カタールのドーハで開催された2014年度世界遺産委員会で文化遺産に登録された富岡製糸場は4つの資産から構成されています。
①は富岡製糸場で「官営工場として1872年(明治5年)」「世界最大規模の工場として設立され、技術革新を重ね高品質な生糸を量産し続けた」②は田島弥平旧宅で、「近代養蚕農家の原型となった」処です③は高山社跡で、「養蚕技術教育機関」でした。④は荒船風穴で「岩の隙間から吹く冷たい風を利用して」「蚕の卵を冷蔵保存」した場所です。この4資産が有機的に結びついて、富岡の製糸業が米国など輸出先で「絹のストッキングを普及させ」、「世界的な絹の大衆化へ貢献」したことがアッピールされました。富岡製糸場は「フランス産業革命の成果である器械製糸を導入し、発展させて世界に戻したー」。「ユネスコはそこに『顕著な普遍的価値』があると評価した。富岡製糸場が殖産興業で日本を近代化しただけでは世界遺産には認められなかった。」という点を朝日新聞(2014年6月22日号)では強調されています。世界遺産の視点がより明らかになりました。次の産業遺産の登録を目指す「明治日本の産業革命遺産 九州山口と関連地域」においても大いに参考となる点だと思われます。
ところで、この富岡製糸場について、ネット世界では「元祖ブラック企業」といった評価も流れています。富岡製糸場は官営時代、8時間労働で夏冬休みもあり、労働環境も良かったのですが民間払下げなどにより労働時間は12時間となり、、払下げの3年後にはストライキも発生しました。世界遺産となることにより産業発展の歴史の光明とともに、負の部分も世界の視点で明らかにされて行きます。現在、ブラック企業として問題になっている状況も考えさせられます。
左)2014年6月22日朝日新聞・ドーハ長屋護「富岡製糸場が世界遺産ー4資産の物語、成果」編集委員・中村俊介「次は九州・山口期待」
右)2014年6月22日西日本新聞「富岡製糸場 世界遺産に」