し帰国して復命することに決心しました。今回の任務は採取するのではなく白蓮を探索するだけであるから、一応の目的は達せられたと考え、隊を整えて元来た路を引き返しました。長い往復の道程で、約六箇月余りの月日が過ぎていました。

次回 第8話 妙荘王、ルナフールを罰す